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かわいそうな旦那様‥  作者: みるみる
21/33

21、テオの異変



テオと結婚してからというもの、ベラは退屈でつまらない日々にうんざりしていました。


それに‥しばらくは我慢していましたが、賭博場にも行きたいし、他の男とも遊びたくなっていました。


そこでベラは、取り巻きの一人に頼んで睡眠薬を大量に購入し、その晩からテオに飲ませてみました。


「テオ、愛してるわ。さあ、乾杯しましょう。」


「ベラ、僕も君を愛してるよ。」


ベラはテオとワインを飲みながら、テオが眠くなるのを待ちました。


「‥ベラ、もう寝よう。何だか急に眠気が‥‥。」


テオはふらふらと立ち上がると、ベッドの上にそのまま倒れ込んでしまいました。


「‥フフフ、あなたのワインに睡眠薬を多めに入れておいたの。‥おやすみ、テオ。」


ベラはテオが寝息をたて始めたのを確認してから、そっと屋敷を抜け出して賭博場へと向かったのでした。


ベラは屋敷にあった宝石類を大量に持ってきましたので、賭博場では思う存分に賭け事が楽しめました。


やがて手持ちで賭ける物が何も無くなると、賭博場にいた取り巻きの男達に声をかけ、その内の一人と共に夜を過ごし、朝が来る前にはテオのいる寝室へと戻るのでした。



「‥ただいま、テオ。」


スー、スー‥


「あら、テオったら‥まだ寝てるのね。」


ベラは寝ているテオの隣に横たわり、自身も眠りを貪りました。


グー、グー‥



そんなベラに対し、屋敷の侍女達はあからさまに見下した態度を取るようになりました。


いつまでも起きて来ないテオとベラに痺れを切らした侍女達は、大勢でテオ達夫婦の寝室に乗り込んで行ったのです。


そして、大きないびきをかいて寝ているベラに対して文句を言いました。


「‥ちょっと、あんたいい加減にしなさいよ!勝手に外で夜遊びして、昼まで寝てんじゃないわよ!前の奥様のように少しは働いたらどうなの!?」


「あんた、もう貴族じゃないくせに、ご主人様の奥様だからって、偉そうにしてんじゃないわよ!」


「あんたなんか、この家の女主人に相応しくないのよ!」


これを聞いたベラは、寝ていた体を起こして生意気な侍女達に向かって怒鳴りつけました。


「煩いわね!あんた達侍女のくせに生意気なのよ!文句あるなら屋敷から出て行きなさいよ!!‥‥ちょっと、テオもあの生意気な侍女達に何か言ってやってよ!」


スー、スー‥


「‥ちょっと、テオってば、起きなさいよ!」


スー、スー‥


「‥チッ、使えない男ね!」


ベラはこんな状況でも起きないテオに呆れていました。‥ベラは、まさか自分の睡眠薬のせいでテオがこんな風になってしまったのだとは、夢にも思っていませんでした。


ベラは煩い侍女達を力づくで部屋から追い出すと、カウチに横になり、またウトウトと眠りについたのでした。



その頃執事は、出勤時間が過ぎてもまだ起きてこないテオに対して苛々していました。


執事は、侍女達が夫婦の寝室に乗り込んで行く前から何度もテオを起こしに行っていたのです。そう、何度も何度も‥‥。


執事は、再度テオを起こすために夫婦の寝室を訪れました。


そして、呼びかけに全く応答しない二人に痺れを切らし、扉を思いっきり開けました。すると案の定、テオはまだベッドで眠っていました。


‥‥寝室のテーブルを見ると、空になったワインの瓶と飲みかけのワイングラスが二つ、そのままになっていました。


執事は、テオ達が夜遅くまで飲酒していた事を悟りました。半ば呆れながらも、深い眠りの中にいたテオを起こす為、ベッドの近くまで行って大声で呼びかけました。


「ご主人様、出勤されませんと!」


スー、スー‥


執事がこんなにも近くで呼びかけたのに、テオは何の反応も示しませんでした。


ここでようやく執事はテオの体の異変に気付きました。


「ご主人様!ご主人様ー!!」


まるで意識を失ってしまったかのように、深い眠りから覚めない状態のテオに対し、執事は何だか嫌な予感を感じていました。


もしこのままテオが目覚めなかったら、どうしようか‥‥と不安になった執事は、テオの頬を平手打ちして、再度大声で呼びかけてみました。


「ご主人様!!ご主人様ー!!」


テオは、執事がどんなに大声を出しても、頬を叩いたり抓ったりしても決して目覚める事はありませんでした。


「‥‥誰か!誰か来てくれ!」


執事は大声で屋敷の者をよび、医師を連れてくるように指示しました。テオが手遅れになる前に、医師の的確な処置が必要だと判断したのです。


屋敷内は一時騒然としました。


そんな中、ベラだけが呑気にカウチでいびきをかいて寝ていました。



この時執事は、テオがこんな状態になっているというのに、呑気にいびきをかいて寝ているベラの事を、不審に思ったのでした。


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