13.辿り着いた恋心
「お父様、お母様、お兄様。私の懸想している方は、実はディオンなのです」
エミリアーヌは、家族を呼び出すと、ディオンを隣にしてそう告げた。
「旦那様、身分差があることは百も承知です。それでも、私はエミリアーヌ様を愛しているのです。どうぞ私たちの結婚をお許し頂けないでしょうか」
そう言うディオンの顔は緊張で強張っていた。
ヘタれないでよく言ったと、エミリアーヌは思う。
少しの沈黙があってから、家族が次々に口を開いた。
「まぁ、ディオンなら誠実なのもわかっているしな」
「ルーベル伯爵のときはどうにかなったけれど、別の縁談を出して逃げられては、うちの面子に関わりますものね」
「独身で居座られるよりよっぽどいいよ。ディオンには通ってもらうことになるけど、家を与えて二人でそこに暮らしてもらった方が、僕らとしても都合がいいんじゃない?」
三人の家族会議はあっさりと終わった。
つまり……エミリアーヌとディオンの結婚の許可が出たのだ。
三人が出て行った後、ディオンはガックリと膝をついている。
「大丈夫? ディオン」
「いや、もう……あれだけ悩んでいたのはなんだったんだという感じですね。こうもあっさり許可を貰えるなら、最初から言えばよかったと……」
「うふふ。でも遠回りしたおかげで、あなたを好きになれた。好きな人と好き合って結婚できる方が幸せよ。これでよかったんだわ」
「エミリアーヌ……」
ディオンの手が、エミリアーヌの頬に伸びてきたかと思うと。
ゆっくりとディオンの顔が近づいてくる。
エミリアーヌはうすく目を瞑り、彼の唇を受け入れた。
胸がきゅっとして、体はポカポカとして。
ああ、これが幸せというものなのだと、再確認をしたエミリアーヌは。
「ディオン、一生あなたに恋させてね」
「ご期待に添えるよう、精進しますよ」
世界で一番愛おしい人を、抱きしめたのだった。
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