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月トガリ  作者: 吉四六
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史上最低の国王は好き放題にすると心に決める

時間があまりないため推敲がいい加減です。誤字脱字が多いかと思いますが、後日修正いたします。すいません。

 今回の大国主議会は、持ち回りの当番に当たっているカルザン帝国で開催される。

 カルザン帝国の帝都には神州トガナキノ国の別院と呼ばれる建物がある。連邦としての仕事に使われる建物は別にあり、別院は神州トガナキノ国の大使館のような使われ方をしている。

 神州トガナキノ国から出向して来た職員の宿舎であり、俺がカルザン帝国に来た時の宿泊施設だったりする。俺が国王としてカルザン帝国に来た時は、当然、帝城にベッドが用意されるが、お忍びで一民間人として来ることが多いため、主な宿泊施設として、この別院を使っている。

 今回の大国主議会はこの神州トガナキノ国カルザン帝国別院にて開かれる。

 異例なことだ。

 大国主議会は特別な行事だ。行事じゃないな。特別な議会だな。

 連邦内各国の元首が集合して、連邦国家の予算振り分けに今後の運営方針が話し合われる。つまり、王族が大集合して自国の利益のために喧々諤々と貶し合ったりせめぎ合う議会だ。

 通常は各国の王城で開かれる。

 議長には神州トガナキノ国の行政院の者が永世議長を務め、議会で決定した内容が、相応しくない、妥当ではないと議長が判断したら、議長の否決の一言で全て水泡へと帰す、という恐ろしい権限を有している。

 だから、どこの国も大国主議会開催前に事前案件審査書というものを神州トガナキノ国に持ってくる。これは、大国主議会で‘これこれ、こういう案件を議会で話し合いたいと思っています。で、神州トガナキノ国の方ではどのように判断されますか’という物だ。

 当然、神州トガナキノ国で、事前案件審査書について審議が行われ、それぞれの案件に対して事前に回答しておいてから大国主議会に挑むわけだ。通常はそうなんだが、今回は異例の大国主議会となっている。

 連邦各国の神州トガナキノ国を除いた五十五の国から緊急大国主議会を開くように要望書が届けられたのだ。

 主旨は神州トガナキノ国の新神母艦墜落の原因説明とインディガンヌ王国への事前通告なしの侵略行為に関する説明だ。

 連邦内にもインディガンヌ王国と貿易を行っている国が少なからずある。特に奴隷が解禁されている国との貿易はかなり活発だ。連邦内での奴隷は禁止されているが、インディガンヌ王国の奴隷は、クルタスのお陰で、少なくない数の奴隷が洗脳されている。

 奴隷を購入し、密奴隷として飼育するには最適なのだ。

 つまり、連邦各国は神州トガナキノ国を吊し上げ、あわよくば奴隷制度を解禁し、今まで以上に旨い汁を吸い上げたいと、そう考えているのだ。だから、今回は異例も異例、事前案件審査書もなし。議長は神州トガナキノ国行政院第一席のヘルザースが務め、神州トガナキノ国の王族が出席しての天覧議会となることが決まっている。したがって、神州トガナキノ国が警備しやすいようにカルザン帝国の帝城ではなく、神州トガナキノ国の別院が使用されることになったのだ。

 カルザン帝国上空に新神母艦を停泊させる。

 別院には、急遽、新神浄土から直通となるゲートが設置され、議会用の棟が増築された。

 僅か三日ほどの期間だが、それでも神州トガナキノ国の魔法技術をもってすれば不可能ではない。

 イデアが率先して設計に携わり、警備体制を万全のものに仕立て上げた。

 俺は安寧城の天辺に座って、新神浄土と空を見ていた。

 今頃、ヘルザースは真っ青になっているだろう。オルラを始めとした俺の親族たちは魔獣狩りに出かけさせている。

 ヘルザースの期待する神州トガナキノ国の王族は全員がいない状況だ。

 マイクロマシンで別院の議会場を見ている。

 当初から喧々囂々(ごうごう)だ。

 まず、用意されていた天覧席に俺の姿がない。

 神州トガナキノ国は常に約束を違える。国王が会食にも出てこない。大国主議会の議長の否決権は横暴に過ぎる。

 新神浄土墜落の原因は、クルタスという者が原因ではなく、慢心した神州トガナキノ国の行政院の責任である。インディガンヌ王国への侵略行為は国王一人の独断ではないのか?ならば、行政院は何故、国王を諫めることができなかったのか?インディガンヌ王国との貿易損失を補填するべきだ。

