第38話
ラ・カームは学校が終わると毎日王宮まで行って、ラァとラナのお見舞いをしていた。
「ミルシャ先生、顔色があまりよくないです、少しは休まれてください」
「殿下ありがとうございます、交代まであと三十分ですから」
「毎日ありがとうございます」
「もったいないお言葉です、私の責任でもありますから」
「僕に力がなかったから・・・」
「ラ・カーム様・・・」
「サーシャはどうですか」
「よくやってくれています、僕の配下というのはもったいないですよ」
「あの子はあの子なりに壁に突き当たっています、今回の人事もよくよく考えてのことです殿下にはみなが期待しています」
「はい・・・」
学校の自室に戻って窓から外を見ると収穫祭の賑わいが聞こえてくる。
去年はたしか、三人で行ったんだ。ラ・カームはふと思い出した。
ラァが屋台で売っているリンゴ飴を美味しそうに食べているのも、ラナが打ち上げ花火を見ながら楽しそうにしていたのもなにか遠い昔のことのように思えた。
そういえば・・・ラ・カームは短剣を取り出した。
これは、クアナ湖でチナがプラスエンチャントの術式をかけたものであり、なんらかの魔法効果がかかっているはずである。
事件が立て続けに起こったこともあり、そのままにしていた。
「なんの効果があるんだろう・・・」
ラ・カームは学校の裏まで行って短剣を構えてみた。
すっと瞑想する。
軽く振ってみると
ズンッ!
という大きな音とともに剣の軌跡にそって雷系の衝撃が十メートル先まで届き、目の前の木もなぎ倒されていた。
「これは・・・」
今度は、気合を入れて、自身の術式を唱えるイメージを重ねて振ってみた。
ドンッ
先ほどの数倍の音がして、二百メートルの扇状に全ての物が薙ぎ払われていた。
「すごい・・・」
学校内の音に気付いて、シュナイゼルら近衛団が集まってきていた。
「これは」シュナイゼルがラ・カームに聞いた。
「チナさんのプラスエンチャントの短剣の威力です」
「なるほど・・」なにかを言いいかけて、シュナイゼルは言葉を飲み込んだ。
プラスエンチャントの武器は使い手を選ぶ、もしくは使い手が必要としている効果があるというべきか。
魔法術式を使えないダナ・カシムの斧は魔法効果を消滅させる効果があるし、シュナイゼルの剣は自身の炎魔法を自在に使いこなせる。
ラ・カームの短剣は純粋に力を求めたラ・カームに従ったということなのだろうか。




