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新たなる闘い

「東田と私は大学のサークルで知り合ったの。東田はサークルにいる女の子を手当たり次第口説いていたわ。実際、私も口説かれて、短い期間だったけど付き合っていた。あいつが浮気していたのを知って別れたのだけど、ことはそれだけでは終わらなかった。あいつは、私の大事な友達を餌に私を脅迫して来たの」

「脅迫?」

「うん。あいつは別れたあともしつこく私に言い寄ってきた。私も無視し続けていたから、それは別によかったの。でも、ある日、東田はある写真を見せて言ったの。

『この写真、ばら撒いてもいいんだけどなー。お前ならわかるよな?』

あいつが見せてきたのは、私の親友のポルノ写真だった。所謂、リベンジポルノね。脅迫されている人と写真に写っている人は違うけど、私にとっては絶対に放っておけなかった。大学でもあいつは私を監視していた。昨日もそうだったの。脅迫されて東田の家に行くことになった。そして、東田と河原を歩いている時に突然後ろから何かを嗅がされた気がして、気付いたらあの部屋に居たの。畳の下に出口があることに気付いてここに出てきたわ。そしたら、東田が居たの。あいつも私に気が付いて直ぐに近づいてきたわ。京介くんがさっき指摘したこと、私が東田と何を話していたか、ってことだけど、その時に京介くんから情報を引き出してくるように言われたの。そして、京介くんと話したこととかを東田に伝えるために、あいつの部屋にも行った。そして、畳の配置が見方によっては違うように見えることに気が付いたのよ。もしかして、と思って田中さんの部屋にお邪魔させてもらったわ。やっぱり、私の読みは当たっていた。そして、それを使って東田を殺そうと思ったのよ。後は京介くんの言った通りだよ」

「そうだったんだね…。でも、静香さんのしたことは許されることじゃない。ここを出たら自首してくれるね?」

「約束するよ」

ピーンポーンパーンポーン

「皆さん、残念なお知らせです。この館は十分後に爆破します。急いで脱出を目指してください」

「そ、そんな!」

「俺っち、死んじゃうんすか!?」

「京介くん…」

「皆さん落ち着いてください」

「いや、落ち着けないっすよ!」

「そ、そうだ、私には早く帰らないといけない理由があるのに…」

「茶畑くんも田中さんもしっかりしなさい!」渡辺が喝を入れる。

「まだ、九分近くあります。これだけあれば十分ですよ」

「皆さん、京介くんを信じましょう」

「ありがとう、静香さん。手短に話します。まず、一枚目の紙の謎の答えは『雨』です。全ての言葉に共通するのは『雨』だからです。そして、二枚目の紙の謎の答えは『弓』です。シュケディは山羊座を構成する星で、アンタレスは蠍座を構成する星です。そして、気付いて欲しいのはこの間に『?』マークがあることです。蠍座と山羊座の間は、十二星座で言うと射手座になります。そして、射手座のケンタウロスが持っている物は『弓』です」

「だけど、それが脱出とどう関係あるのかしら?」

「あります。ここからはもう一捻り必要ですが…」

「京介くん、どうするの?」

「さっき古時計が一時を指したところから、三時まで巻き戻って行ったよね?」

「うん。何でだろうね?」

「それが答えだったからだよ」

「え?どういうこと?」

「『雨』と『弓』を英語にするんだ」

「『レイン』と『ボウ』……あっ!?」静香が大きな声を上げる。

「気付いたね。そう、洒落(しゃれ)みたいなものだけど、レインとボウでレインボーだ。つまり、『虹』。言い換えるなら、『二時』かな…」俺はゆっくりと歩き出し、古時計の前まで行く。そして、古時計のカバーを開け、短針と長針を動かす。

「おい!どこかで見ているんだろ?お前らが何でこんなことをさせるのかはわからない。でも、必ずお前らの正体を暴いてやる。この館から出る方法はこれだ!」

短針と長針を動かし、丁度二時を示すと、古時計が大きな音を鳴らして、針が回転し始めた。

ボーンボーンボーンボーンボーン

カチャカチャカチャカチャカチャカチャ

「え!?何?」

「なにが起こってるっすか?」

すると、どこからか音がする。

プシュー

「何の音?みんな大丈夫?」

「なにが起きてるっすか?催眠ガスすか?」

「皆さん、しっかりし…」急に眠くなり、俺はその場に倒れこんだ。


ワンッ!ワンッ!

