第40話
「これは、ラ・カーム殿下」ダナ・カシムが大きな声で近寄ってきた。
「団長、お久しぶりです」
「今日は紹介したい人がいましてな」
「お隣の方ですか」
「お察しのとおり、南部方面軍のアリヌ・リセです」ダナ・カシムが伝えた。
「よろしくお願いします」アリヌ・リセが頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします、お噂はかねがね聞いております」
「光栄です」
「殿下が国王となるころには、現在よりもさらに航空部隊の重要性が高まると考えております、アリヌとはうまくやっていってください」ダナ・カシムが言った。
「実は僕もグリフォンの操縦については興味があって、できれば授業の中に加えてくれないか申請しているところです」
「もし、実現すれば南部方面軍は全面的に協力させて頂きます」
サーシャ・アビヌはいつもと違って緊張して、顔色が少し悪かった。
「サーシャさん大丈夫?」近づいてラ・カームが聞いた。
「こんなにたくさんの方がいらっしゃるなんて、ちょっとびっくりしてしまっています」
「緊張しないで、今日サーシャさんは招待されているんだから、美味しいものでも食べていきなよ」
「はい、殿下はすごいですね、やっぱり」
「そんなことないよ・・・」
「いえ、でも普段食べられない物ばっかりだから、食べてきます、あー、あそこのスイーツ!!私の給料じゃ手が出ないやつです!行ってきます!!」
「元気だな」少し笑いながらラ・カームは見送っていた。
北部森林の戦いに勝った直後のことでもあり、親衛隊発隊式は盛況のうちに終了した。
散会のあと、シュナイゼルと枢密院副院長マル・ラキが廊下でばったり出会った。
「マル・ラキ殿」
「シュナイゼル殿、今回は大変だったようで」
「しかし、今回のイグニクェトゥアの動き妙ですよね」シュナイゼルが言った。
「妙と言うと?」
「殿下暗殺のためなら、サイレントキラー一人をクアナ湖に向かわせればよかったのに、五軍全てで攻めてくるというのは、理解に苦しみます、まあ、そのおかげでこちらはサイレントキラー対策に専念できましたが」
「たしかに、暗殺であれば今回の動きはおかしいですね、同感です」
その話をしていたところにダナ・カシムが通りかかった。
「それは、あちらさんもメンツというものがあるんだろう」苦々しげに言った。
「メンツか」シュナイゼルが言う。
「まだ幼い殿下をサイレントキラーだけで暗殺してしまえば、国際的な非難は避けられないし、なにより五軍全て投入すれば我が軍を突破できると考えたのだろう」
「なるほど、そういう考えもあるか」シュナイゼルは分かったような分からないような顔で呟いた。




