第48話
「私の髪の毛の色変わっていますよね?」
「珍しいよね、黒髪に赤毛が混じっているなんて」
「私のおじいさんがキリスオー出身の亜人なんですよ、猫耳の種族」
「あ、たしかミルシャ先生の授業できいたことあるよ、おじいさんがキリスオーってことはクォーターっていうのかな?」
「そうです、キリスオーの人たちはあまり人と交わることがないんですけど、おじいさんは違って世界中を回って商いをしていたんです。そして、北部森林のロズオブニア近くの村で私のおばあちゃんに当たる人と一緒になったんです」
「そうだったんだ」
「理由は分からないんですけど、キリスオーの特徴は子供にはそのまま遺伝されなくて、私の父も猫耳ではなかったんですよ、ただ、髪の色は真っ赤でした」
「じゃあ、もしかしてお母さんが黒い髪なのかな?」
「はい、その通りです」
「でも、サーシャは身寄りがないって・・・」
「私の両親も祖父も祖母も、イグニクェトゥアとラ・カーム王国の戦いに巻き込まれて死にました、十二年前」
「そうだったんだ・・・」
「村の名前はオーセニア、そこにラ・カームの北部方面軍の一部の部隊が逃げ込んだのです。そして、イグニクェトゥアの魔術兵団は戦略魔法ファ・ラグナロクによって、北部方面軍ごと、オーセニアの村を焼き払いました」サーシャの言葉が震えていた。
「サーシャ・・・」
「私は、たまたま近くの丘に遊びに行っていて助かったんですが、親類も友達も跡形もなくなっていました。四歳の時のことなのにはっきりと覚えているんですよ、たくさんの人が死んでしまって、私もそのまま死ぬのかなって思ったんです」
「うん・・・」
「大きな魔法が使われたからなんでしょうか、人の世界とは関わりを持たないはずのロズオブニア地方のエルフの方がきて、私を拾ってくれたんです、私の師匠でもある方です」サーシャの瞳に涙がにじみ出ていた。
「辛いこと思い出させてしまってごめん」
「ううん、いいんです、私あの頃からいつ死んでもいいって思っているんですよ」
「サーシャ」ラ・カームが強い口調で言った。
「二度とそんなこと口に出したらダメだ、君のご家族のことは、王族でもある僕の責任だ、本当に申し訳ない」
「ラ・カーム様が生まれる前のことですよ、謝らないでくださいよ」
「王族に生まれるということは、ラ・カーム王国の歴史そのものの責任を負うことだよ」
「もう、まじめさんなんだからぁ、私はラ・カーム様が好きで、だから今回もお供させていただいたし、そっちのほうの責任とってくださいよ!」
「え・・・っと、サーシャのことは好きだよ、けど」
「もーシスコンなんだからー、ラァ様とラナ様が心配でしょうがないんですよね」
「うん・・・」
「こうなったら強引に押し倒しちゃおうかしら」
「え・・だめだよ、サーシャ」
「冗談に決まっていますよー、ばか」
「あ、怒っているよね・・ごめんなさい」
「完全に怒っていますよー」ほっぺたを膨らませてプイっと横を向いた。
「ああ、なんと言えばいいのか、僕には恋愛っていうのはまだよくわからなくて」
「それに、愛しいお姉さまと妹さまがいますからねー」
「サーシャ、とげとげしいよ」
「あ、言い過ぎたかな、ごめんなさい」
「いや、僕もまだまだなんだよ、いつかきちんと答えを出すから」
「そーしてください、もう、学校では優秀な生徒だったのに、恋愛のほうは落第点ですよー」
「でも、サーシャありがとう、僕だけではなにもできなかった」
「私だって、今生きていることが奇跡だし、師匠には助けられっぱなしな上に今回も助けて頂くのですから、なにも言えないですよ」
「サーシャにも師匠さんにもいつか報いなきゃいけないね」
「私にだったらチュッてしてくれるだけでいいんですよ」
「そ・・そうなんだ」ラ・カームは照れて真っ赤な顔をしていた。
「本気にしないでください、私まで照れるじゃないですか」サーシャも顔を赤くしていた。




