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異世界に派遣されたお仕事です!  作者: tera
一章-魔物の暴走編-
21/26

-20話- みんなで派遣?~魔物の暴動は、流石に一人じゃ無理3~

「ああ、なんとカッコいいのだろうか……、僕。そして有給もろくな休みも取らずに……、こんな辺境の小さな町の異変に駆けつけるなんて……、なんという勇者っぽさ」


「カッコイイですぅエルゴッド様ぁ」


 男は、上を見上げると前髪をかきあげて呟いた。

 なんだ、ただの馬鹿か。


「ふん、ただの酔っぱらいか。ここは私達派遣の者が硬く守っている。昼間から深酒をあおるなど、人として恥を知ったほうが身のためだぞ。——潔く立ち去れ!」


 いいぞシンディ!

 馬鹿相手には馬鹿をぶつけるに限る。


「って感じのルールなんで。薬局は真っ直ぐ行ったらすぐあるんで、酔い覚ましとか頭痛薬とか売ってますよ」


 前に立ちはだかったシンディの後ろから補足するように、小さな声で薬局を示してやる。あんまり馬鹿に関わると、馬鹿がうつるからな。


 男は、再び一度溜息をついて、髪をかきあげた。


「僕はエルゴッド……、王宮公認の魔法剣士。そして勇者に一番近いとされる……、頂きの頂点に君臨する……」

「エドモ○ド本田?」


 俺がそう言うと、彼は天空に向かって吹き出した。


「ぶっ!! ち、ちがわい!! あんな”スト2”の筋肉ダルマと一緒にするんじゃ……あれ?」

「……ん?」


 顔のパーツがどことなく似ているのがわかる。それでも顔の形は向こうはかなりイケメンの部類に入る優男面で、俺はどっからどう見ても社会に疲れたダメリーマン。


「なんかすごい社会に疲れてそうなダメリーマンの雰囲気……、あんたひょっとして同郷の召喚者か?」

「そっくりそのまま言ってんじゃねーよ!」


 どうやら、お仲間さんが居たらしい。

 でもそっちのお仲間さん、随分と好調な人生を歩んでいるようで……、なんか癪に障る。


「何だ知り合いか? そうならそうと先に言ってくれれば言い」


 シンディが腕を組みながら勝手に前に出てくる。

 ちょ、話し進まないから勝手な事を……、


「貴殿はかなりの腕と窺える、——私は姫騎士シンディ、誇り高き守護種族、ローパー家の末裔だ」


「…………メル。ローパー家ってなんだ?」

「知りませんよ。エルゴッド様、この人頭おかしいんじゃないです?」


 メルとエルゴッドのひそひそ話が聞こえてくる。

 その間、シンディはずっとぷるぷる震えていた。


 そして、何とか話しがまとまったのか、エルゴッド達は振り返って髪をかきあげて、


「恐れ入った守護種族とやら……、でも僕は……、王都公認の魔法剣士。そして頂きに最も近き者。つまるところ最強の矛……、もうすぐ魔物の暴走が始まるという噂があるが……、君の出番は無さそうだ……」


 本当にただの馬鹿なのか、はたまたシンディに付き合ってくれるすごい良い人なのか、意見が分かれる所であるが、非情に疲れるノリなので、今後一切俺の目の前でやらないでほしい。


 やるなら荒野でやれよ。

 マーシャルウルフとかこういうノリに付き合ってくれるぞ。


「ふっ、なら受けて立とう……、私はこのパーティの最強の守護女神シンディだが、最強の矛ももちろん在籍している」


 シンディは俺を指差して高らかに叫んだ。


「この私の婿にして最強の矛、……シマだ! シマは覇王オバロドの生まれ変わりでありその身に覇王の魂を宿しているのだ!」

「な……、そ、そんな……、同じ召喚者じゃないのか……!?」


 エルゴッドは顔に手を当てながら片膝を付いた。

 それを見ていたメルという補佐官的な女が「エルゴッド様ぁ〜〜〜〜!!」とか言いながら、ひしっと抱きしめている。


「はは、なんだこれ」


 いや俺、日本からちゃんと召喚されてますけど!

 とか。


 お前らもうついていけねーよ!

 とか。


 思ってるけど絶対に言わない。

 言ったら負けだと思っている。

 こいつら、絶対わざとやってるだろ、チラチラ見てんじゃねぇよ。


「婿、……ですか?」

「あらら、なんか面白い事になってるわね」


 ケティが杖を落とす音が響いて、ミスチェが耳をピクピク動かしながら、ニャハハと笑う。


「そんな酷いです! せっかく落ちこぼれ仲間だと思ってたのに」

「さらっと失礼な事言ってんじゃねーよ!」


 斯くして、豪快にサムズアップする設定崩壊姫騎士に、ガクンと膝をつくナルシストとその囲い。そして、何故か呆然としている触覚女に、腹を抱えて笑っている変態猫耳娘。


 ……はは、わろす。

 改めて思うけど、とんでもねーな。


 このやり取りは、マダムが様子を見に来るまで続けられていた。


 それから特に何か変わったことがあるかと聞かれれば、何も起きず平和そのものだった。エルゴッドが言っていたように、魔物の暴走(スタンピード)が来るんだったら、町の皆ももっと慌てふためいた方が良いと思うのに。


