第49話
二人が身の上話をしているうちにユーラの町も暗くなってきた。
「そろそろ夕食ができている時間だと思います、食堂に行きましょうか」
「そうだね」
二人が一階の食堂に行くと、他の宿泊客や店員など十五名くらいの人であふれていた。
その日の夕食も魚料理がメインディッシュで薄いパン生地のパイに包んで食べるようだった。
「あ、おいしそー」サーシャが無邪気に言った。
「あっちのほうが空いているみたいだよ」窓際の席を指してラ・カームが言った。
二人が食事をしていると、宿の正面のドアが荒々しく開いた。
「人を探している、店主はいるか」
どうやらユーラの町の自警団のようだった。
「まずいね、サーシャ」ラ・カームが小声で言った。
自警団は五名くらいいるようだった。
二人の実力からすれば地方の自警団が百人いようがどうしようもないが、ここで騒ぎを起こすわけにもいかない。
「なんだ」大きな声を出して店主が出てきた。
「この宿の宿泊客の名簿を出してもらおう、また、一人ずつ連れてくるように」
「悪いが、ここは俺の宿だし、ここにいるのは俺の客だ、出て行ってくれるか」
「は・・・何を言っている、これは王国からの依頼だぞ」
「何もくそもない、俺の宿の客は宿にいる間は秘密も財産も身の安全も保障する、悪いがもう何十年もやっているんだ、国王が出てきてもそれを曲げるつもりはない」
「ほかの宿は全部協力しているんだぞ!」自警団の一人が大きな声で言った。
「どこの宿がどうだろうと関係ないね、ここはオレの宿だ」
「店主の言うことが正しいんじゃないか」それまで傍観者だった宿泊客からも声が出た。
「王国からの正式な捜索令状もなさそうじゃないか」法律に詳しそうな男も自警団を咎めた。
食堂にいた者のうち十名程度が逆に自警団を囲み始めた。
「そういうことだ、ここは大人しく帰ってくれ」店主が告げた。
「く・・覚えておけよ、自警団に歯向かったんだからな」
「ああ、覚えておくよ」
五名の自警団員はなおもぐずぐずしていたが、やむを得なく帰って行った。
自警団が帰っていくと、宿泊客たちもそれぞれに食事や部屋に戻った。
ラ・カームたちも食事を手短に終わらせると、自室に戻っていった。
「ふうー助かったね」ラ・カームが言った。
「ほんとですねー、一時はどうなるかと思いましたよ」サーシャも同意した。
「でも、これ以上迷惑はかけられないよ、ほんとに他の宿を捜索しているんだったら、ここも怪しまれる、近衛団が来たら、さっきみたいにはいかないよ」ラ・カームが少し考えながら言った。
「そうですね、明日の朝には船も出ますし、野宿しましょう」
サーシャはベッドの下に銀貨一枚を入れておいた、せめてものお礼であった。
「店主さんに届けばいいね」
二人はなにも言わず出て行くことにした。