 まあ、出るは、出るは、神州トガナキノ国への不満が出てくる一方だ。

 特に医療関係についてはスゲエ出て来た。

 俺は神州トガナキノ国の医療系統の魔法を開示していない。神州トガナキノ国の独占状態だ。

 特に先天的な病気、遺伝子や染色体異常、それと肉体欠損などのマイクロマシンでなければ治療できない疾病に関しては、特に秘匿性が高い。

 まず、連邦内の人間でなければ治療を受けられない。その上、治療を受けるには神州トガナキノ国に入国する必要がある。

 入国審査を受け、禊を受ける。

 完治するまで施設からの外出は禁止。

 霊子薬と呼ばれるマイクロマシン薬を経口投与される場合は、職員の面前で飲まなければならない。施設外への霊子薬の持ち出しは厳禁だ。

 連邦国内の人間であってもこれだけの規制を受けるのだ。連邦国外の人間は神州トガナキノ国の治療を受けることは、ほぼ不可能だ。

 この世界の奴隷制度は治療を目的としている。

 他人の構成細胞を分解して、怪我人や病人の構成細胞へと再構築するのだ。しかし遺伝子に対する知識を持たない魔法使いが治療するのだから、遺伝子治療を要する病気や先天性の病気などの場合、完治することは稀である。運否天賦で完治するのだから患者にしたら堪ったものではない。