 そのくらい、空は青く、子供は外ではしゃぎ、カフェ・メリッサのランチタイムにも多くの婦人方が寄り集まっていた。


 魔物の、……生態系が変わったって言われてもな。

 少し不安になっていると、町中に警報が鳴り響いた。


《緊急警報! 緊急警報! 平日からグータラしとる冒険者はさっさと起きてギルドまで集合じゃ! たわけ! そしてわし直属の派遣4人も本部集合じゃ、遅れるでないぞ?》


 アリエルの声だった。

 声の質から余程焦っている様だった。


「シマさん!」

「ああ、とりあえず行くぞ!」


 警報を聞いていたケティ達が見回りからわらわらと戻ってくる。

 早速ギルドへ向かうと、緊急招集された冒険家でごった返していた。


 みんな口走に今回の魔物の暴走について喋っている中、そのまま奥にあるいつもの会議室へと足を運ぶ。というか、一体いつからここが公認の派遣本部になったんだと。


 当初はただ空き部屋を派遣先とのマッチングに使っていただけだったのに。


「いきなり呼びつけてすまんかったの」

「あれ、意外と落ち着いてるのな」


 扉を開けると所定の位置に座ったアリエルが粗茶をすすっていた。

 粗茶だ粗茶だと言っていたが、何気にパッケージは日本のものなんだよな。


 マダムの所で出された玉露とは大きく違っていて、アリエルはこっちのが良いんだとか。

 どう見てもコンビニで売ってるアレ。


「前々から魔物が集団で押し寄せるなんてたまに起こってたからのう……、今回は時期が早まっただけみたいじゃし、一足先に冒険者を各地へ飛ばしといて良かったのじゃ」


 アリエルは粗茶を飲み終わると続ける。


「じゃが、今回は規模はそれなりに大きい。それこそギルマスであるわしが出る必要が出て来る程にのう? ……そこで、わしの代わりをお主達で賄ってもらう」

「よし、一旦待とうか……、整理しよう」


 俺がアリエルの両肩を抑えてそう言うと、アリエルは大人しく頷いた。


「俺達派遣は普段人がやらない事をやる。言わば冒険者の隙間産業だ」

「そうじゃな」


「よし、だったら俺達はケガ人の救護および補給任務に当たらせてもらう!」

「……却下じゃ」


「なんでええええ!! なんでだよおおおおお!!!」


 のたうち回ってごねてみるが、それでも彼女の目の色は変わらなかった。

 いや、いつものゴミを見る様な目つきに変わってる。


「何って元を正せば、お主が森の生態系崩したから起こったんじゃろうが」

「やっぱりそうなんですね」


 ケティが口を挟んでくる。

 薄々気付いていたが、詰まる所俺のせい?


「そうじゃ、諦めて責任とって最前線で指揮官モンスターの討伐をやってこんかい。暴走には必ずボスクラスのモンスターがおるはずじゃからな」


「そうだ! エルゴッドが来てるぞ。ほら、王宮公認の魔法剣士、勇者に一番近い奴!」


 アリエルは溜息を付く。


「奴は強いが、馬鹿じゃからのう。お主が社会に揉まれてボロクズになったサラリーマンだとしたら、奴はのうのうと自分の世界に浸っていた真性の中二病じゃ。王都に教えてやった召喚魔法陣がな、使用したものの腕が悪かったもんじゃから……」


 清く、真っ直ぐの正義を持った勇者を召喚しようとした所。


 異世界転移願望が有り得ない程高い、教室でも窓辺でアンニュイそうに外を眺めて「……平和だ」とか言ってそうな、高校生を呼んでしまったんだとか。


「じゃが強いし、馬鹿正直に自分が民衆を守ると言って本当に守りきってしまうからの、奴も暴動の最前線で立て役になってもらう。指揮も上がるじゃろう」


 アリエルが言っていることは、別に間違ってなかった。

 適材適所、あの馬鹿を最前線に立たせるだけで指揮が上がるのは間違いないだろう。


「わし直属の派遣にボス討伐をさせて、この暴走を終わらせると共に、派遣会社の宣伝をする。もっと実入りのいい仕事を斡旋させて、これは冒険家とは違う業態じゃからぐふふふ」


「おい、漏れてんぞ。絶対ボーナス貰うからな。特別時給にしてもらうから。今日は全部時間外だからな!!」


 “なら普段の倍頑張らんかい”

 と、アリエルは俺達に激励を送り部屋を後にした。




お読み頂きありがとうございます!

ツイッター@tera_father


処女作、テラ神父の方もよろしくおねがいします。

『Real Infinity Online』VR初心者ゲーマーがテラ神父

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