「んー?暑い…」俺は目を開けた。

「っ!?」

薄暗い館とは違う、いつもの青空が広がっていた。俺はベンチに座っていて、カバンが横に置いてあった。

「俺は出られたのか…?そういえばここ、俺が館に行く前に通った公園だよな。じゃあ、他の人たちも出られたのか?」

「花月くん!花月くんじゃない!?」

「えっ?」振り向くと渡辺がいた。

「渡辺さん!どうしてここに?」

「花月くんこそ、どうして…」

「俺は館に来る前にここを通ったんです。そこで何かを見た気がして、ここらへんで気を失ったんだと思います」

「私は、ここの近くの弁護士事務所にいたわ。気付いたら、また事務所にいたのよ」

「俺たち、脱出できたんですよね?」

「そうね。あなたのお陰よ。そうだ!今から事務所へ来ない?本当に近いから、少しお話ししましょうよ」

「いいんですか?お仕事中じゃ?」

「いいのよ。秘書の人に少し時間を貰ったの」

「では、お言葉に甘えて」渡辺の事務所へ向かった。

「私たちがいなくなってから二日らしいわ。新聞にも五人の失踪者、なんて出てるらしいわ」

「やっぱりそうでしたか…」

「やっぱりって?」

「あ、もしかしてあの渡辺事務所って書いてある所ですか?」

「ええ、そうよ」

「じゃあ、中に入ってからお話ししますね」

事務所へ入ると、秘書が働いていた。

「ただいま」

「渡辺先生!もうよろしいんですか?」

「いえ、ちょっと大事な知り合いに会ったから招いたのよ。もう少し席を外してもいいかしら?」

「勿論ですよ!先生がいなくなって、私…」

「ありがとう、菜々子ちゃん。花月くん、紹介するわ。この子は南(みなみ)菜(な)々(な)子(こ)ちゃんよ」

「あ、こんにちわ。渡辺先生の助手をしている、南菜々子と言います」

「あ、どうも。俺は花月京介と言います。渡辺さんにはとてもお世話になりました」

「花月くん、まだこの子には何があったか話してないのよ」

「そうなんですか」

「じゃあ、菜々子ちゃん、客室で話してくるから何かあったら遠慮なく言ってね。それと、飲み物をお願い」

「はい、わかりました」

渡辺は俺を客室へ案内した。

「でも、花月くんもここらへんの人だったなんてね」

「そうですね。大学も近くにあるので」

「え、じゃあ、専徳大学?」

「はい、そうです」

「私も専徳の法学部出身よ」

「そうだったんですか」

「そういえば、さっき何に気が付いたの?」

「渡辺さんが捜索願が出されたのは五人だって言ってましたよね?」

「でも、あそこにいたのは東田も含めて六人ですよ?」

「確かに。誰かのが出されてないってことかしら」

「敢えて出してないんだと思います。これも憶測なんですが、俺たちの中に今回のゲームを仕掛けた組織と繋がっている人間がいたんだと思います」

「ええ!?でも、みんな普通の人たちだったじゃない」

「あの館では不思議なことがたくさんありました。あの館には、俺たち以外にも誰かがいたんです」

「その、組織っていうやつかしら?」

「ええ、部屋の鍵を見つける前の話なんですが、俺たちがそれぞれ部屋から出てきた時、鍵なんて閉めていないのに扉が開きませんでした。それに、館内放送のタイミングも絶妙なタイミングでした。ですから、やはり俺たちは監視されていたんだと思います。それに、失踪者五人っていうのもおかしな話です」

「組織の人間がいたってこと?」

「いえ、違います。一日目の最初の放送で参加者が確定したって言ってましたよね。そして、扉は十枚あるから四人はあの部屋に閉じ込められていた、ってことになるはずです。それに、放送でもそう言っていました」

「確かに言っていたわ」

「そうだとしたら、五人はおかしくないですか?一人は組織の人間だとしても、残り九人もいて四人分が出されてないということになります」

「確かに変だわ」

「本当は、残りの四部屋には誰もいなかったんじゃないかって思うんです」

「私たちはなんでこんなことに巻き込まれたのかしら…」

「わからないです。でも、何か大きな組織が裏にあると思うんです。俺はそれを突き止めたいと思います」

「危険じゃない?それに私たちの中に組織の人間がいたんでしょ?」

「俺たちの中に紛れ込んでいた組織の人間については、おおよその見当はついています」

「え?誰なの?」

「茶畑さんですよ」

「……冗談でしょ?あの茶畑くんが?」

「俺も信じ難かったですが、おそらくは…」

「どうして、そう思うの?」

「古時計の針を二時に合わせた後、ガスが出てきて寝てしまいましたよね?」

「確かに急に眠くなったわね。あれはガスだったの?」

「そうなんです。普通、今の渡辺さんのような反応をしますよね。何が起こったかわからないんですから。でも、あの中で茶畑さんだけは直ぐに、催眠ガス、と言ったんです」

「そうだったのね」

「はい。茶畑さんを見てればわかりますが、組織の人間はどんな人間に化けてるかわかりません」

「そうかもしれないわね。私もできることなら協力するわ。いつでも事務所にいらっしゃい」

「ありがとうございます!親も心配していると思うので、今日は帰りますね」

ドアを開けると丁度、菜々子がコーヒーを持ってきたところだった。

「あれ、もう帰るんですか?」

「あ、すみません。折角淹れていただいたんですけど、心配している人がいるので帰りますね」

俺は事務所を出て家へ向かった。次なる目標を胸に。




少しでも読んで頂いた方、本当に有難うございました。また、文章力も無く、普通の文章しか書けない私の小説に評価を下さった方、とても感謝しております。活動報告でも申し上げた通り、もしも評価を頂けるのでしたら、花月京介と組織との闘いについて書いていきたいと思っています。ですが、取り敢えずは「六畳間の殺人』は完結です。本当に有難うございました!

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