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令嬢ギロチン  作者: 近太夫
2の巻 令嬢立志伝
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63/74

63 勝った者が決めます

○【マダム・ローズの回想。オ・ソレイユ領内、タタン家のビル屋上中庭】



 当時14歳のギヨティーヌ・タタンは、今日もテーブルを挟んで椅子へ座り、教育係のマダム・ローズ・タルトの授業を受けている。



マダム・ローズ

「…… ではギヨティーヌさん、リーダーにとって忘れてはならないことは何ですか?」


ギヨティーヌ

「はいマダム。リーダーは、

しんじんゆうげん〉の順番で5つのとくが必要です。」


マダム・ローズ

「徳ですか?」


ギヨティーヌ

「それと、リーダーの5つの危ないこと。『しょう五危ごきあり』

必死ひっし必生ひっせい忿速ふんそく廉潔れんけつ愛民あいみん〉これも忘れてはなりませんわ。

 リーダーは自分が必死になるのではなくて、皆を必死にさせるのが役割ですから――――」


マダム・ローズ

「…… そ、そうですね…」



 またある時は……

 ギヨティーヌが、河原から拾って来た平べったい石や、棒状の石を、ブロックの上で左手で持ちその下にはタオルを敷き、右手刀みぎしゅとうにて石を割ろうと何度も打ち付けた。



ギヨティーヌ

「チェスト━━! チェスト━━! チェスト━━! チェスト━━!・・・」


 ダン! ダン! ダン! ダン!・・・



マダム・ローズ

「ギヨティーヌさん! 何をやってるんですかっ!?!」


ギヨティーヌ

「石を割ろうとしてるのですわ。

 チェスト━━! チェスト━━! チェスト━━!」


 ダン! ダン! ダン!



マダム・ローズ

「…… 魔法を使えば割れますから… 怪我をして仕舞いますよ!!」


ギヨティーヌ

「魔法もぜひ習いたいですわ!…

 ―――― コツがるんですけれど、中々身体が… 覚えませんわね……

 チェスト━━!」


 ガチッ!


ギヨティーヌ

「あっ、見て下さいマダム。石のはしが割れましたわ!

 チェスト━━! チェスト━━!・・・」


 ダン! ダン!・・・



マダム・ローズ

「お、おう……」

(ギヨティーヌさん、貴女あなたは… いったい何処どこを目指しているのぉ?……)



○【現在。再び、オ・ソレイユ中央病院、中庭フェニックスの木陰】



マダム・ローズ

(―――― もどって来たギヨティーヌさんは、見違える程に々しくなって、何処の女武者おんなむしゃかと思いましたけれど。

 ギヨティーヌさんに何が起こったと言うのでしょう〜)

「…… 政治の延長としての戦争はたしかにそうですね… ただ、

 一番に考え無ければならないのは、武力攻撃を受けた時、これを排除するために行う〈自衛権じえいけん行使こうし〉、

防衛戦争ぼうえいせんそう』です。


 自分の大切な人が目の前でひどい目に合っている、これに抵抗する戦争になります。

 自分たちはヤリたくなくても、ヤラなければならなくなる戦争ですね。

 自分の国内で戦争はしたくないですから、『防衛戦争』はだんだんと自分の国から離れて行くことになります。


 ミサイルがこちらへ着弾してから『防衛戦争ぼうえいせんそう』をするのか? 着弾させたくないですよね。では、

 ミサイルを打ち落とせるのか?

 ミサイルを配備したから、その国のミサイル基地を攻撃できるのか? 相手も『防衛戦争』だと言って、こちらへ武力行使ぶりょくこうしして来るかも知れません。


 どの段階で武力行使とするのか?

 戦闘員せんとういんを、学生・旅行者・労働者といつわって侵入しんにゅうさせた段階?


 どっちが侵略しんりゃくした、どちらが正しかった、間違っていた。

 マノンさん。戦争で誰がそれを決めるのでしょう、おわかりになりますか?」


マノン

「… 勝った者が決めます。」



 マダム・ローズは、ギヨティーヌを見やり意味ありげに微笑まれ、



マダム・ローズ

「そうです。勝った者が正義を主張してルールを決めることになります。

 とても良く勉強なさってますね、ギヨティーヌさんでなくても、お弟子さんにしたいと思うでしょう。

 ねぇ、ギヨティーヌさん、わたくしにマノンさん下さいません?」


ギヨティーヌ

「ダメですわマダムぅ、マノンさんを物みたいにおっしゃっちゃぁ〜」


マダム・ローズ

「あら、ごめんあそぁせマノンさん。」



 マノン・マドレーヌは、このやり取りに呆気あっけに取られる表情をした。


 その時! 地をう如く空気を震わす、太く低い響き!!



「ヴオォォォォォォ〜〜〜バブグゴォォ〜〜」


ギヨティーヌ

「何事ですの?!」



○【オ・ソレイユ中央病院、中庭へ続く廊下】



 その声は、人々に恐怖と圧迫感あっぱくかんを与える。

 患者数名と、車椅子を押す看護師が慌ててこちらへ走って来た!



看護師

「大変です! ウォーウイルス感染者が発症はっしょうしたようです。

 早く皆さん、避難を!!」


ギヨティーヌ

「発症者は何名ですの?」


看護師

「確認は出来ていませんが複数人です、特にその中の ❝さい人族❞ の方が大変暴れてられて……」


マノン

「お師匠さま!」



 ギヨティーヌは、マノン、アルコル、廉貞れんてい、タコハチC:。彡を見渡し、うなずき合うと、



ギヨティーヌ

「マダム・ローズ、患者さんたちと避難してください。」


マダム・ローズ

「分かりました、

 ―――― わたくしが。」


看護師

「ありがとうございます。さあこちらから早く!

 大丈夫ですか?」


松葉杖の患者

「ありがとうございます。」



 マダム・ローズ・タルトが看護師に代わって車椅子を押す手を止め、ギヨティーヌたちへ向き直り、



マダム・ローズ

「皆さんはっ?!」


ギヨティーヌ

「わたくし共には、やることが御座いましてよ。

 禄存ろくぞんさん、武曲ぶごくさん、文曲もんごくさん、破軍はぐんさん――――

 出てこいやぁ!」



 ギヨティーヌ・タタンの背後より煙霧えんむは上がり、紫微しび一族の4つの影が浮かび出る。

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