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導かれし真実

「謎解きって、脱出方法がわかったんすか?」

「ええ。先ほどの古時計の異常な動きを見てわかりました」

「京介くん、すごい。じゃあ、早く出ようよ!」

「それはできない…」

「え?どうしてなんだい?」

「田中さん、すみません。俺にはまだやることがあるんです…」俺は目を閉じて話す。

「やること?」

「バラバラになったパーツを組み合わせて、真実を導き出さなければなりません。事実は複数あっても、真実は一つしかありませんから…」

俺はゆっくりと目を開け、語り出す。

「東田が殺害されたのは、間違いなく俺が電話を受けた昨日の夜です。俺はある人物の行動に違和感を持っていました。そして、今さっき皆さんに聞いたことでその違和感は確信へと変わりました」

「わかったわ。茶畑くんね。あの時、電話に出なかったのは彼だけだわ。実は東田くんの部屋に居たのよ」

「え!?ちょ、酷いっすよ、渡辺さん。俺、本当に覚えてないんすよ。多分、部屋で寝てました。俺、一回寝るとなかなか起きないんす」

「本当かしら?」

「確かに、あの時居なかったのは茶畑さんだけですよね?」

「兵藤さんまで…そんな、酷いっす」

「茶畑さんじゃありませんよ」

「え?じゃ、じゃあ、誰なの?あの時、広間へ来なかったのは茶畑くんだけだわ」

「そうですね。しかし、昨日も話しましたけど、茶畑さんにも東田の部屋に入ることはできませんよ。鍵は指紋認証装置付きのキーホルダーに有りましたし、今日の朝、東田の部屋を確認した時に鍵がありましたよね?」

「ええ、密室だったわ」

「では、お聞きしますが茶畑さんはどうやって密室を作り出したのでしょうか?」

「っ!?」

「わかりましたか?仮に茶畑さんが東田の部屋に居たとします。しかし、自分が外に出て鍵を閉めたら密室は作れません」

「その通りね…」

「じゃあ、俺っちの疑いは晴れたんすか?」

「でも、それじゃあ皆んなが同じ場所に立っただけで茶畑くんが無実だとはまだ言えなくないかしら?」

「そ、そんなぁ」茶畑は落胆している。

「渡部さんの言う通りですね。しかし、この状況で密室を作れた人物は一人しかいません。俺が持っていた違和感の答えが、全てある人物しか犯行を行えないということ指し示していました」

「誰なの?犯人は」

「東田を殺害した犯人はあなたですよ。静香さん…」

「!?」全員が静香の方を振り返る。

「え?何言っているの、京介くん。私はあなたに協力してきたんだよ?」

「はい。しかし、あなたが俺に協力した理由は別のところにあったんだよ」

「別のところ?私は東田さんの態度が気に入らなかったから京介くんに協力したんだよ」

「もう、やめよう。そんな小芝居」

「京介くん、私だっていい加減怒るよ。何が小芝居だって言うの?」

「静香さん、あなたは東田と以前から面識がありますよね?」

「!?」

「その表情を見る限り、間違ってはいなさそうですね」

「兵藤さん、そうなの?」

「わ、渡辺さんまで、私を疑っているんですか?」

「静香さん、朝俺が質問したの覚えてる?昨日、東田に呼ばれてたことについて聞いたんだけど」

「うん。でも、謎について話してただけでそれ以外は何も話してないよ」

「それだよ…俺は呼ばれてたことを確認しただけで、何を話していたかなんて聞いてないよね?どうして、そんな答え方をしたの?」

「それは言いがかりよ。この程度なら会話の流れからして不自然でもないんじゃない?」

「確かにね。でも、謎について以外話していないっていうのは嘘だよね?」

「嘘じゃないよ!何を根拠に言ってるの?」

「皆さんにも昨日、俺と東田が喧嘩した時のこと思い出して欲しいんです。東田が年上への態度がなってないとか言ってましたよね?」

「ええ。自分もでしょ、って思ったわ」

「その時、東田は、お前三年だろ?俺は大学四年なんだから敬語を使え、って言ってました」

「はっ!?」

「静香さん、気が付いたんだね。俺は自己紹介の時、大学生だとは言ったけど三年生とまでは言っていない。俺が大学生三年生だと言ったのは、静香さん、あなただけなんだ。それを東田が知っているってことは、あなたが教えた以外考えられない…これでも、言い逃れするのかい?」

