第67話
ラ・カームの目が覚めた時、王宮の三階にある自室に寝かされていた。
ぼんやりとした記憶、自分が何をしたのかさえおぼろげだった。
そっと目を開けるとまぶしくてよく見えないが、女性が立っているようであった。
「ラ・カーム、目を覚ましたの?」
聞きなれた母親、ナスタシャの声がする。
「ラァとラナは」
「二人も大丈夫、少しだけ記憶があいまいだけど、あなたに会いたがっているわ、とても」
「そっか」言ってラ・カームは涙が出た。
「あれ、どうしたんだろ」涙がとめどなく溢れる。
「今回の件、誰もお咎めはなしよ、サーシャさんもキヌアさんも、もちろんあなたもね」
「でも、僕は・・・」
「物はいつか壊れるわ、それが、たとえどんなに大切なものでも」
「もう少し寝てなさい、ラァもラナもすぐに飛んでくるでしょ」
ラ・カームが目を覚ました時にはすぐ近くにラァとラナがいることはなんとなく分かっていた。
多分二人にも分かっているはずだ。
ナスタシャが部屋から出るのと同時に二人が入ってきた。
『ラ・カーム』ラァもラナも同時に叫んでいた。
「なんか、ずいぶん二人に会ってなかったね」起き上がろうとしたが、全身にまだ力が入らない。
「ごめんね、私たちのために」ラァが目を真っ赤にしてラ・カームに抱き着いた。
「・・・ありがとう、ラ・カーム」ラナは涙をこらえようともせずラ・カームに抱き着いた。
「うん・・・」二人の顔をみて安心したのか、またラ・カームは眠りに入った。