 だから、皆が神州トガナキノ国での治療を望む。

 人によっては神州トガナキノ国が医療系魔法を秘匿するのは独占だとみなすだろう。現に連邦国内でもその声は大きい。

 自己制御機能を持たない人間が夢の治療を好きなように使えば、果てにあるのは不死の体だ。

 第二、第三の何森源也やクルタスが生まれる。しかも大量にだ。

 そして繰り返すのだ。

 殺戮戦争と呼ばれる戦争を。

 医療系魔法を秘匿し、奴隷制度を禁止している。そういった理由から神州トガナキノ国に反感を持つ王族は多い。

 神州トガナキノ国に入国すれば、禊を受けなければならない。禊を受けたことによって人権問題に敏くなった者もいれば、自国に帰ってから元通りになった者もいる。

 人権問題に敏くなった者が国の重鎮であったり、高級官僚であったりすると、途端に人権擁護のために自国の王政廃止を訴える。

 国政が揺らぐ。

 だから、各国の王族は神州トガナキノ国への入国を良しとしない。

 神州トガナキノ国の力は欲しいが支配されるのはゴメンこうむりたい。そんな連中が連邦内には沢山いる。

 だから、本大国主議会が紛糾するのだ。

 奴隷制度を復活させろ。

 復活させないのならば、神州トガナキノ国の治療魔法を開示しろ。

 今後も神州トガナキノ国が墜落することがあるかもしれない。だからこそ、他国にもその治療魔法を広める必要がある。

 様々な意見が出てくる。

 どの意見も正当性を訴えているが、自国の利益しか見ていない。

 もう、クルタス事件のことなんかはそっちのけだ。

 ヘルザースの眉間に皺が寄り、眉根が歪められる。

 切れる寸前だな。

 俺は安寧城からカルザン帝国別院へと瞬間移動した。


 カルザン帝国の別院。

 その議場に俺は現れる。

 議長席が最も高い位置にあり、その両サイドをズヌークとローデルが固めている。

 一段下がった所に答弁を述べる演壇が設置されている。現代日本の国会議事堂に近い形だ。

 傍聴席の一番高い場所、議長の対面に位置する席が俺の座る天覧席だが、俺はそこに座らず、演壇に現れる。

 怒号渦巻く議場に、突然、俺が現れたことで全ての動きが止まる。

 俺は長い髪を結い上げ、太陽を象徴する宝冠を被っている。魔獣狩りであることを示すように魔獣の煌びやかな羽で彩られた宝冠だ。

 下に着こんでいるのは銀糸で織られた布で仕立て上げられた着物で、襟にはアギラの白い毛皮でファーを取り付け、俺の顎を隠す。

 着物の上からは薄い蒼の紗で織られた狩衣のような衣。

 帯は金糸と銀糸をふんだんに使い、鳳凰、桐、椿、そして、楓が刺繍されている。

 裾の広がった紫の袴は俺の足元を隠し、花魁とも思える赤い振袖のコートは十二単のように裾が長い。そのコートには鶴と白い獏を金糸と銀糸で刺繍してある。その鶴が照明を反射してキラキラと光る。コートの裾からは狩衣の裾が後方へと伸びている。

