29.気になるということは
私は、ぐるぐるする気持ちで、病院のベットの上で、窓から、外をぼんやりと眺めて。
外は、寒々しい空の色。
今にも落ちてきそうな雨を思い、私は、妙に気になる、あの白い自動車のことを考えて。
とてもとても苛々するのに、何故か、揺さぶられる気持ち。
白い自動車が言った言葉は、私の心を突き刺すようであるのに、……妙に、私の心を掴んで離さない。
どうして、こんなにも気になるのか、解らなくて。
自動車の言葉が、声が、私の頭の中を同じ調子で蠢く。
――「……あなたは、とても、小さくて、お可哀想だけれど……私の方が、もっともっと、不幸で、可哀想だわ」
――「あなたが私なら良いのに。何故、私ばかりこんなにも不幸なの?」
――「私は、何故、こんなにも、何も持っていないの?」
――「あなた、私に、似てるのね」
その言葉が、私の頭の中でぱっと花開くように瞬いた時、私は、大きく目を見開いていた。
……その花開いた花は、黄色い向日葵の……。
気づいた時、私は、ぼろぼろと涙をこぼしてしまっていた。
……唐突に気づいてしまったからだ。
白い自動車の彼女が言った、言葉の奥底にあるものに。
……そして、私が何故、これほどまでに彼女の言葉を繰り返し考えてしまうのか、その理由を。
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窓の外は、暗く澱み、重たい空からは、雨が我慢できずに零れ始めていた。
あの、白い自動車の彼女は、今日もきっと、あの場所で泣いている。
……きっと、この雨にうたれながら。
……それを思うと、たまらなく嫌な気持ちがした。
まるで、私が、私を雨で濡らしているような、嫌な感じがした。
……だから、私は、自分の持っている水色に染まって、内側に白いウサギが居る傘を手に持つと、泣きだしそうな変な顔のまま、自らの病室を飛び出したんだ。
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