63 勝った者が決めます
○【マダム・ローズの回想。オ・ソレイユ領内、タタン家のビル屋上中庭】
当時14歳のギヨティーヌ・タタンは、今日もテーブルを挟んで椅子へ座り、教育係のマダム・ローズ・タルトの授業を受けている。
マダム・ローズ
「…… ではギヨティーヌさん、リーダーにとって忘れてはならないことは何ですか?」
ギヨティーヌ
「はいマダム。リーダーは、
〈智・信・仁・勇・厳〉の順番で5つの徳が必要です。」
マダム・ローズ
「徳ですか?」
ギヨティーヌ
「それと、リーダーの5つの危ないこと。『将に五危あり』
〈必死・必生・忿速・廉潔・愛民〉これも忘れてはなりませんわ。
リーダーは自分が必死になるのではなくて、皆を必死にさせるのが役割ですから――――」
マダム・ローズ
「…… そ、そうですね…」
またある時は……
ギヨティーヌが、河原から拾って来た平べったい石や、棒状の石を、ブロックの上で左手で持ちその下にはタオルを敷き、右手刀にて石を割ろうと何度も打ち付けた。
ギヨティーヌ
「チェスト━━! チェスト━━! チェスト━━! チェスト━━!・・・」
ダン! ダン! ダン! ダン!・・・
マダム・ローズ
「ギヨティーヌさん! 何をやってるんですかっ!?!」
ギヨティーヌ
「石を割ろうとしてるのですわ。
チェスト━━! チェスト━━! チェスト━━!」
ダン! ダン! ダン!
マダム・ローズ
「…… 魔法を使えば割れますから… 怪我をして仕舞いますよ!!」
ギヨティーヌ
「魔法もぜひ習いたいですわ!…
―――― コツが要るんですけれど、中々身体が… 覚えませんわね……
チェスト━━!」
ガチッ!
ギヨティーヌ
「あっ、見て下さいマダム。石の端が割れましたわ!
チェスト━━! チェスト━━!・・・」
ダン! ダン!・・・
マダム・ローズ
「お、おう……」
(ギヨティーヌさん、貴女は… いったい何処を目指しているのぉ?……)
○【現在。再び、オ・ソレイユ中央病院、中庭フェニックスの木陰】
マダム・ローズ
(―――― もどって来たギヨティーヌさんは、見違える程に凛々しくなって、何処の女武者かと思いましたけれど。
ギヨティーヌさんに何が起こったと言うのでしょう〜)
「…… 政治の延長としての戦争はたしかにそうですね… ただ、
一番に考え無ければならないのは、武力攻撃を受けた時、これを排除するために行う〈自衛権の行使〉、
『防衛戦争』です。
自分の大切な人が目の前で酷い目に合っている、これに抵抗する戦争になります。
自分たちはヤリたくなくても、ヤラなければならなくなる戦争ですね。
自分の国内で戦争はしたくないですから、『防衛戦争』はだんだんと自分の国から離れて行くことになります。
ミサイルがこちらへ着弾してから『防衛戦争』をするのか? 着弾させたくないですよね。では、
ミサイルを打ち落とせるのか?
ミサイルを配備したから、その国のミサイル基地を攻撃できるのか? 相手も『防衛戦争』だと言って、こちらへ武力行使して来るかも知れません。
どの段階で武力行使とするのか?
戦闘員を、学生・旅行者・労働者と偽って侵入させた段階?
どっちが侵略した、どちらが正しかった、間違っていた。
マノンさん。戦争で誰がそれを決めるのでしょう、お判りになりますか?」
マノン
「… 勝った者が決めます。」
マダム・ローズは、ギヨティーヌを見やり意味ありげに微笑まれ、
マダム・ローズ
「そうです。勝った者が正義を主張してルールを決めることになります。
とても良く勉強なさってますね、ギヨティーヌさんでなくても、お弟子さんにしたいと思うでしょう。
ねぇ、ギヨティーヌさん、わたくしにマノンさん下さいません?」
ギヨティーヌ
「ダメですわマダムぅ、マノンさんを物みたいにおっしゃっちゃぁ〜」
マダム・ローズ
「あら、ごめんあそぁせマノンさん。」
マノン・マドレーヌは、このやり取りに呆気に取られる表情をした。
その時! 地を這う如く空気を震わす、太く低い響き!!
「ヴオォォォォォォ〜〜〜バブグゴォォ〜〜」
ギヨティーヌ
「何事ですの?!」
○【オ・ソレイユ中央病院、中庭へ続く廊下】
その声は、人々に恐怖と圧迫感を与える。
患者数名と、車椅子を押す看護師が慌ててこちらへ走って来た!
看護師
「大変です! ウォーウイルス感染者が発症したようです。
早く皆さん、避難を!!」
ギヨティーヌ
「発症者は何名ですの?」
看護師
「確認は出来ていませんが複数人です、特にその中の ❝犀人族❞ の方が大変暴れて居られて……」
マノン
「お師匠さま!」
ギヨティーヌは、マノン、アルコル、廉貞、タコハチC:。彡を見渡し、うなずき合うと、
ギヨティーヌ
「マダム・ローズ、患者さんたちと避難してください。」
マダム・ローズ
「分かりました、
―――― わたくしが。」
看護師
「ありがとうございます。さあこちらから早く!
大丈夫ですか?」
松葉杖の患者
「ありがとうございます。」
マダム・ローズ・タルトが看護師に代わって車椅子を押す手を止め、ギヨティーヌたちへ向き直り、
マダム・ローズ
「皆さんはっ?!」
ギヨティーヌ
「わたくし共には、やることが御座いましてよ。
禄存さん、武曲さん、文曲さん、破軍さん――――
出てこいやぁ!」
ギヨティーヌ・タタンの背後より煙霧は上がり、紫微一族の4つの影が浮かび出る。