 額には第三の目を意味する化粧を施し、目尻には吊り上がった赤いアイシャドウ。化粧できつくなった眼を議場に向ける。

 俺は議場を睥睨する。

 俺は振り返って、ヘルザースを睨む。

ヘルザースの喉が激しく動いて、音を立てて唾を呑み込んだ。

「ヘルザース。そこを退()け。」

 俺の一言でヘルザースが即座にその席を開ける。俺は議長席へと瞬間移動する。

 ゆったりとした仕草で俺は議長席に腰掛ける。

 ヘルザースが演壇へと下りて、跪き、ズヌークとローデルが慌ててそれに追随する。

「ヘルザースらは跪いた。貴様らは(かしず)かぬのか?」

 俺の一言で議場が一気に慌ただしくなる。各国の元首がそそくさと自分の席から床へと跪いたからだ。

「狭いか。」

 俺はそう言って右腕を薙ぐ。一斉に議場の机が消える。

 ザワリと動揺が走る。

「貴様ら、ヘルザースが優しいことをいいことに、好き放題に話しておったな。」

 静まり返る議場。

 呼吸音さえ聞こえない。耳をすませば王族たちの流す汗の音さえ聞き取れるのではないかと思えるほどに静かだ。

「俺はヘルザースほど優しくない。」

 新神記を読んでいる者が大多数を占めるのだ。俺の恐ろしさは知っている筈だ。

 ヘルザースを糾弾していた王族の喉が鳴る。

「インディガンヌ王国を侵略したのは俺の一存だ。気分屋?そうだ。俺は気分次第でお前達の国を亡ぼすことができる。」

 久しぶりに魔王の本領発揮だ。

「本日をもって、神州トガナキノ連邦国を解体することを宣言する。」

 議場がザワリと揺れる。空気その物が揺れたような錯覚を覚える。

「今後は各国の裁量によって独自に国を平定し、民を導け。俺は貴様らのことはもう知らん。好きにしろ。」

 ヘルザースが顔を上げる。

「へ、陛下!!」

 俺はヘルザースを睨んで言葉を留めさせる。

「ヘルザース、ズヌーク、ローデル、貴様らは俺の命令を遂行できなかった。その罪の重さはわかるな?」

 俺の言葉を聞いて、ヘルザースが顔を伏せる。

「は、如何様な罰も甘んじて受けとうございます。」

 俺は頷き、「おって沙汰を下す。」と応え、顔を再び議場へと向ける。

「貴公らに言っておく。今後は、神州トガナキノ国は貴公らの国を守護することはない。それどころか侵略することもあろうと心得よ。」

 そう言って俺は席を立つ。その俺に向かって待ったが掛かる。

「ご無礼を承知でお伺い致しき議がございます!何卒!フロイストロ・ビロ・セスデク・クヴァル・カルザンに発言の機会を!!」

 俺は立ったまま、カルザンの方を向く。

「うむ。許す。立って発言せよ。」

「ありがたき幸せ!」

 カルザンが立ち上がる。

「お伺いいたしきこととは一つ!カルザン帝国が神州トガナキノ国に無条件降伏、神州トガナキノ国への吸収を望んだ場合、その願いは聞き入れて頂けるのでしょうか!」

 カルザンの言葉に議場が騒めく。

 カルザンの隣で跪いている元摂政のルドフィッシュが青褪めた顔でカルザンを見上げる。

 俺はニヤリと笑う。

「ああ。受け入れてやる。その場合は神州トガナキノ国と同様にカルザン帝国にも国体母艦を造ってやる。ただし、神州トガナキノ国の法律はキッチリと守ってもらうぞ。」

 カルザンの頬が紅潮している。

「承知いたしました!本日をもってフロイストロ・ビロ・セスデク・クヴァル・カルザンはサラシナ・トガリ・ヤート陛下に生涯の忠誠を誓い!カルザン帝国は神州トガナキノ国への吸収を願います!!」

「へ、陛下!」

 ルドフィッシュがカルザンの袖を引きながら、小声でカルザンを(たしな)めようとする。が、すでに遅しだ。

「カルザン!今この時をもって!貴様は俺の庇護下に入った!今後!貴様の邪魔立てする者は俺に逆らう者とみなして俺が排除してやる!いつでも俺に言ってこい!!」

 俺の台詞を聞いたルドフィッシュが力なくカルザンの袖から手を放す。

「陛下!私にもカルザン皇帝と同様の機会を賜りとうございます!!」

 ハルディレン王国のトレイザース・プリンコ・デク・オク・ハルディレン ハルディレン王だ。

「おう。許可してやる。立って発言しろ。」

「ありがたき幸せ!ハルディレン王国もカルザン帝国と同じく、この時をもって神州トガナキノ国に吸収されることを望みます!」

 ハルディレンが立ちながら大声で降伏を宣言する。

 俺は、もう一度、ニヤリと笑う。

「よし承った。(こん)年での降伏を受け入れる国は以上の二カ国とする。他の国は俺からの支配を逃れるもよし。反旗を翻すもよし。今、この時をもって各国の好きにしろ。」

 俺は背を反らして議場を見下ろす。

「俺も好きにする。そのことを覚えておけ。」

 両腕を左右に振る。

 天井と壁が消失し、床だけが残る。議員たちは雛壇上の床に跪いているので、俺は議員たちに対し「下りろ。」と命じる。

 驚く者、顔を見合わせる者と様々な反応を見せる。

「サッサと下りろ!」

 俺の怒鳴り声に全員が慌てて、答弁を行う演壇周りに集合する。

 俺の立つ議長席を残し、建物その物を全て分解消去する。

「ヘルザース帰るぞ。」

 ヘルザース、ローデル、ズヌークが頭を垂れて「御意。」と応える。

「カルザン。ハルディレン。」

 俺の呼び掛けに二人がこちらを見る。他の者も微妙な表情でこっちを見てるが、二人は期待に満ちた表情だ。

「こっちから連絡する。その時は官僚を連れてトガナキノに来い。」

「はい!」

 カルザンが元気よく返事する。

「承知いたしました。」

 ハルディレンが行儀よく頭を下げる。

 俺は頷き、ヘルザース達と共に瞬間移動でその場から消えた。

 殺風景な空き地に各国王族と議長席が残る。

 カルザンとハルディレンにとっては希望の風が、他の王族にとっては無常の風が、一陣吹いた。


 大国主議会の次の日、俺は放送局にいた。

 ヘルザース、ズヌークそしてローデルも呼び出している。

 朝の四時。

 ‘今日の王室’の生放送に合わせてのことだ。

 普段は収録して、編集してから放送されるのだが、今日は邪魔が入るといけないので、生放送だ。

「いや~まさか陛下が御出演して下さるとは思いもよりませんでしたな。この陛下専用のセットが無駄にならなくて感無量ですな。」

 ヘルザースがにこやかな表情を作って、俺をそのセットに連れて行く。

 完全に和風だ。

 綺麗な藺草で織られた畳に柱は香る檜。あっさりとした作りだが、香木で作られた座椅子は最高の座り心地だ。座卓が用意され、その上に水が置かれる。俺は胡坐をかいて座り、放送の開始を待つ。

