第一話 拝啓、羽ばたくキミへ
せっかくならと、小説だからこそできる表現にしようと思いました。なれない執筆と上記の事も相まって、読みにくい作品かもしれませんが、ご覧いただけますと幸いです。
拝啓 羽ばたくキミへ
今年はうまく成長できましたか?自分を変えることができましたか?今幸せですか?
……あの日のこと。忘れたことはありませんか?
気持ちはまだ…変わっていないのでしょうか。
〜中略〜
君には伝えたいことが山ほどあります。
それでもまずは、あの日のことから記そうと思います。
俺は典型的ないじめられっ子で、いじめを受けていた。でもそれはニュースになるようなこの事なものではない。主に無視や陰口、教科書やノートに落書きをしたり、わざとらしく俺の机にぶつかってきたり、さりげなく仲間はずれにする。
あとはそうだな…、給食で大半が嫌いなおかずとか出ることがあるでしょ?うちの学校ではたまに出るゆで野菜みたいなのが本当に不人気で、健康面を考えた結果なのだろうが、味付けがないのでザ野菜みたいな味だった。その日に味の濃いおかずとかが一緒じゃないととてもじゃないけど食べられないくらいであった。でも、そういうのは他の人のを少なめにして、その分俺のが大盛りにされてたっけ。その逆もあったけど。カレーなんてみんなより明らかに少なかったな。先生に指摘された時もあったけど、周りのヤツらが、こいつはカレーが嫌いとか、このゆで野菜は好きとかデタラメを言う。俺は気弱だから否定することなんて出来なかったし、それを先生は、そーなんだと言って特に疑問を持つような感じもなく終わっていた。仕方が無いので我慢して食べていたが流石に不味いので最近は牛乳で流し込んでいる。
先生や親に相談すればいい話なのではないかと思ったかもしれないが、そんなもの当てにならない。うちの担任はお気に入りを作るタイプの先生で、やけに俺に厳しい。まぁ厳しいのは俺に限った話ではなく、お気に入りに入れていない生徒ほぼ全員なのだが。お気に入りの生徒にはめちゃくちゃ甘いのだが、少しでもミスをすれば俺はコテンパンに怒られる。それが先生の勘違いであった場合も、謝罪なんてせず、勘違いさせた俺が悪いと言わんばかりにまた注意される。
俺は特段頭が悪い訳でもないので、テストの点を取ればほかの教科はまずまずの結果である。ただ不幸なことに、その担任の教科は美術なのだ。記述テストが無いわけではないが、実技の割合が大きいので結果的にあまり良いとは言えない成績になるのだ。俺には絶対に私情でつけているという謎の確信があった。
そんなこんなで先生には相談しようと思わなかった。かと言え親だってそうだ。俺には年子の弟がいるのだが、両親は弟にしか目がない。俺への関心はほぼゼロだった。更にうちにはテストで良い点を取らないとゲーム没収というルールがあった。それはまだわかる。ただ、そのボーダーラインが俺が八十点以上なのに対し、弟は六十五点以上なのだ。いくら弟が頭良くないからって不公平ではなかろうか。挙句の果てに、弟がそのラインを越えられなかった時、たとえ俺がクリアしていても連帯責任としてゲームを没収された。逆に俺がクリアできず、弟がクリアしたときは連帯責任ではなく俺だけが没収だった。そんな親に人間関係について相談したことが無い訳でもない。でも親は俺に一言。あんたの性格の問題じゃない?そんなんだからもう相談しないと決めた。
そんな訳で俺は今日も一人で悩むしか無かった。はたから見たら大したことないのかもしれない。でも思春期真っ只中の俺にとってこれ以上ない苦痛であった。俺なんかいない方がきっとみんな幸せだとか、早くこの苦痛から解放されたいとか…時には死にたいだなんて。そんな勇気なんてないのに、そんなことを毎日のように思っていた。
二〇十八年 四月
中学二年に上がるとクラス替えがあり、その後二年間卒業まで共に生活する。他の奴らはやった!同じクラスだ!だの、うわー、離れちゃったぁ〜だのそれぞれ一喜一憂しているが、友達のいない俺にとっては何も変わることは無い。強いて言えば担任は変わって欲しかったのだが。まぁそういう運のなさが俺にはあるもんで。クラス替え後の教室にいくと、俺の嫌いな顔が教卓の前にいた。見事に三年連続同じ担任が確定した。マジで死にたい。せめてクラスメイトは去年よりマシな奴らであってくれと願うしかなかった。
