74 新技術のワクチン
○【オ・ソレイユ中央病院内、特別室から出た廊下】
特別に借りていた部屋から廊下へ出ると、スーツ姿の男女2人が立っている。
健康調査室 男性職員
「大変、申し訳ございません。『健康調査室』の者ですが、少しお話しおうかがいしてもよろしいでしょうか?
ギヨティーヌ
「いえ現在、立て込んでおりまして……」
(と言いましても、お話し合いは一旦お開きになったのですが。)
マダム・ローズ
「何の御用でしょう。」
マダム・ローズ・タルトが対応すると、女性職員が名乗り挨拶をしてきた。
健康調査室 女性職員
「お忙しいところ恐れ入ります。少しお話しよろしいでしょうか? 私は健康調査室のマクシーヌ・ボノーと申します。」
ギヨティーヌ
「はじめまして。わたくしは、ラ・キャン帝国オ・ソレイユ守タタン家4女令嬢、ギヨティーヌ・タタンでございます。
マクシーヌ・ボノーさま… 立ち話でよろしければ……」
健康調査室 女性職員
「タタン家のご令嬢で御座いましたか、ご丁寧に恐れ入ります。
ウォーウイルス感染症に付きまして、お話しおうかがい致しても、よろしゅう御座いますか?」
ギヨティーヌ
「よろしくてよ。」
その女性と、もう一人の男性は健康調査室を名乗る。省庁も彼女たちへの聴き取り調査に乗り出したらしい。
健康調査室 女性職員
「―――― そうなんですね、ではケモイチ村にも居られたと。」
ギヨティーヌ
「そ〜なんですのよ。ねえマノンさん。」
マノン
「は、はい。そうなんです…」
健康調査室 男性職員
「なるほど。ところでウォーウイルス感染症の、
予防接種に関しては、どうお考えでしょうか?」
マダム・ローズ
「予防接種も色々と御座いますよね、昔はそのままだったり。」
健康調査室 男性職員
「良くご存知でらっしゃいますね、昔は、まぁ… 生のウイルスを接種しておりました。それが発症を引き起こす原因ともなる場合が御座いまして。それで……」
マダム・ローズ
「下水道で培養されて仕舞ったことも、御座いましたね。」
健康調査室 男性職員
「そうです、本当によくご存知でらっしゃる、それが原因で感染する例も御座いました。
ですのでウイルスとして活動出来ないように ❝不活化❞ させた『不活化ワクチン』を使用してまいった訳ですが。
今回、新しい技術のワクチンも御座いましてですね……」
マダム・ローズ
「新しい技術ですか?! そんな未知数の技術の使用は、明らかに危険では有りませんか!!」
健康調査室 男性職員
「治験もやっておりますし。いやいや、もうこれ以上は何も言えないのですが。あー、そうですか……」
ギヨティーヌ
(ハッ! これは嫌な予感がしますわ… 前世でも謎の病気が流行して、
わたくしも仕事がら『新技術のワクチン』なるモノを接種したのですけれど、その後に ❝帯状疱疹❞ で苦しむことになったのでした!
何故あの時、あの『新技術のワクチン』はあんなにもゴリ押しされたのでしょう――――)
「よろしいでしょうか?!」
健康調査室 男性職員
「はい? はい。」
ギヨティーヌ
「わたくしも未知の新技術による予防接種は危険だと思いますわ! ただお聞きしたいのですけれど… 新技術のワクチン使用に国際的な圧力があったりするのでしょうか?」
健康調査室 女性職員
「いえ、あのこの話しは… もぉ……」
ギヨティーヌ
「使わないと政治家の生命が危ないとか、それくらいまで新技術の予防接種に国際的な圧力があるのでしたら。
生命をかけて、その新技術のワクチンの使用を止めるしか御座いませんわねッ!」
健康調査室 女性職員・男性職員
「……」
マダム・ローズ
「そうです、〈殺せるモノなら殺してみろ〉の覚悟を持って阻止しませんと!」
ギヨティーヌ
「生命を盾にすれば良いでは御座いませんか。
次、そして次、また次と。政治家が生命を張れば良いのです!」
マノン
「お師匠さま! それはちょっと言い過ぎじゃ…」
ギヨティーヌは弟子のマノンへ諭すように、
ギヨティーヌ
「仕方が御座いませんのよ、政治やってるんですから。
生命を賭けるシーンも有るだろうと想定できなくて、政治なんかに関わるなってんですわ。」
マダム・ローズ
「その通りです!」
ギヨティーヌ
「暗殺する積もりなら、どんなことをしてでも生命を取りに掛りますわ。
おそらく大々的にヤリますわよ、映像撮らせて、〈ほらいま死んだ〉てな工合に。」
マダム・ローズ
「そして、〈こんなに恨まれてました、だから仕方がないんです〉などの宣伝をして、
話しを『新技術のワクチン』と繋がらないように工作するでしょうね!」
マノン
「そうなんですか……」
先程までは対立していた、ギヨティーヌとマダム・ローズであったが2人は共闘する。
『昨日の敵は今日の友』だ。
健康調査室 女性職員
(ギヨティーヌ・タタンと、マダム・ローズ・タルト。確かに師とその教え子ですね〜〜)
ギヨティーヌ
「―――― わたくしが言えるのは… ここまで予測ができるのですから〈殺される準備をしといた方が良い〉と言うことですわね。」
健康調査室 女性職員
「例えば?」
ギヨティーヌ
「… 本当に殺されれば良いなんて、わたくしも思っていませんわ!
『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』ですわよ。」
健康調査室 女性職員
「身を捨てて… もっと具体的に!」
ギヨティーヌ
(食い下がって来ますわね〜 そうですわ…)
「『死せる孔明、生ける仲達を走らす』と云う故事が御座いますわね。」
健康調査室 女性職員
「… 聞いたこと有りませんが?」
女性職員、男性職員共に顔を見合わせ、マダム・ローズも黙っている。
ギヨティーヌ
(しまった、また前世の知識が… ∑(・ω・`; ) )
「まあ、とにかく…
優れた人物は亡くなった後も、生きてる者を恐れさせることが御座いますのよ!」
(この時の孔明さまは人形だったのですけれど、仲達さまは〈これは孔明の罠だ!〉と疑って退却したのですわ。)
少し早口になるギヨティーヌの話しを聞きながら、
ジーっと彼女の目を見つめたマクシーヌ・ボノーを名乗る、健康調査室の女性職員だったが…
健康調査室 女性職員
「…… なるほど… 参考になりました。
たいへん良いお話しをお聞かせ頂き、ありがとうございました。」
と言い残し2人は去って行く。
後で、マダム・ローズが調べてくれたのだが、❝健康調査室❞ なる部署は何処の省庁にも存在しないことが判明したのである。