 俺の後ろにはトンナ、アヌヤ、ヒャクヤ、コルナが座っている。

 脇息に右肘を乗せて、俺は定番となっている仮面を着ける。

「へ、陛下。仮面をお着けになるのですか?」

「そうだよ?素顔を曝すの嫌なんだもん。後ろにトンナ達がいるから俺が王様じゃないって疑われることはないだろ?」

「そ、それは左様ですが…」

 いつもなら怒鳴ってくる筈のヘルザースの声音が弱い。

 イラっとしてくる。

 音声チェックや映像チェックが入って、かなりの時間が経過する。普段よりも入念にチェックされているようだ。俺がいるせいでスタッフ連中も緊張してる。

 この番組の生みの親でもあるヘルザースはあっちこっちを忙しなく走り回り、「もう、間もなく放送開始となりますからな。緊張せず、普段通りに話してくだされ。」と何度も言ってくる。

 わかってるよ。なんで王様の俺が緊張するんだよ。いいから、とっとと用意しろよと言いたい。

 定刻になって放送が開始される。

 オープニングが終わったことをスタジオのモニターで確認する。

 隣のセットでヘルザースが話し始める。

 なんか、ニュースキャスターみたいでちょっと笑える。

「おはようございます。本日は遂にサラシナ・トガリ・ヤート陛下が御出演くださいましたので、当初の予定を変更して、陛下より玉言を賜りたいと思います。テレビの前の視聴者の方々も心してお聞きくださるよう、お願いいたします。それでは、陛下、お言葉を頂戴いたします。」

 ヘルザースを撮影していたカメラから、俺に向けられたカメラに切り替わる。

「うにゅ。」

 あ、噛んだ。

 俺は咳払いをして話し始める。

「まずは、この放送を撮影しているスタッフに命ずる。うん。勅命だな。」

 スタジオの雰囲気が一気に固いものへと変わる。

「どのようなことがあっても、俺の話している内容を中断することは許さん。」

 俺は周囲を視線だけで見回す。ヘルザースが緊張してるのが見て取れる。

「今回のクルタスによるテロ行為に関しては遺憾な点が多々あった。まず、俺が留守にしている間、五十三人の死者が出た。」

 ヘルザース、ズヌーク、ローデルが顔を下に向ける。

「人が、病気や事故で死ぬようなことがないように、細心の注意を払って設計し、建造した、この国体母艦でだ。」

 ヘルザースがカメラの向けられていないセットで跪く。ズヌークとローデルもそれに倣う。

「俺が用意した映像を流せ。」

 俺の言葉を受けて、スタッフが映像を流し始める。

 俺が用意した映像とは再現ドラマだ。EMP兵器を使用されるまでは、魔虫が映像を記録していた。

 デジタル映像だが、国体母艦の中央コントロールで保管されていたのでデータは無事だった。

 そのデータをつなぎ合わせ、再現ドラマを作ったのだ。

 内容は、特別連邦捜査局での雷精魔導具盗難事件から始まり、クルタスの追跡、ハルディレン王国の侯爵殺人と大量の洗脳奴隷監禁事件、そして、インディガンヌ王国での洗脳奴隷の発見、それに激怒した俺が突然インディガンヌ王国への侵略を開始する。

