4階の攻略
執筆が遅くなり申し訳ございません。
未だに0.3〜4度ほど平熱より高い微妙な熱が続いていて原因不明……まだしばらくペースは上げられないかも……。
4階までがチュートリアル、5階からが本番というのは誰の説だったか。何にせよ、4階までが段階的に成長を促す構造なのは確かだ。
獣や獣人は人間に比べると小柄で、攻撃の間合いが狭い。槍などの長柄の武器でなくても、先制攻撃は人間側がとれる。
しかし、この先は分からない。人間よりも大きな敵や素早い敵が出てくれば、人の方が先制される事も出てくるだろう。
相手の攻撃を防ぐ方法も大事だ。
それを考えさせるのが、4階の盾持ち獣人というのが俺の考えだった。
「毒付きの短剣とか、攻撃させたら危ないと思わせて、実は攻撃をどう防ぐかを考えさせるとか、引っ掛け問題じゃなかろうか?」
「考え過ぎやない?」
トワトワとしては、そこまでの考えはないって事なんだろうか。俺の開発脳が敵の行動に意味を持たせたがってるだけかもしれない。
「何にせよ、相手を先に行動させる事で防御がおろそかになるのが分かれば、倒すのは楽になるだろう」
俺はそれを証明するために次の獲物を探す。
溶岩が固まってできたような洞窟は、冷え方によって色々な形の岩が転がっており、風雨に晒される事がないためにゴツゴツとしている。
足場は安定しないし、下手に手をつくと切れそう。今までで一番歩きにくい構造だった。
「っと、そこか」
首の後ろに静電気で産毛が逆立つような微妙な感覚。【危機察知】スキルの発動を感じて、俺は岩を回り込むようにして、獣人の不意打ちを回避。盾を持った獣人が隠れているのを見つけた。
「先に襲わせたらカウンターで攻撃できたんだろうが、見えない所からの攻撃を受けるのは怖いしな」
スキルのレベルが低いからか、そこまでのスキルではないからか、【危機察知】では襲ってくるタイミングまでは掴みにくい。
俺に見つけられた事を悟った獣人が通路へと出てくる。まずは盾を構えながらジリジリと間合いを詰めてきた。盾を前に半身の構えは、こちらの攻撃をいなそうという意思が伝わってくる。
しかし、俺の狙いはカウンター。こちらからも間合いを詰めて、こちらの攻撃の間合いの内側へと入っていく。
獣人との距離が50cmもないほどに近づくと、盾を持つ手を引きながら、右手に持つ短剣で突いてくる。身長の低い獣人からの突きは、下から跳ね上げる様に胸元を狙ってきた。
その動きがしっかりと見えていれば、対処は難しくない。左半身を引くように半身になって避けながら、獣人の腕を叩く。その腕を這わせるように顔に向かう一撃へと繋げた。顔を逸らそうとするが間に合わず直撃。ふらついた所へと追撃で振り下ろせば勝利だ。
「よしよし、大丈夫だな」
「見事なもんやね」
ダンジョンに潜って棒を振り続けたかいもあり、手足の延長になったかのように棒を扱える。敏捷や器用が成長したからか、【棒術】スキルが成長しているのか分からないが、確実に強くなってるだろう。
「動体視力も上がってる気がするな」
「知覚も知力の範疇やから目も耳も鍛えられとるで」
「記憶力とか思考力が上がってる気はしないんだが……」
「もとが低すぎたんとちがう?」
「ヒドイ」
元の数値が低い方が上がった事を実感しやすいと思うんだが、ダンジョンで鍛られる能力は元々の人が持っている基礎に掛かる倍率なのだろうか。それだと元が低いと成長幅も狭いかもしれない。
「なんだかんだでゲーマーは動体視力が鍛えられてるって事かね」
動体視力が鍛えられるなら野球選手とかにも効果がありそうだな、ダンジョンブートキャンプ。ほとんどの球技に動体視力は必要か。
「とりあえず、4階のマップを埋めていこう」
歩きにくい4階のマップ埋め作業は思ったよりも疲れた。死角に潜む獣人の存在も【危機察知】で分かるとはいえ、緊張感を伴っている。
今までよりも埋められた範囲は少なかったが、時間が来たので撤収した。
