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第十一話 遺された意志

風が、静かに吹いていた。




 焼け焦げた大地の上で、ひとりの男が膝をついている。


 影丸。


 その腕の中には――




 動かぬままの、服部半蔵。


「……なんでだよ……」




 かすれた声。


「戻ったのに……」


 拳が、震える。


「俺は……戻ったのに……」


 沈黙。


 その静寂を――


「……終わった気でいるのか?」


 低い声が、切り裂いた。


 振り向く。


 そこに立つのは――




 猿飛佐助。


 血にまみれ、満身創痍。




 だが、その目はまだ燃えている。


「……佐助」




 影丸の声が低くなる。


「貴様……まだ……」


「当然だ」




 佐助は笑う。


「これで終わりではない」


 槍を構える。


「むしろ――ここからだ」


 その言葉に。




 影丸は、ゆっくりと半蔵を地面に横たえる。


 そして――立ち上がる。


「……分かった」


 その目には、もう迷いはない。


「お前を、止める」


「ほう……」




 佐助が目を細める。


「ようやく“覚悟”を決めたか」


「違う」


 影丸は静かに言う。


「これは――」


 一歩、踏み出す。


「半蔵様の意志だ」


 その瞬間。


 ヒュン!!


 消えた。


 ドン!!!




 激突。


 これまでとは違う。




 速さも、重さも、すべてが段違い。


「いいぞ……!」




 佐助が笑う。


「それだ!それこそが“力”だ!」


 槍を振るう。


 だが。


 ギィィン!!!


 影丸の刃が、それを弾き返す。


「……違う」


 低く、鋭い声。


「これは――力じゃない」


 ヒュッ――




 踏み込む。


「繋がりだ」


 ズバッ!!


 斬撃が走る。




 佐助の肩が裂ける。


「ぐっ……!」


「半蔵様は……」


 さらに一歩。


「命を懸けて、俺を戻した」


 炎が、静かに灯る。


「だから俺は――」


 その炎は、暴れていない。




 ただ、寄り添うように刃を包む。


「この力を……自分で選ぶ」


 ズドン!!!




 衝突。


「……なるほどな」




 佐助が笑う。


「ようやく理解したか」


「何を」


「力とは何かをだ」


 その目が、静かに変わる。


「……だがな」


 次の瞬間。


 ボォォォッ!!!


 黒い炎が、最後の力を振り絞るように燃え上がる。


「それでも――俺は、力を選ぶ」


 ドン!!!




 最後の突撃。


「来い、影丸!!」


「行くぞ、佐助!!」


 ヒュン!!


 交差。


 一瞬。


 時間が止まる。


 そして――


 ズバァッ!!!


 決着。


 静寂。


 風が、ゆっくりと吹き抜ける。


 立っていたのは――


 影丸。


 その背後で。


 ドサッ――


 猿飛佐助が、崩れ落ちる。


「……見事だ……」


 血を吐きながら、笑う。


「最後に……いいものを見せてもらった……」


「……佐助」


「お前は……強いな……」


 その目が、ゆっくりと閉じていく。


「だが……忘れるな……」


 かすれた声。


「力は……また……生まれる……」


 そして――


 動かなくなった。


 静寂。


 すべてが、終わった。


 影丸は、ゆっくりと振り返る。


 そこには――


 動かぬ半蔵。


 そして、涙を流すお凛。


「……終わったな……」


 だが、その声には――




 どこか、空虚さが残っていた

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