第八話 共闘の刃
風が止んだ。
燃え尽きた森の中心で、三つの影が向かい合う。
服部半蔵。
影丸。
そして――猿飛佐助。
「……選んだか」
佐助が静かに笑う。
「影を」
「違う」
影丸が答える。
その声は、まだ不安定だ。
だが――確かに“自分”のものだった。
「俺は……俺の意志で戦う」
「ほう……」
佐助の目が細められる。
「ならば、その意志――」
「砕いてやる」
ドン!!!
地面が爆ぜる。
佐助の踏み込みは、これまで以上に鋭い。
だが。
ヒュン。
二つの影が、同時に消えた。
ギィィィン!!!
激突。
左右から挟み込む斬撃。
半蔵と影丸の同時攻撃。
「連携か……!」
佐助が笑う。
槍を回し、二人の刃を弾き返す。
しかし。
「まだだ」
半蔵の声。
ヒュッ――
影丸が、さらに踏み込む。
ボッ!!
その刃に、青白い炎が宿る。
「……使えるのか」
半蔵が一瞬だけ目を細める。
「制御は……出来ない」
影丸が歯を食いしばる。
「だが……乗せるくらいならな」
ズバッ!!
斬撃が走る。
炎を纏った一撃。
「面白い……!」
佐助が受け止める。
だが、その腕に――
ジリ……と、焼け跡。
「効いている……!」
遠くで見ていたお凛が息を呑む。
「そうか……それが答えか」
佐助が低く呟く。
「核の力は、“拒絶”してもなお使える……」
その目が、さらに鋭くなる。
「ならば――」
ボォォォォッ!!!
黒い炎が爆発的に膨れ上がる。
「こちらも、全てを解放する」
空が歪む。
地面が沈む。
その圧だけで、呼吸が苦しくなる。
「くっ……!」
お凛が膝をつく。
「これが……本気……!」
その中心で。
半蔵は、一歩も動かない。
「影丸」
「……はい」
「一度きりだ」
短い言葉。
だが、すべてが込められていた。
「合わせろ」
「……分かりました」
その瞬間。
二人の気配が、消えた。
「来るか……!」
佐助が構える。
ヒュン――
見えない。
だが、感じる。
前。
後ろ。
上。
「どこだ!!」
次の瞬間――
ズバッ!!
右肩が裂ける。
「ぐっ……!」
さらに。
ヒュン!!
左脚。
そして。
背中。
「……っ!!」
見えない斬撃が、連続で襲う。
「影と炎の……重ね撃ち……!」
影丸の炎が、半蔵の影に溶け込む。
どこから来るか、分からない。
「だが――」
佐助が歯を食いしばる。
「甘い!!」
ドォン!!!
全方位に、炎を解き放つ。
爆発。
すべてを巻き込む。
「半蔵様!!影丸!!」
煙が、視界を覆う。
静寂。
だが――
「終わっていない」
声が、背後から響いた。
「なに……!?」
振り向いた、その瞬間。
ズバァッ!!!
決定的な一撃。
佐助の胸を、深く斬り裂く。
「が……っ……!」
膝をつく佐助。
その前に立つのは――
半蔵と影丸。
「決まった……!」
お凛が息を呑む。
だが。
「……まだだ」
佐助が、笑った。
「何……?」
「これで終わると思ったか」
その体が、ゆっくりと立ち上がる。
ボォォォォッ!!!!
炎が、さらに膨れ上がる。
「しぶとい……!」
「違うな」
佐助が言う。
「ここからが――本番だ」
その瞬間。
空気が、変わる。
まるで――“何か”が降りてくるように。
影丸の体が、ビクリと震える。
「……来る……」
「何が……?」
お凛が問う。
影丸の目が、見開かれる。
「“本物”が……」
闇が、震える。