帰りにラーメン屋によって晩ごはん。そろそろコレステロールやら塩分やらが気になっているが、サラダだけで生きていける訳もなく、好きな物を食べて運動を頑張ろうという方針だ。ダンジョンに潜ってれば問題ないだろう。
「味玉追加に半チャーハン、豚骨味噌で」
「こってりやな」
スマホに繋いだワイヤレスイヤホンからトワの声は聞こえる。こちらの声も拾えるはずだが、それをすると完全に独り言状態。たまにすれ違う人がワイヤレスで通話しているのも見かけるが、大きな独り言感が強くて自分でやろうとは思わない。
それも人じゃなくてAI相手だしな。
「最近はAI彼女とか流行ってるんやろ?」
「2次元嫁に会話は求めてない」
思わず呟いてしまって左右を気にするが、こちらを気にする人はいなかった。アプリを立ち上げて、文字での入力に切り替える。
『それはさておき、この先を考えたら防具が欲しいな』
「露骨な話題逸らしやけどしゃーないか、せんしてぃぶな年齢やしな。防具が欲しかったらボス部屋やろうね」
『ボス部屋に挑むために防具が欲しいんだけどな』
ボス部屋では敵が複数出るだろう。そうなると負傷する危険性も高い。3階の敵は武器を持った獣人、そのボスも大きな変化はないと思う。数が増えるだけなら立ち位置で相対する人数を絞る事はできるかもしれないが、2階みたいに足場が悪く、死角から襲ってくると移動もままならない可能性があった。
『同じ様なシチュエーションは続かないと思うが、楽になる事はないだろうし……さすがに暗闇とかはないよな?』
「先のことは言えないんやで」
あくまでサポートであるトワに先の攻略を聞くのはなしか。となると頼るのは攻略サイト。3階のボス攻略動画がないか確認……まだないようだ。警戒して慎重になっているだけだよな。挑んで負けたとかないよな。
ダンジョンで負ける……死亡すると色々とややこしい。世論が騒ぐのも問題だが、ダンジョンを作った悪魔にエネルギーを与えてタイムリミットが近づくというのはより深刻だろう。
2階のボス攻略の動画はちらほら上がっていた。足元が水浸しで動きを制限しつつ、水中から襲ってくるのは共通だが、挑む人数によって獣人の数が変わるようだ。
俺の時は2匹だったが、4人で挑むと4匹出るらしい。1人1匹ならと思うが、魔術師が不意打ちで接近戦に持ち込まれると大変そうだった。魔法を使うにはコマンドワードを言う必要があるし、魔法を使うという意識も必要だ。
獣人の攻撃を避けながらだと言葉に詰まるか、狙いが定まらない事態に陥り易い。そもそも遠距離での戦闘ばかりをしてきたなら、攻撃を避けなければならないというだけでパニックになりがちだ。
その動画で魔術師は他の獣人を片付けた戦士が助けに入るまで必死に逃げ回るだけだった。
『2階のボス部屋の難易度を考えて3階は保留にしている人が多そうだ』
今後、警備員として雇われた探索者が潜る様になれば情報が増えるだろうか。配信者と違って動画による情報共有はしないだろうから、参考にできるかは分からない。
『防具のために危険を冒すってのも本末転倒っぽいし、やっぱり保留か』
「ソロやと無理はでけへんなぁ」
『自動販売機に防具が追加されたりしないのか?』
「まだ先の階やね」
『販売の可能性があるなら頑張って先に進むしかないな』
4階の獣人に対しても落ち着いて臨めば戦える事は分かったし、ソロでも行ける範囲をしっかり攻略していくのが吉だ。
そのうち有志が防具を作ってくれるかもしれないしな。
『例えば防刃チョッキ何かは使えそうだけど……え、普通に通販で売ってるのか』
以前、野球のプロテクターとか考えた事もあったが、警備員が着ているような防刃チョッキもネットで買える時代らしい。
それも思ったよりも高くなく、4万も出せば刃だけでなく千枚通しの刺突も止められる物も買えるとか。
『UBCが貯まったらこの辺を買うのが良さそうだ』




