第7話:迷惑配信者の撃退
配信を始めて一週間。
俺のチャンネル登録者数は、驚くべきことに10万人を突破していた。
『新人JKのダンジョン散歩』というふざけたチャンネル名だが、今やダンジョン配信界隈で知らぬ者はいないほどの急成長ぶりらしい。
だが、有名になればなるほど、面倒ごとも増える。
それが世の常だ。
「おい、そこのJK! ちょっと待てよ!」
ダンジョンの第三層。
探索中の俺に声をかけてきたのは、チャラついた男たちの集団だった。
手にはカメラを持っている。配信者のようだ。
「……何か用か?」
俺は足を止めずに答えた。
関わるとろくなことにならない予感がしたからだ。
「つれないなぁ。俺たち『チーム・ワイルド』って言うんだけどさ。知ってるだろ?」
「知らん」
「えっ」
男が絶句した。
有名なのか? 知らんがな。俺はニュースと天気予報しか見ないんだ。
「ま、まあいいや。今から俺たちとコラボしようぜ! 美少女JKとワイルドな男たちのダンジョン攻略! 絶対バズるって!」
男が俺の肩に手を回そうとしてくる。
俺は半歩下がってそれを避けた。
「断る。私はソロでやっている」
「いいじゃんかよー。減るもんじゃないし」
男たちが囲んでくる。
カメラが俺の顔をアップで撮ろうと迫る。
……鬱陶しい。
害獣駆除の対象に認定してもいいだろうか。
『うわ、チーム・ワイルドだ』
『こいつら、新人に絡んで無理やりコラボする迷惑系だぞ』
『逃げてー!』
『警察呼ぶか?』
俺の配信のコメント欄がざわついている。
どうやら、評判の悪い連中のようだ。
「……カメラをどけろ。視界の邪魔だ」
俺は低く告げた。
だが、男はニヤニヤしながらさらに近づいてくる。
「怖い顔すんなって。ほら、視聴者のみんなに挨拶――」
男の手が、俺のフェイスマスクに伸びた。
素顔を晒そうという魂胆か。
……教育的指導が必要だな。
俺は男の手首を掴んだ。
そして、関節の可動域ギリギリまで捻り上げる。
「ぎゃあああああっ!?」
男が悲鳴を上げて膝をつく。
俺はそのまま、男の耳元で囁いた。
「……いいか、若造。戦場で不用意に他人の体に触れるな。命がいくつあっても足りんぞ」
殺気。
ほんの少しだけ、俺の中に眠る『死神』の気配を漏らす。
それだけで十分だった。
「ひっ……!?」
男の顔から血の気が引いていく。
生物としての本能が、俺という存在への恐怖を訴えているのだ。
俺は手を離した。
男は腰を抜かしたまま、後ずさりする。
「……二度と私の前に現れるな。次は、手首だけじゃ済まない」
俺は冷たく言い放ち、背を向けた。
男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
『かっけえええええ!』
『スカッとした!』
『今の関節技、合気道か?』
『いや、あれは逮捕術に近い』
『「戦場で~」ってセリフ、中二病全開だけどこの子が言うと説得力がすごい』
『チーム・ワイルド、チビって逃げてて草』
コメント欄はお祭り騒ぎだ。
俺はため息をついた。
……また、キャラ設定が「怖い人」になってしまった気がする。
私はただの、盆栽を愛する平和主義者なのだが。
その様子を、遠くから見つめる視線があることに、俺は気づいていなかった。
ギルドの制服を着た、鋭い目つきの男。
彼は無線機に向かって、短く報告した。
「……対象を確認。報告通り、極めて危険な戦闘能力を有しています。接触を試みます」




