ワンモアチャンス お弁当
●ワンモアチャンス
「どういうことだ?」
ある日気がつくと、私は高校時代にタイムスリップしていた。
本来の私は五十歳で、高校の同窓会の後深酒して、目覚めるとそうなったのだ。
深酒をしたのは、当時好きだったサエちゃんと、両思いだったと判明したためだ。
私はずっと独身だが、それは彼女に未練がという部分も少なからずあった。
しかし彼女は幸せな家庭を築いており、今から付き合うわけにもいかなかったのである。
そうか。これはきっと私を哀れに思った神様か何かの仕業だ。
よーし、それなら、今度こそ勇気を出して告白して、恋を成就させるぞ!
「サエちゅわわわ~ん!」
何だよ、あいつ、両思いなんて嘘じゃねーか! しかも、うおー、戻り方がわからねー!
●お弁当
私は現在、小学六年生。学校は給食だが、弁当を持っていくときもあり、その際は憂鬱だ。
なぜなら、母に料理をする意欲がまったくないから。
私も欠点はあるし、下手でも愛情がこもっていればいいのだ。
しかし、いつも市販品を詰め込んだのが丸出しで、ヘコむのである。
が、何がきっかけか、母は料理に目覚めた。これでお弁当もと、私は喜んだのだが……。
「好美。なに、お弁当隠して食べてんの?」
「いや、うちの親、ちょっと料理が……」
「ああ、うちも苦手だから気にすることないよ……って、なに、それ?」
「ンボンニャ王国の家庭料理のズベベっていうんだ。見た目グロテスクだけどおいしいよ」
母は凝ると、どこまでも手を伸ばすのだった。これなら前のほうがよかった!




