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31.数年ぶりの王都へ

「なにとぞ。なにとぞ」

「そこまでしなくても大丈夫よ」

「人生何があるか分からないからな」

「私が必ずイヴァンカ様とギュンタ様を無事に王都まで送り届けますので」


 王都行きの前日。

 ファドゥール領へ向かって、イヴァンカとギュンタに精霊用の魔結晶を渡す。

 その際に精霊と、たまたま居合わせたレイミアさんに二人のことを頼んでおく。



 ギュンタは死草の一件があったので、私が心配していても受け入れてくれる。

 レイミアさんはヒロインというよりもボディーガードっぽくなっている。逞しい。


 けれど何があったのかをイヴァンカは知らない。

 そして私もまた、彼らの本当の死因を知らないのだ。


 崩落と死草であったと断言出来るだけの材料がない。

 といっても心強い存在もいるので、彼らの力を借りるためにやってきたという訳だ。


「それじゃあ頼んだから!」

「任せてください」


 レイミアさんは拳で自身の胸を叩き、精霊達もくるくると飛び回る。



 これで安心して、王都へと行ける。



 明日からお父様に託す自動車に乗る。家に帰る前に温泉に寄ることにした。

 温泉が出来てからほぼ毎日入っていたので、入れなくなるのは少しだけ寂しい。



 三週間と言わずとも、後一週間くらいは王都入りを遅らせたいところだ。

 だが昨日、サルガス王子から会って話したいことがあると手紙をもらった。


 しかも私達がアカに乗せて送ってもらうという情報を知ってか、約束の日は明日。

 ちょうどお茶の時間なので、公爵家についてすぐに出なければならない。時刻については美味しいおやつでも手に入ったのだろうと思っている。


 それよりも会って話したいとわざわざ手紙を寄越したことが気になる。

 こんなの初めてのことだ。ばあやさん自慢だろうか。だったらマーシャル王子にでもすればいいと思うが……。


 しょうもない話だったら、早めに王都に連れてこられた愚痴に付き合ってもらおう。


 運転しながら忘れ物はないかともう一度考える。


 といっても私の学生服も普段着も公爵家で用意してもらっている。教科書も同じ。なので持って行くものといえば、芋と錬金アイテムくらいしかない。


「ルクスさん、他に何か持って行きたいものあります?」

「それを聞くのも何度目だ」

「だって結構離れてますし、忘れ物あったら嫌じゃないですか」

「届けさせればいいだろう」

「まぁそうなんですけど」

「芋と亀蔵のハウスを忘れなければ良い」

「さすがにその二つは忘れませんよ」


 アハハと笑いながら温泉に入る。

 しばらく温泉には入れないからとルクスさんを念入りに洗った。


 そしてお父様とお母様は今頃亀蔵を堪能していることだろう。

 亀が増えてもやはり亀蔵は亀蔵。離ればなれになるのは寂しいのである。




 翌日。亀蔵をハウスに入れ、マジックバッグを肩から提げる。

 ルクスさんにしつこいと言われながらも昨晩、もう一度持ち物を確認した。忘れ物はない。


 アカの背中に乗せてもらって、シルヴェスター辺境領を飛び立つ。建物に引っかからないためか、かなりの高さまで飛び上がる。


「わぁたっかい」

「ウェスパル、落ちるなよ」

「はーい」


 お兄様が背中をがっちりと支えてくれるので心配はしていない。

 それより今度はいつ乗れるか分からないので、今のうちにこの景色を堪能しておくことにした。



 それから王都まであっという間だった。

 一時間も経っていないと思う。具体的な時間は分からないが、朝ご飯を食べてからゆっくりとしてから出て、お昼前にはついてしまった。


 アカの姿は遠くからもよく見えるらしく、降りるとすぐにイザラクが迎えてくれた。

 喉が渇いただろうとお茶を出してくれる。アカには、お兄様が在学中に使っていたと思われる大皿が用意されている。


 私達は遠慮なくそれを受け取った。


「よく来たな。ウェスパル、ルクスさん。ダグラス兄さんもゆっくりしていく?」

「いや、すぐ戻る。長くいると離れがたくなるからな」

「お兄様、アカ。送ってくれてありがとう」

「ああ、また何かあったら手紙をくれ。お兄様がいつでも迎えに来るから」


 お兄様はそう言い残し、再び空へと飛んでいった。

 これだけ早ければすぐに王都まで来ることが出来そうだ。何かあったら遠慮なく頼らせてもらおう。



 私達が暮らす部屋を見せてもらってから、客間でお茶をする。


 サルガス王子の手紙よりも少し前にイザラクも手紙をくれた。そこに美味しいお芋クッキーを用意してあると書いてあった。


 なので早速それをごちそうになっている。

 ルクスさんは私の膝の上で黙々と食べている。確かにこれは美味しい。


 さすがイザラクが見つけてきてくれたおやつだ。思わず頬が緩んでしまう。


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