「兵藤さん…?」

「うん。ごめんね、京介くん。確かに東田さんとは以前から知り合いだったよ。でも、それが事件と何の関係があるの?」

「大ありだよ。東田が紙の謎が解けたと言ったのも、それを材料に俺に喧嘩を売ってきたのも、全部あなたと東田が組んでいたからなんだよ」

「え!?兵藤さんと東田くんが組んでいたって、どういうことなの?」

「静香さんが俺側についたのは、俺から情報を引き出して東田に伝えるためだったんだ。東田は星座について多少の知識はあったようだけど、答えまでは導き出せていなかったはずだ。だから、田中さんが答えを聞いた時、あいつは教えなかったんだ。あれは俺がいる場では言えない、ということではなく、俺が二枚目の謎を解いてなかったからなんだ。一枚目の謎の答えは静香さんにだけ伝えていたから、それを東田に教えたんだろう」

「京介くん、すごい想像力だね!でも、仮にそうだとしてもなんで私が東田さんを殺さなくちゃいけないの?第一、東田さんの部屋は密室だったじゃない。それは私にも東田さんを殺せないという証拠じゃない?」

「本当に密室だったらね」

「!?ふふふ、何を言ってるの京介くん?言ってることが無茶苦茶だよ。鍵は東田さんの部屋にあったじゃない」

「ああ、あなたが置いたんだ」

「物分かり悪いね。そんな頭が悪いとは思わなかったよ」

「そうだよ。俺っちでもわかるよ。部屋に鍵をかけたのに部屋に鍵があるなんておかしな話だ」

「茶畑さん、勘違いしています。茶畑さんだけではありません、皆さん勘違いしてますよ」

「勘違い?何を勘違いするっていうの?実は、東田くんの部屋は開いていたの?」

「いえ。東田から電話がかかってきた時、間違いなく東田の部屋には鍵が掛かっていましたよ」

「だったら、密室のままじゃないかしら?」

「違うんですよ。勘違いしているのは、密室かどうかではありません。そもそも、東田が殺害されたのは本当に自分の部屋だったのでしょうか?」

「え!?どういうことなんだね。殺害された東田くん本人がそう言っていたんだろ?君がそう言っていたじゃないか!」

「そうよ。田中さんのいう通りだわ。実際、東田くんの死体は東田くんの部屋にあったじゃない」

「そうですね。しかし、それは俺たちが寝静まった後に静香さんが移動させたんです」

「京介くん、同じことを言わせないで。だとしたら、なんで鍵は中にあったのよ!」

「それも含めて、順に話しましょう。渡辺さん、さっきのメモを見せてもらえますか?」

渡辺が畳の配置が描かれた紙を広げる。

「皆さん、これを見てください」

「これは?」

「先ほど、皆さんのお部屋に渡辺さんが行きましたよね?その時にメモして頂いたものです。これは、皆さんの部屋にある畳の配置を描いたものですが、東田が自分の部屋だと判断した理由がここにはあります」

「あ、微妙にちがうんすね」

「そうです。渡辺さんが言ってたんですが、六畳の配置の仕方は11通りあります。それぞれの部屋は配置が上下対象であったりと、微妙に違うんです」

「じゃあ、東田くんはその畳の配置で自分の部屋だと判断したということだったんだね?」

「その通りです」

「京介くん、朝にも話したよね?東田さんが畳の配置の違いに気付くことはなかったって」

「だから、静香さんが教えたんだろ?俺が田中さんに、東田が部屋に来たことはあるか聞いた時、田中さんは東田は来てないって言ってたよ。そうでしたよね?」

「うん。私はそう答えたよ」

「だったら」静香が喋るのを遮るように俺は続ける。

「でも、田中さんはこうも言っていたよ。東田は来てないけど兵藤さんは来た、って。田中さん、静香さんは何をしに来たんですか?」

「謎について何かわからないか、って言ってたな」

「そうだよ!京介くんのために田中さんに聞きに言ったんだよ」

「いや、違う!あなたは東田の部屋に行っことがあり、その時に畳の配置が微妙に違うことに気付いた。そして、東田殺しのトリックに使うことを思いついた。それを確実にするために田中さんの部屋に行ったんだ!そして、この特徴を東田に伝えて刷り込ませた。殺害現場を東田自身に証言させるためにね」