全校集会を終え、クラスに戻って自己紹介をした。ここでも俺の悪運は続き、いじめの主犯格数人と同じクラスである事にこの時気づいた。その不安のせいかその他の人のことは何一つ覚えていない。その後、午後の授業は特になかったので足早に帰宅した。
次の日憂鬱ながらも学校に向かった。進級してから初めての授業だったので、各教科ほとんど自己紹介と一年の流れの説明で終わった。
昼、社会の授業がグループワーク中心だと言われたので絶望していた。しかもその日は運悪くあの茹で野菜があって、他に味の濃いおかずもなく、そのうえ野菜をは配膳する人は昨年僕のデタラメな好き嫌いを言っていたやつだ。案の定大盛りにされたので仕方なく牛乳で流し込む。その様子にきっと周りもドン引きだっただろうな。こうして俺の変人…いじめられっ子としての立場が確立されていく。
結局なにも変わらないんだな。そんなことを思いながら本を読んでいた昼休み。ふと後ろから声をかけられた。俺に声をかけてける人間なんて滅多にいないものだからびっくりして本を落としてしまった。
そいつは落ちた本を拾うとそっと俺の机に置いた。そして俺の前の席に後ろ向きで座った。
「ごめんね。」
俺の顔をみて謝った。
「あ、いや…。……何か用?」
何か嫌がらせをされるのではないかとぎこちなく答えた。
「あぁ!キミの前の席だから挨拶しておこうと思って。これからよろしくね。」
そう言うと俺の方に手を伸ばした。絶対何か裏があるだろうと思ったが、この手を取らなければ無視されたーだのもっと面倒くさいことになりそうだ。俺は恐る恐る手を伸ばす。すると勢いよく手を握られ、ブンブンと振られた。なんかもう殺されるのではないかと心臓の音が激しく鳴っていた。その日はそのままチャイムがなったのでそれっきり何も無かった。
しかし、そいつはそれから毎日話しかけてくるようになった。それは日常での出来事だったり、授業のことだったり、あとはそいつがアニメ好きらしいので、そんなような話もされた。言動に感じるちょっとした厨二病感はそこから来ているのだろうか。わからない。俺は相槌を打つことしか出来なかったが、それでもそいつは毎日話しかけてきた。最初は本当に嫌がらせの類だと思っていた。こんな俺に話しかけるようなやつなんて今までいた事がない。絶対に裏があると。だが、その考えはある日覆された。
ふと気になってそいつを観察しようとしたところ、他のクラスの奴らとは一切話していないのだ。話していないどころか関わってもいない。せいぜい業務連絡くらい。もしかして、こいつも俺と同類か?その思考と共に、あの日初めて話しかけてきたあの明るい笑顔を思い出す。もしかして、俺に沢山話しかけてるから仲間だと思われて避けられているのでは…。そう思うとなんだか申し訳なくなってきた。…考えたってキリがないや。俺はそう思って本を読み始めた。
一、二ページ読み進めたところでいつものようにそいつは話しかけてきた。
「何読んでんの?」
気づくと目の前の席にどかっと座っていた。
「え?いや、別に…」
友達なんてしばらくいた事がない俺はそんな素っ気ない返答しか出来なかった。そいつはふーんと言うと俺が読み終わるのを待っているかのようにコチラに視線を向けてくる。
流石に本の内容が頭に入ってこなくなったのと、先程の疑問をぶつけてみたくなったのでパタンと本を閉じた。
「…あのさ。毎日毎日俺に話しかけて飽きないの?…俺なんかに話しかけてるときみもみんなから避けられるよ。」はぁ。違うだろ。俺はなんでそうトゲトゲした言い方しかできないのだろうか。こんなんじゃ愛想つかされるに決まってる。だから今まで友達いなかったんだろ。と、顔を伏せて自問自答している。
「うーん。なんか同じニオイがしたんだよね。」
