第15話:ストーカー被害とカウンター
有名税という言葉がある。
有名になればなるほど、理不尽な税金を払わされるという意味だ。
俺の場合、それはストーカーという形で現れた。
ここ数日、誰かに見られている気配がする。
ダンジョンの行き帰り、コンビニへの買い物、そして自宅の周辺。
プロの俺に対し、隠密行動でここまで接近できるとは、相手もなかなかの手練れだ。
……いや、単に俺の感覚が鈍っているだけか?
「……鬱陶しいな」
俺は自宅のリビングで、カーテンの隙間から外を覗いた。
電柱の陰に、不審な人影がある。
カメラを構えているようだ。
特定班か、パパラッチか、あるいは熱狂的なファンか。
いずれにせよ、俺の平穏な盆栽ライフを脅かす敵だ。
排除する。
俺は制服に着替え、わざとらしく玄関から出た。
手にはコンビニ袋。
「ちょっとそこまで買い物に」という風情を装う。
俺が歩き出すと、人影も動いた。
一定の距離を保ちながらついてくる。
俺は路地裏へと入った。
人通りのない、袋小路だ。
足音が近づいてくる。
俺は角を曲がった先で、壁に背をつけて待機した。
3、2、1……。
人影が角を曲がった瞬間。
俺は相手の襟首を掴み、壁に押し付けた。
同時に、ナイフ(訓練用のゴム製)を喉元に突きつける。
「……何の用だ?」
俺は低く問いただした。
相手は若い男だった。
手には一眼レフカメラ。
恐怖で顔を引きつらせている。
「ひっ、ひぃっ! ご、ごめんなさい! ただ写真を撮りたくて……!」
「許可なく他人を撮るな。肖像権の侵害だ」
「す、すみません! ファンなんです! あなたの住所がネットで売れるって聞いて……!」
金目当てか。
下衆な野郎だ。
「……データを消せ。今ここで」
「は、はい!」
男は震える手でカメラを操作し、データを全消去した。
俺は手を離した。
男はへたり込む。
「二度とするな。次は、そのレンズごと目を潰す」
俺は脅し文句を残して立ち去ろうとした。
だが、その時。
背後から、パチパチという拍手が聞こえた。
「素晴らしい。完璧な制圧術(CQC)ですね」
振り返ると、路地の入り口にスーツ姿の男が立っていた。
黒いサングラス。耳にはインカム。
ただのサラリーマンではない。
この匂い……同業者か、あるいは公的機関のエージェントか。
「……誰だ?」
「国家安全保障局の田中と申します。……『グレイ・ゴースト』さん、とお呼びした方がよろしいですか?」
俺は目を細めた。
正体がバレている。
やはり、国の情報網は侮れないな。
「……人違いだ。私はただの女子高生だ」
「ふふ、そうでしたね。失礼しました。……単刀直入に言います。我々と手を組みませんか? あなたの力が必要なのです」
スカウトか。
俺はため息をついた。
ストーカーを処理したと思ったら、もっと面倒な相手が現れた。
今日は厄日らしい。




