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時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
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第二十一話 別々の方向

「ハァ……ハァ……くそっ!!」

「やめた方がいいよ。別に大したことじゃないじゃないか。彼らは、弱いから死んだ」


 大広間では東悟がセントラルに大剣を振るっていた。東悟の握る大剣は持ち主の心情を反映するかのように鋭い一撃となってセントラルを襲う。

 だが、セントラルは顔色一つ変えることなくそれら全ての斬撃を躱しながら、言葉を発する。


「反して君達は生き残った。間違いなく強者だよ」

「黙れ! てめえ……その口を閉じやがれ!!」

「お……おい! 東悟! 何してるんだ!?」

「うるせえ! 正真! 邪魔すんじゃねえ!」


 東悟は更に顔を赤くして大剣を力任せに振るう。

 しかし、その切っ先すらセントラルには届かない。


「三原、浅尾! 何があったんだ!? なんで東悟がセントラルと戦っている!?」

「た……高崎……それがさ……」

「俺が、セントラルと話してる時……」


 俺はおびえたように二人の戦いを見ていた三原と浅尾に事情を聴く。

 どうやら、きっかけはセントラルの発言だったらしい。浅尾がセントラルに次の『赤い扉』の先にいるのはどんな敵だと聞いたらしい。当然、セントラルはそれには答えなかったが、代わりにこう言ったという。


「まあ……、弱くて死んで行った子たちと違って、君達は今まで生き残ってるじゃないか。次どんな敵が来ても大丈夫じゃない?」


 その『弱くて死んで行った』という部分に。話を傍で聞いていた東悟が噛みついたということらしい。

 東悟は、とある暴走族のリーダー格の男だ。その過程で、決して少なくない数の、仲間が負傷する瞬間、死ぬ瞬間を目撃したことがある。辛そうに、そう教えてくれた事があった。

 あいつは、表には出さないが本当は仲間に対する情を捨てきれない奴だ。だから族の中でも慕われているし、俺もあいつを信頼している。

 そんな奴だから、死んだクラスメート達を『弱い』の一言で片付けてしまうことが、どうしても納得いかなかったんだろう。


「がはッ……!!」


 突然、東悟の体が壁に叩きつけられた。息を全て吐き出したような声をあげ、東悟はその場に崩れ落ちた。


「!? 東悟!」

「全く……。ああ、言い忘れていたけど、僕は此処でも魔法を使えるからね。僕の言うことが聞けなければ、その子みたいになるから」


 俺は東悟に駆け寄り、セントラルを見る。

 魔法。今奴は、魔法を使ったのか? 奴にしかここで魔法を使えないという事実より、俺はその魔法が見えなかったことの方が恐ろしかった。それだけでセントラルが魔法に関して俺達の何倍も格上であると分かってしまったからだ。


「じゃあね。久々に喧嘩して疲れちゃったよ」

「ッ……」


 セントラルはそれだけ言い残して、あの瓦礫のある部屋へと戻っていった。


「なあ、高崎……」

「ああ。強い。今の俺達じゃ、あいつの魔法は超えられない」

「だよね……本当に使ったのかも分からなかったよ」

「クソッ……久木原ならって思っていたのにこれじゃ……」


 三原と矢島さん、浅尾も今のを見て絶望しているようだ。今の俺達の中で一番高い戦闘能力を持つ東悟がこれほど歯が立たずにやられてしまったんだから、無理もない。

 俺は東悟を床に寝かせ、目覚めるのを待った。


「……なあ、高崎、矢島さん。そういえば白川さんを見なかったか?」


 すると、三原がそう問いかけてきた。


「……いや、そういえば朝から見てないな」

「昨日……ほら、白川さん野田にとんでもないこと言ってただろ? それで俺達心配して……。ほら、あの人がいないと、皆纏められないだろ。だから今、探しに行こうかしてたんだよ」

「……ああ、お前の鼻でか」


 浅尾が獲得した能力は〈超嗅覚〉。森の中でも正常に機能したその能力は、戦闘向きでは無かったが、探索にはもってこいだった。


「だけど、よく考えたら俺らなんて話せばいいのか分かんなくてさ。頼む! 二人とも。俺の代わりに白川さんと話に言ってくれ!」

「……なんで俺らなんだよ。お前らでもいいだろ」

「けど、ほら白川さん、俺達なんか相手にしなさそうだし……けどお前、此処に来てからちょいちょい彼女と話してたじゃないか。うらやましい」

「私も……白川さんとはあまり話したことはないな……それに、今は……ちょっと怖い……」


 昨日の発言。それで皆白川さんと話をしようという気は起らなくなっている。俺も、今の彼女に触れるのは何処か危険な気がしていた。でも……


「単純に考えろ、か……」

「え?」


 久木原を見る。昨日、こいつが言ったこと、その言葉が脳裏をよぎる。

 氷藤はいない。白川さんもいない。野田も何処かに行ってしまった。そして、久木原は目の前で意識を失っている。今、クラスを纏めるべき奴がいない。そいつらの心が、別々の方向を見てしまっている。だったら、俺がすべきことは……


「……分かった。行くよ。浅尾、案内してくれ」

「高崎君……大丈夫?」


 三人共少し驚いた顔をした。でも、これが俺の最も『単純』な答えだった。

 今必要なのは、クラスで団結すること。その為に、俺のできる事を始めようと思った。


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