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最終話

 八月十四日。

 編入試験の結果が知らされた。


「受かったよおおおお。」

「二週間で二年分の勉強するとかありえないから……」

「良かった…… マジ良かった……」


 寺島理恵と山口茜そして、堀川幸一は張り詰めていた緊張が切れたのか、崩れるように机に突っ伏す。

 八月十六日で夏休みが終わるため、そこに合わせて編入するには三週間以内に試験まで済ませなければならず、かなりのハードスケジュールになっていた。

 だが、津田めぐみと村田楓は、何事も無かったかのような余裕の表情だ。さすがは一年半もの間、一国の宰相と副宰相を勤めていただけのことはある。

 そして、碓氷優喜と伊藤芳香は、合否に関心すらない様子で仕事の話をしている。


 元一年五組の他の大半の生徒は、二年の遅れを素直に認めて、一年生からということで話がついている。

 微妙な意地を張って二年生への編入試験を受けたのは奥田友恵と根上拓海の二人。

 だが、結果は不合格。留年確定している。

 そして、三年生への編入試験を受けた七人は全員が合格した。


「卒業までの勉強もさっさと終わらせちゃってください。」

「優喜様が久しぶりに鬼だよ。」

「めぐちゃん、楓ちゃん、助けてえええ。」

「私はもう終わったし。」

「高校の勉強って、真面目にやれば意外と簡単だよね。」


 優喜の要求に理恵と茜は泣きが入るが、楓もめぐみも冷たいものだ。

 そして、幸一が愕然とした表情で二人を見ている。

 上位陣とそれ以外では、その学力に大きな隔たりがある。


「そういえば、みなさんの成績はどうなんです?」

「満点あるのみ。」

「余裕。」

「九割以上取ってるはずだけど。」


 芳香とめぐみの自信は凄まじい。

 実際、ほぼ全教科で満点を取っているのだから自信はあって当然である。


「えええ! わたし八割いってるかどうかだよ。」

「八割…… いってるかなあ……?」


 それに比べると、理恵と茜は少々控えめだ。試験で八割の点数を取れていれば、一般的には学力を問題視されることも無いだろう。

 そして、幸一の表情がどんどん暗くなり、視線は下へ、下へと落ちていく。


 稲峰高校は進学校と言ってはいるが、学習の進度はそれほど早くはなく、高校三年の夏休み前までに教科書の内容は全て終わっている、と言うことは無い

 だがそれでも、それを二週間で習得するのは簡単なことではないだろう。


 その困難を乗り越えている時点で、幸一の能力は決して低くはないことがわかる。

 比較対象が悪すぎるのだ。


「みなさん、無事に休み明けを迎えられそうで何よりです。来週からは受験生となりますので心機一転がんばりましょう。」


 優喜が〆る。

 その横で、立場のない教師が困った顔で立っていた。



 八月十七日。


 夏休みが終わり、学校の日々が始まる。

 多くの生徒たちは、いつも通りの日常が。

 ゲレムからの帰還者たちは、久しぶりの日常が。


「転校生ではないが、今日から、このクラスに二名加わることになった。自己紹介を。」

「碓氷優喜と申します。よろしくお願いします。」

「妻の伊藤芳香です。よろしくお願いします。」

「あーー、う~」


 芳香の挨拶と、その手に抱かれている子供に、教室内がざわつく。


「え? 結婚って、女同士で?」

「何で女同士で子供できるの?」

「静かにしろお前ら!」


 教師が一喝してもなかなか収まらないなか、二人は席へと向かって行った。

これで正真正銘のラストです。

お読みくださった方、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 帰って来て魔法はまだ使えるのだろうか…。まぁ使えない方が幸せか。 [一言] 完結?お疲れ様でした。 面白かった。 ( ^∀^)
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