「じゃあ、本当の殺害現場はどこなんすか?」

「答えはこのメモに書いてありました。この畳の配置で東田自身に自分の部屋だと錯覚させられる部屋は、静香さん、あなたの部屋しかない…」

「花月くん、どういうことかしら?東田くんと兵藤さんの部屋の畳の配置は上下逆よ?それに、コンセントは対角の位置にあるじゃない」

「この紙の上ではそうかもしれません。ある実験をして見ましょう。少し、待ってください」そう言い、俺は東田の部屋に行った。少しして、俺は全員を東田の部屋へ呼んだ。

「花月くん、何をしようっていうの?」

「東田の遺体と布団は隅へ寄せておきました。皆さん、コンセントがある方を見てください」

全員がコンセント側を見る。

「こ、これがなんだっていうんだい?」

「皆さん、この光景を覚えてください。では、静香さん、あなたの部屋へ招待していただけますか?嫌とは言えませんよね?」

「…………」静香は黙りながら、自分の部屋へ案内する。

「皆さん、これが東田殺害のトリックです!」

静香の部屋へ入ると東田の部屋と全く同じ光景が広がっていた。

「こ、これは…」

「嘘でしょ…」

「東田と静香さんの部屋の畳の配置は上下対象で、コンセントの位置は対角にあります。そして、静香さんの部屋を180度回転させると、畳の配置もコンセントの位置も全く同じになるんです。恐らく、布団の置き方なども同じにしたんでしょう。まして、自分の状況を(つか)めていない東田からしたら、この部屋を自分の部屋だと勘違いしてもおかしくない。そして、静香さんの思惑通りに証言してしまったんだ」

「…………」

「静香さん、何か言うことはあるか?」

「状況証拠だよ。そう、それはあくまでも憶測でしょ?物的証拠はあるの!?東田さんの部屋には血が飛び散っていたじゃない。だとしたら、殺害現場はやっぱり東田さんの部屋でしょ!?」

「往生際が悪いよ、静香さん。証拠はあるんだ。あなたが犯人だという決定的な証拠がね」

「じゃあ、言ってよ!私が殺した証拠を!」

「わかった…あなたが殺害したという証拠はこの部屋にある!」

「っ!?」

「東田の部屋に血が飛び散っていたのは、東田の部屋で殺害されたように見せかけるために、死体を運んだ後にもう一度殴ったんだ。凶器は広間の棚の上にあった像だと思う」

「待ってよ。だったら私の部屋に血の跡がないのはおかしいでしょ!」

「だったら見せてあげるよ。言い逃れのできない、決定的な証拠を!」俺は部屋の中を歩き、毛布を引き抜いた。

「これだよ!あなたが東田を殺害したという決定的な証拠はね!」

俺が毛布を引き抜くとそこには赤い血が染み込んでいた。

「こ、これは!?」

「…………」

「東田を殴る時に、この毛布を被せた上から殴ったんだ。そうすれば、部屋に血が飛び散ることはない」

「は、ははは…」静香は笑い出した。

「京介くん、どうして毛布を被せてから殴ったってわかったの?」

「うん。血が飛び散っていないっていうのもそうだけど、何より布団の置き方が不自然だったんだ」

「置き方?」

「そう、渡辺さんも褒めていたけど静香さんは性格からしても几帳面な人だと思うんだ。だけど、静香さんの部屋に行った時、今のように毛布の上に布団が綺麗に乗せてあった。普通、毛布の方を上に置くだろ?それで、この毛布を隠したいんじゃないか、って思ったんだよ」

「いつから、私を疑ってたの?」

「東田からSOSの電話があって俺が東田の部屋の扉を叩いていると、静香さんは部屋から出てきただろ?」

「うん、そうだね」

「でも、あの行動はやっぱ不自然だったんだ」

「どこがかな?」

「今朝渡辺さんに、詳しい畳の配置を聞いて欲しい、と頼んだ時なんだけど、確認するために渡辺さんが茶畑さんの部屋の扉を結構な強さで叩いていたんだ。でも、茶畑さんは出てこなかった。代わりに電話をかけると、その電話にはすぐに出たんだ。その後、茶畑さんは扉を叩いていたことに気付かなかった、って渡辺さんに言ったんですよね?」

「そうだよ。全然何も聞こえなかった」

「そう。だから、昨日も静香さん以外には電話を掛けて広間に集まってもらった。そして、謎解きを始める前に最後の質問をしましたよね?」

「ええ、東田くんから電話があった時、何をしていたか、っていう質問よね?」

「はい。皆さんと同じく、静香さんも部屋に居た、と言っていました。でも、静香さん、それはおかしいよね?部屋に居たなら、俺が東田の部屋の扉を叩いていたことに気付くはずがないんだ。東田を殺害した後、階段を降りて扉の前で俺が騒ぎ始めるのを待っていたんだろ?そして、タイミングを見計らってあたかも騒ぎを聞きつけたように出てくる。でも、それが裏目に出たんだな…」

「やっぱり、私の見込んだ通りだったよ。さっきは、頭が悪いなんて言ってごめんね」

「それより、なんで…」

静香は動機について語り始めた。






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