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22.何故なのかは解らないけれども

 整備士の、矢和目ヤワメさんが、ゆうくんにキーを差し込んで、カチャカチャやっている。ゆうくんは、キュルキュルともいわない。カタカタカタッといって、車の表示部分を一瞬光らせて様々なマークを浮き上がらせると、すぐに力を失う。……まるで、バッテリーが上がってしまったかのような症状だ。


 矢和目さんは、ゆうくんを開くと、何か機械を取り付けて、色々いじっている。……私は、全く車のことは解らなくて、何をしているのか解らない。


 ……ただ、その間もずっとゆうくんの意識がないことだけは、私にも解った。


 「……あーあ、こりゃあ、取り外して分解してみんと詳しいことは解らんが……多分、オルタネーターがいかれちまってんなぁ……、こりゃ、丸ごと交換しなけりゃなんねぇだろうな……」


 矢和目さんは、ペンライトのライトを落とすと、そう、少しだけ目を歪ませて言った。


 オルタネーターの分解は、こちらの工場では出来ない。電気系統は、ちょっと分野が違う。オルタネーターは外されて、別の工場に頼むみたいだった。私には詳しいことは解らないけれど……兎に角、ゆうくんがまた前のように話せるようになってほしいって思いだけはある。


 「……ところで、なんでまた急に……?」


 矢和目さんは、不思議そうに、私を見つめるけれど、私も行き成りそうなったんです、としか言いようがなかった。


 矢和目さんは、困ったように告げる。


 「……意思のある自動車だったというからなぁ、奴は……。俺には自動車の声なんつーもんは、聴けないが……、意思のある自動車って奴に限って、理解不能な不具合や、意味不明な故障がやたら多い。俺は、あの自動車をねこっかわいがりしていたおやじさんの気がしれねぇな……」


 と、ぼそっとつぶやいた。


 私は、ただ、ひたすらに困った顔をして。


 ゆうくんが話さない工場は、ひどく炭酸が抜けた炭酸飲料みたいに空気が抜けたみたいに変な感じがした。

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