表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
30/331

第二十九話 正体不明の敵

「クソッ! 開かねえ!」


 扉を蹴り、声を荒げる東悟。

 野田と堀口も協力して扉を押すが、ピクリとも動かない。


「ねえ、閉じ込められたってこと……?」

「ああ、僕らを逃がすつもりはないみたいだね。……この敵は」

 

 江藤さんが怯えている。

 俺達は、氷藤の言葉で最悪の状況にあることを再認識した。

 浅尾の鼻に反応しなかった、今回の敵。今その敵は、俺達をこの館に閉じ込めた。

 だが俺達は、その正体を未だつかめていなかった。


「お、おい……そしたら、どうすれば……」

「皆。二階へ行こう」


 皆が、俺を見た。

 拳を固く握る。皆を巻き込めるかは分からない。けど、『単純』に考えた結論は一つしかなかった。

 

「敵を探りに行こう。ここに居ても、どうせ死ぬだけだ。だったら、今は急いで敵の正体を見破りに行った方がいい」

「高崎……だが……」

「怖いのは……分かってる。俺も、怖い。でも、何も出来ずに死ぬよりかは、行動して生き残る道を掴む方がいいと思うんだ」


 頬を汗が伝る。皆に伝わっただろうか。

 恐怖と緊張で足が震えてしまう。


「……分かった。確かに、そうだね」

「高崎君。私も行くよ」


 氷藤と矢島さんが最初に賛同してくれた。


「まあ、正真が言ったんだ。やってやるよ」


 東悟も乗ってくれたようだ。続き、野田、堀口、江藤さん、浅尾、三原も賛成してくれた。


「後は……白川さん」

「ええ……高崎君、勿論賛成よ。……話し合いの時とは、全く逆ね」


 昨日、白川さんが試練に挑もうと言った時と、奇しくも逆のシチュエーション。

 意図せず意趣返しが出来たことに少しスッキリしつつ、俺達は二階へ戻る。


「!? おい、西田さんは、何処だ!?」


 だが、廊下に倒れていた筈の西田さんの姿が消え、血溜りだけが絨毯の上に残っていた。


「消えた……?

「どういうことだ……!?」

「高崎君、向こうを見てくれ」


 氷藤に言われ、俺はその先を見る。すると、血を踏んだ足跡が、さらに奥へと続いていた。


「生きてたってのか!? 西田さんが!?」

「……分からない。皆、気を付けよう」


 灯の無い廊下を進む。目の前がよく見えないまま、足跡を追って俺達は歩く。足跡は、血溜りから少し進んだ……二階の、二つ目の部屋に続いていた。


「……ここだな。おい、白川」

「ええ。久木原君。……大丈夫よ」


 東悟と白川さんを前にして、部屋の中へと入る。薄暗くて、部屋の様子はよく分からない。だが、一つ目の部屋と、それほど大差のないように感じた。


「! 西田さん!」


 その部屋のベッドの上、西田さんの体が、手を胸の前に組んだ状態で横たわっていた。

 白川さんが急いで部屋の中に入り、西田さんの体を揺らす。


「矢島さん! 急いで回復を……」

「……ケケ」


 矢島さんを呼ぶ白川さん。だが、その隣で、不気味な声をあげながら   

――西田さんが、起き上がった。


「西田さん! 良かった! 生きて……」

「ケケケッケケケッ!!!!!!」

「!? 西田さん!? 何を!?」


 暗くて、表情は分からない。だが、突然西田さんは奇声をあげながら、手に持っていたナイフで白川さんに襲い掛かった。


「ケケケケケ!!!!」

「くっ……やめてっ……!!」


 白川さんは、なんとか西田さんの腕を振り払う。バランスを崩してベッドから落ちた西田さんの体が棚にあたり、上に置いてあったものが床に散乱する。

 西田さんは顔を上げ、俺達の方を見た。


「ケ……ケケケッ!! ケケケケケ!!!!!」

「おい、止めろ!」

「西田さん! どうしたの!?」


 呼びかけても、西田さんは止まらない。普段の彼女からは考えられないほどのスピードで、俺達に襲い掛かってきた。


「クソッ!! 逃げろ! 皆!」


 俺は皆にそう叫ぶ。廊下を駆け抜け、一階へと降りる。

 だが、それでも西田さんは俺達を追いかけてきた。


「がっ……助けてっ……」


 その時、三原が躓いて転んだ。俺は急いで戻り、三原を助けようとするが、その前に西田さんが三原に馬乗りになり――ナイフを突き立てた。


「ケケケケケケケケケケケケケ!!!!」

「がああああああああああああ!!!!」


 何度も何度も、ナイフを三原に刺し続ける西田さん。三原の絶叫と、彼女の不気味な笑い声が、館中に響き渡る。


「くっ……止めろおお!! バレット!」

「西田ッ! 止めやがれ! サンダーボルト!」


 俺と堀口は、威力を抑えて魔法を放つ。

 俺達の魔法は西田さんに直撃し、彼女の体は三原から離れた。


「か……はぁ……」

「三原! 大丈夫か!?」

「今助ける! 待って……」




――ブワッ





 直後、西田さんの体から、何かが噴き出した。血ではない。何か煙のようなものが、彼女の体から溢れ……三原の体に移った。


「!? ああああああああああああ!?!?!?!?」


 すると、三原は叫び声をあげ、西田さんの時と同じく、全身をかきむしる様に苦しみだした。


「あああ!? や……いやだっ……やめろおおおおおお!!!」


 それが、三原の最期の言葉だった。

 血を廊下中にまき散らした三原は、もう動かなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