そいつがあまりにも突拍子もないことを言うから、さっきまで自問自答していたことが頭からすっ飛んでいってしまった。…正直俺の心配を返せとは思った。それにしても本当に厨二くさいことを言う。そんなのアニメか漫画でしか聞いたことがない。同じにおい?え?体臭?俺はそんなに臭うか?いやいやいやいや。だとしてもこいつ相当キモイことになるぞ。やっぱり厨二表現なのか。俺があまりに反応に困っているもんだからそいつはふふっと笑いだした。今気づいたことだが、こいつ面だけはいい。俺なんかに構ってなければモテ放題だろうに。 本当に変わったやつだ。まぁそういうのに興味ないのかもしれないし…。
「ンッハハ!なにそれ!漫画でしか見たことない顔してる!!」
こいつは俺の顔をみて机をバシバシ叩きながら笑った。
…今時アニメオタクなんてモテないか。なんかムカつくので自分の中ではそういうことにしておいた。そんなに笑うか?人の顔で。…まぁでも、悪い奴ではないのかもしれない。
これが君という人間との出会いだった。そして俺の人生最大の転機だったのかもしれない。
それから、移動教室、昼休み、授業の合間などなど…気づいたら隣にそいつがいることが当たり前かのようになっていた。まだ俺から行くことはなかったのだが。とはいえ、なにか会話をしているかというと、そうでもなかった。そいつの一方的な話を聞いてたまに相槌をうつ。これが定番になっていた。相変わらず何の事やらさっぱりなことを話す。こっちは大した返事もしてないのに、そんなに楽しそうに話されるものだからそんなに悪い気はしていなかった。かといって良いかと言われたら俺は首を横に振るだろうな。多少なりとも俺だって気を遣う。そんなの毎日高頻度で一緒にいたら気疲れしてしまう。
「ねぇ?聞いてる?」
顔を覗き込まれてハッとした。教室の自分の机。そいつはいつものように前の席の椅子に逆に座って俺に話しかけていた。完全に話を聞いていなかった。こいつの行動の意図があまりにも分からないから考え込んでしまってた。だいぶ私情強めではあったが。
「え、あ、ごめん。」
俺は咄嗟に謝る。怒られるのだろうか。でもこいつの怒った姿はなんだか想像できないな。…なんでだろうか。
「体調悪かったりする??」
ずいっと俺の顔をよく見ようとしたのがそいつの顔が近づいてきた。俺は咄嗟に身を引いた。
「あ、いや、大丈夫…。なんでもない。」
床に落ちていた小さなホコリの塊を見て言った。
「ごめん。喋りすぎちゃったね。」
今更かよ。そんなツッコミが口から出そうになるのを我慢してそいつの顔に目線を戻す。あまりにも申し訳なさそうな顔をしているのでこちらもなんだかいたたまれない気持ちになる。いや、俺悪いのかこれ。確かに話は聞いてなかったけど…。……さすがに俺か。
「いや、俺も考え事してて…。ごめん。」
「何か悩み事??」
「え、あ、……友達いないから…色々分からなくて。」
いや語彙力。別に今いないだけだし。いや本当に思ったことが上手く伝えられないんだなと改めて実感させられた。こんなんじゃ相手は困るに決まってる。でもそいつの反応は俺の予想に反していた。
「そっか。うーん。詳しくは分からないけど、自然体?でいればいいと思うよ。だってそれがキミでしょ?」
たまにはいいこと言うんだな。まぁ、全くもってその通りなのだろう。でも…。…それが出来ていたらどんなに楽なことか。俺が自然体でいたって、余計嫌われるだけだ。だから取り繕わなくてはいけない。取り繕ったって全てが上手くいく訳では無いし、むしろ我慢してる分辛いことの方が多い。でもその方が自然体よりも「安全」なんだ。俺自身が。
「そう…だね…。」
俺は意に反した答えを出した。本当は「出来たらとっくにやってるよ!」くらい言いたかったのに。
「……うん。」
そう答えたそいつの顔をみると寂しそうな顔をしていた。いや、彼は笑顔だ。ただ俺がそんな気がしているように見えただけ。きっとそう。俺の気持ちなんか分かるわけないといつものように蓋をする。どれもこれも俺の願望故に過ぎないのだから。
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