 洗脳奴隷の発見についてはインディガンヌ王国へ放っていた密偵からの報告ということにしてある。

 トンナが攫われた事実は隠蔽だ。知っているのは数人だけだし、今後の展開を操作する上でも邪魔になるからな。

 インディガンヌ王国へ宣戦布告した時期に重なって、クルタスのテロ行為が神州トガナキノ国で勃発する。

 そこからはなるべく正確に作り上げた。

 クルタスのEMP攻撃のせいで魔虫が機能しなくなっていたため、俺がイズモリとカナデラに当時の状況を聞きながらデジタル加工で作ったのだ。

 必死に対応するヘルザース、ズヌーク、ローデルの三人。奮闘虚しく暗黒精霊に捕らえられるヘルザースとズヌーク。

 暗黒精霊から国民を必死に守ろうとするトドネ。

 血を吐きながら国民を守ろうとするヘルザース達。

 そこで、登場するヒーローの俺。

 俺は必死になって国民を守ろうとしていたヘルザースをせせら笑い、「もっと、酷い目に合えばいいのに。」と最低の台詞を吐く。

 簡単にクルタスを倒し、ヘルザースに向かって「役立たず。」と、これまた最低の言葉を吐く。

 ちょっと、見てて辛いんですけど。

 映像を作ってる最中も、カナデラに「こんなこと言ったの?マジで?お前、これは酷いよ!」と問い詰めた。

『役立たずとは言ってないけど、その方が、今回は効果的でしょ?』

 とのことだったので、「もっと、酷い目に合えばいいのに。」って台詞は言ったんだ。なんてこと言うんだよ。公衆の面前で。

 最後は俺がヒーローとして勧善懲悪を成して終わるという映像だった。

 その映像が流れ終わって、モニターの映像が俺の仮面へと切り替わる。

「見たとおりだ。俺が信頼して、新神浄土の守りを任せたにもかかわらず、行政院、立法院、司法院のトップがしくじった。」

 背凭れに任せていた上体を前に起こす。

「三人の罪は重い。五十三人の犠牲者の遺族には十分な対応を約束する。しかし、それで、三人の罪が消える訳ではない。この事実を重く受け止め、俺はこの三人を罷免する。」

 スタジオの空気がドヨリと動いた気配がする。

「合わせて、今回、憲法を改正する。神州トガナキノ国の国家元首は国王とされているが、行政院、立法院、司法院の第一席の三者協議制をもって、国家元首とする。」

 俺が背凭れに再び体を預ける。

ヘルザース、ズヌーク、ローデルの三人が驚きの顔を上げる。

「俺も責任を取って国王を辞める。この国の王制度は廃止だ。今後の三院の第一席は選挙で決める。立て!ヘルザース!」

「はっ!!」

 俺の呼び掛けにヘルザースが立ち上がる。カメラがヘルザースを捉える。

「貴様はその選挙戦に立候補しろ!」

「は?」

「国民の命を犠牲にした。貴様はその国民に問うのだ。今後も国民のために働くことを許されるのか否かを。そして、国民に裁かれろ。」

 ヘルザースが俯く。目尻から一筋の涙を流しながら。

「ぎょ、御意。」

「ズヌーク!ローデル!立て!」

「はっ!」

「はい!」

「貴様らも同じだ。立法院と司法院の第一席に立候補しろ!」

 ズヌークとローデルにも同じ言葉を掛ける。

 二人のオッサンも泣きながら返事する。

 まったく、責任感が強すぎるってのも考えもんだよ。この三人、事が終わったら、責任を取って自決するつもりだったんだからな。ホントにもう。辛気臭いったらねえよ。

「三人に言っておく、国民に選ばれなかったときは、貴様らは許されていないということだ。その時は、奴隷制度廃止のために世界中を駆けずり回れ。もし、国民に選ばれ、復職した時は神州トガナキノ国の国民のために働け!」

「御意!」

 三人が力強く応える。

 俺はカメラへと視線を転ずる。

「ということで、俺は国王を辞める。トンナを始めとする王族も、皆、一般市民になる。まあ、最初っから王様なんて柄じゃなかったからな、清々したぜ!後はテメエらが勝手にやれ!俺も勝手に生きて、勝手にそこらで野垂れ死ぬからよ!じゃ、そういうことで。よろしく!」

 俺は最後まで史上最低の国王を演じきった。

 トンナ達は呆れ顔で、力なく笑ってた。

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