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ラ・カーム戦記  作者: 神名 信
36/70

第36話

じっとしていられずに、ラ・カームが階下へ降りると、ちょうど御前会議を終えたダナ・カシムがいた。

 「殿下御無沙汰しております」ダナ・カシムが声をかける。

 「団長、頼みがあります」

 「なんでしょうか」

 「イグニクェトゥアには青軍団長を務めるラ・プレという女性がいるそうで、回復魔法においては世界一とか」

 「わたしも聞いたことはあります」

「ラァとラナの治療をその方に頼めないでしょうか、交換に僕の命を差し出してもいいです」

 「殿下、言っていいこととそうでないものがあります」

 「冗談ではありません」

 ラ・カームが言った瞬間ダナ・カシムはラ・カームの肩をつかんで言った。

 「殿下、申し訳ないがあなたの命はあなただけのものじゃない、今回俺の軍で一万の犠牲が出た、全てこの国を守るため、陛下や殿下のためです、いい加減にしてください」周囲を気遣ってはいるが殺気すらこもった声でダナ・カシムは言った。

 「すまない、団長・・・」

 「殿下、あなたはまだなんの力もない、シュナイゼルやミルシャに守られている、王国に守られている」

 「はい」

 「それは投資です、この国の、殿下はラ・カーム王国全国民の希望なんですよ、俺の部下もロゼたち死んでいったやつらも、それを信じたから今回の作戦、勝利したんです」

 「ありがとう・・・団長」

 「いえ言いすぎました、殿下、申し訳ありません、無責任な言い方かもしれませんが、殿下はいい国王になられると思います」

 「それまで、この国を支えてください、団長」

 「はい」

 「殿下にもお会いできました、夕刻には軍団本部に戻ります、ラァ様、ラナ様にもよろしくお伝えください」

 「はい、くれぐれも無理はなさらないでください」

 「ありがたきお言葉です、殿下」言って、ダナ・カシムは踵を返した。


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