表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/116

21.意思をなくした機械の塊

 私が、違和感に声を失ったのと、彼が意思をなくした機械の塊となった瞬間は、ほぼ同時だったと思う。


 私は、慌てて、彼……ゆうくん、と呼んでいた軽自動車に近寄ったが、彼は、一切声を発することが無かった。彼の、ミルク色のボディは、彼の意思があるとき、潤みを持って柔らかく光を放っているようだったのに、今ではただ、色を塗り重ねられた、自動車のボディのままで。バンパーをトントンと叩いてみたが、何の反応も無い。私は一瞬で顔を青ざめさせる。


 今まで、あれだけ表情豊かに見えていた彼の顔は、今ではただの自動車の正面部分に過ぎなかった。


 何が起きたのかは、解らなかった。……解らなかったけれど、伝えなければと思った。


 私は、慌てて立ち上がると、私の車のタイヤを替えていた田邊さんに駆け寄る。


 「……田邊さんっ」


 「……ああ、ちょっと待って。もう少しで終わる……」


 田邊さんは、最後のボルトを止め終えたところだった。


 私の自動車は、声を発しない。……私が言葉を発する車に乗ろうとしないのには、理由がある。


 ……それは、幼い頃にある出会いをして……関わりを避けてきたからだ。だから、自動車の声が聴こえても敢えて、それを生かす道には進まなかった。


 私は、田邊さんに何とか解ってもらおうと言い募る。


 「……ちがう、そのことじゃなくて……ゆうくんがっ」


 「……?」


 田邊さんは、一瞬、あっけにとられたような顔をして、その後、嫌な感じに顔を歪めた。私が指す、ゆうくんが、あの軽自動車のゆうくんを指すのだと察したみたいだった。


 「……あの生意気な奴は、ほっといてやってくれ……それに、俺にはかんけいな……」「動かなくなっちゃったのっ!」


 私は、田邊さんの言葉に声を被せた。田邊さんは、は?という顔をする。私は、更に言い募った。


 「……だからっ、ゆうくん、何も話さない!……普通の自動車になっちゃった……」


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