30.連日焼き芋
お・い・も ころころころころころ
お・い・も ころころころころころ
あっつ~い石の上でこ~ろころ
まんべんな~くあたためて
ほくほく焼き芋作りましょ
お・い・も ころころころころころ
お・い・も ころころころころころ
今日で焼き芋十日目。
連日焼き芋を作っていたため、お父様が鍋置きに続いて薪も用意してくれた。
焼き芋作りもすっかりと慣れたものである。
それこそ思わず焼き芋の歌を口ずさんでしまうほどに。
今日も今日とて亀達は芋畑研修中である。
亀蔵達のためにも美味しい焼き芋を作らなければ。
「その歌は人間達の間で流行っているのか?」
「いえ、これは前世のホームセンターで流れていた曲です。曲名は分かりませんが、我が家では石焼き芋の歌と呼んでいました」
「ほーむせんたーとはなんだ?」
「いろんな物を売っているお店で、鍋とかのこぎりなんかはもちろん、お店によってはお花や動物が売ってるところです。我が家の愛犬はそこでお迎えしました」
「芋は売ってるのか?」
「お店の規模によりますかね~。あ、そろそろ出来たんじゃないでしょうか。串を刺してみてください」
竹串をルクスさんに渡せば、彼はふよふよと焼き芋の上へと移動する。そして上からぷすっと芋の皮を突き刺した。一つ、また一つと芋を次々に刺していき、納得したように頷く。
「どれもよく焼けている」
彼からの了承を得て、石の上から焼き芋を回収する。そのうちの一つをトングで掴んだままルクスさんの手の上に乗せる。
「熱いですからやけどしないでくださいね~」
「ドラゴンがこのくらいでやけどするものか」
「この前、あつあっつ! って言って食べてたじゃないですか。そうだ、お茶の準備もしないと!」
メイドから持たせてもらった水筒を取り出せば、ルクスさんはわかりやすいほどに顔を顰めた。
言いたいことは分かる。分かるが、聞き入れるつもりはない。
同じく持たせてもらったカップを並べてトクトクとお茶を注ぐ。
ルクスさんは石焼き芋をがっしりと両手で掴んでいるため、隣に置いておく。
私は猫舌なのでお芋もお茶もしばらく冷ますことにして、先に鍋を火から降ろす。
いつもは適当な木の上に置くところだが、今日はお父様からプレゼントしてもらった鍋置きがある。やはり専用のものは安定感が違う。
小さくなった火に薪をくべ、暖を取る。焼き芋は美味しいが、外はまだ寒い。火に手をかざせば、隣からぼそぼそと弱い声が聞こえてくる。
「牛乳……」
「ないですよ」
「なぜないのだ! 焼き芋には牛乳が必須だろう」
「だと思うなら起き抜けに三杯も飲むの止めれば良かったでしょ! 私、ちゃんと止めましたよね?」
焼き芋を食べる時に飲みたいなら二杯で止めておいた方がいい。そう告げたのに、ルクスさんは無視して上機嫌でゴクゴクと飲んでしまったのだ。完全に自業自得である。
「だ、だが、この前の商談で取引量を増やしたと言っておったではないか!」
「増えるのは来週からです」
ギュンタの薬が完成した際に増やしたが、その後にもう一度増やしたのだ。数年前と比較すると約二倍に増やした。単純に二倍と言っても、シルヴェスターは辺境。隣の領まで運んでもらうのも大変なのである。
「……仕方ない。コップ半分でいいぞ」
「ダメです」
「なぜだ! この我が譲歩してやるというのだぞ!」
「すでに三杯飲んでおいて譲歩も何もないでしょう。飲み過ぎです」
むううっと子どもらしい声で鳴くが、増やすつもりはない。本当は朝だって止めるつもりだったのに、お父様は牛乳くらいいいだろうとすぐにあげてしまう。安い牛乳だと駄々をこねるから質も下げられないというのに……。甘い。甘すぎる。
お父様が甘やかすせいで、この前なんてミルクタンクを勝手に開けて、顔を突っ込もうとしていたのだ。牛乳が好きなのは分かるが行儀が悪い。それはさすがに怒った。以降『お父様に注がせる』を覚えてしまった。まぁそのお父様とも、もう少しで離れることになるのだが。
「アカが飛んでいけばすぐだろうに……」
「わがまま言わないでください。私達はそろそろ王都に行くんだから、そんなに増やしたって仕方ないでしょう」
「王都ならたくさん飲めるようになるのか?」
「シルヴェスターより流通面では優れてますからね」
「そうか」
「といってもルクスさんの飲める量が増える訳じゃないですから。飲み過ぎですって」
「そんなことはない!」
胸を張ってもっと飲めると主張するが、飲める量だけ飲むつもりか。呆れた目を向ければ、ルクスさんは焼き芋をほふほふと食べていた。牛乳の追加はない代わりに私の芋を半分に割ってルクスさんに渡す。
「今日はこれで我慢してやろう」
「はいはい」
私も焼き芋を食べる。
ルクスさんと一緒に食べていると、お父様が亀達と共に戻ってきた。
「帰ったぞ」
「かめ〜」
「かめかめ」
「かめっ」
「かめっかめかめ〜」
みんなに芋を渡して仲良く食べる。
亀太と亀之助もすっかりシルヴェスターでの生活に慣れたようだ。亀吉も先輩として指導しているようで、亀蔵は満足げである。
これなら安心して領を離れられる。
学園行きはもうすぐだ。




