第47話
明日の昼にはロズオブニアへの定期船が出るはずだ、しかし近衛団の追跡がどこまできているか分からなかった。
サーシャは普段、黒と赤の目立つ髪色をしている分、髪の毛を黒く染めた今なら、怪しい行動をしなければばれないだろう、そう考えて船着き場のほうまで歩いてみた。
思った通りというべきか、船着き場には近衛団が五名ほど立哨して、乗船する人物のチェックをしていた。
これでは、さすがに普通に船に乗ろうとすれば気づかれるだろう。
どうやって乗船するか考えながら、サーシャは宿に戻った。
「おかえり、サーシャ」
「全部食べ終わったみたいですね、ラ・カーム様」
「うん、おいしかったよ、ラァたちにも・・・」言って途中で言葉を遮った。
「ラ・カーム様・・・」
「ごめん、なんでもないよ、サーシャのほうはどうだった?」
「船着き場には、数名の近衛団がいましたから普通に乗船するのは難しそうです、少し作戦を立てないといけないかもしれません」
「そっか・・・」ラ・カームは少し考えてから
「二人で同時に乗船するとばれると思うんだ、でも、サーシャだけなら多分気づかれずに乗れると思う、手配も二人って書いてあるだろうから」
「ラ・カーム様はどうするんですか?」
「僕は泳いで密航するよ」
「ラ・カーム様にそんなことさせられませんよ」サーシャは戸惑いながらそう言った。
「気持ちはありがたいけど、これは僕の戦いなんだ。それに十歳の子どもが一人で乗船したらそれこそ怪しまれるからね」
ラ・カームの言葉にサーシャは納得するしかなかった」
夜までにはまだ時間があったが、追われている二人が外出するわけにも行かず、部屋の中で過ごしていた。
「サーシャ」
「なんですか?ラ・カーム様」
「僕はサーシャのこと、なにも聞いてなかったなって思って、よかったらサーシャのこと教えてくれないかな、夜まで時間もあるし」
「私のことですか」急にサーシャの顔が少しこわばった。
「あ、ごめん、あんまり話したくない事だったかな」
「いえ、そんなことはないです・・・ラ・カーム様になら」
「無理に言わないでいいんだよ」
「聞いてほしいです、ラ・カーム様に」
「うん」




