幕間 ~冬イベ あの二人~
よう、読者のみんな。俺が語り部になるのは初めてだったよな。俺の名前は西崎勇太。中田優とは小さい頃から親友同士だ。そして突然だが、俺はその優の家で開催されている、クリスマスパーティーに参加してる。……え、知ってた? ああ、本編でそこやったのか。まあ、それなら話が早い。俺は優からプレゼントを貰った後、以前から予定していた計画を実行に移すことにしたんだ。だから、読者のみんなには、その一部始終を見守って欲しいんだ。……って、なんで俺はこんなメタな考えごとをしてるんだ? 緊張のせいで頭がおかしくなったのか?
「どうしたんですか? そんなところで突っ立って、ぶつぶつと」
若干時空を超えた演説を脳内で繰り広げていると、優が訝しげに尋ねてきた。おっと、今の俺って、傍からみるととんでもなく変な奴だよな。ちょっと思考内容が口から漏れてたみたいだし。
「いや、別になんでもないぞ」
「そうですか」
そう答えると、優はそのまま去ってしまった。多分、パーティーの進行云々で忙しいのだろう。
「ふぅ……さて、と」
そろそろ、当初の目的を果たすとするか。俺はあやめの傍までやって来ると、他の連中には聞かれないように声を掛けた。
「おい、あやめ」
「ん? にゃんだい?」
うっ、暴走状態継続中なのに、言動が一々可愛すぎる……。けど、こんなところで怯んではいられない。
「えっと……ちょっと外に出ないか? ほら、ちょっと暑いだろ、ここ?」
「うにゅ? 私は別に平気だけど?」
くっ、思惑通りにいかないのに、あやめが可愛すぎて癒されてしまう……いや、それはそれで喜ぶべきなのか? けど、ここはぐっと我慢して、話を進めるのだ。
「ほら、えっと、その……渡したいものも、あるからさ」
「プレゼント!?」
「あ、ああ……」
さすがはあやめ、金持ちの癖に、やたらと俗物的というか、何かもらえるとなれば凄い勢いで食いつく。……まあ、そこを含めて可愛いんだけどさ。
「よっし、そいじゃあさっさと表へgo!!」
こうして俺は、どうにかあやめを外に連れ出せたのだった。
「うぅ~、ちょっと寒い……」
確かに、年末の夜だけあって、上着がないと風邪を引いてしまいそうだ。ぐずぐずと鼻を啜るあやめを見て、俺は自分の上着を脱いで、彼女に羽織らせる。
「着てろよ。風邪引くぞ」
「あ……うん、ありがと」
あ、今好感度が上昇したか? ……いや、ないか。そもそも、寒いのだって俺が連れ出したからだし。
「ったく、ほらよ」
風邪を引かれては困るので、さっさとブツを渡して、目的を達成することにした。
「これって……プレゼント?」
「ああ、そうだよ」
綺麗に包装してあるプレゼントを、あやめは驚いた様子で受け取った。
「ほんとに用意してたんだ……」
「いや、当然だろ」
「西崎君のことだから、私を呼び出して襲い掛かるために口からでまかせを―――」
「んなわけあるか!?」
いくらなんでも、そこまではしねぇよ……。まあ、確かにそれも手なのかもしれないが、その場合は大切なものをいくつも失ってしまう気がする。
「でも、そっか……西崎君がプレゼントか。ふふっ、ありがと」
「うっ……ま、まあ、大したもんじゃねぇけどな」
畜生……あやめの微笑が胸に突き刺さる。こりゃ、ほんとに末期かもな。
「そっか」
けれどあやめはそう言って、プレゼントをそのまま懐に仕舞う。
「中身、見ないのか?」
「うん。西崎君からのプレゼントなら、何だって嬉しいし」
くっ……なんたって、こう一々嬉しいことを言ってくるのか。思わず感動しちまったじゃないか。―――けれど、こっから先を言わなければならないと思うと、そんな気持ちはどこかへと去ってしまった。いや、もっと大きな感情に支配されたと言ってもいい。
「あ、あやめ……!」
「?」
俺は、自分を鼓舞する意味も込めて、彼女の名前を叫んだ。
「お、俺は……お、お前のことが―――」
「はい、ストップ」
「……っ!?」
突如として、あやめの人差し指が俺の唇に優しく触れて、続く言葉を紡がせない。
「その続き、今はまだ聞きたくないかな」
そう微笑むあやめは、今までにないくらいに艶やかで、儚げに見えた。一体、何が彼女をそうさせるのか、俺は魔法に掛かったように動けなくなる。
「私にはね、まだ、やらないといけないことがあるの。だから……それまで待って?」
「……優と、牧野ちゃんのことか?」
俺の問いかけに、あやめは静かに頷いた。
「だって、長年想い続けた相手だもん。せめて、自分の代わり―――ううん、自分よりもっと相応しい人と結ばれるの、見届けたいじゃない」
「そうか。……なら、仕方ないか」
つまり、それまで俺は、あやめを口説くことすら出来ないのか。……へっ、迷惑な話だぜ、全く。
「ごめんね」
「気にすんなよ。保留なだけだろ? それくらい、余裕で待てるさ」
とはいえ、待ったところでいい返事がもらえるとも限らないが。……ともかく、人の邪魔ばかりする親友には、全て終わった後で色々と清算してもらわないとな。
「さ、戻ろうぜ。あんまり長居すると本格的に風邪引いちまう」
「うん、そうだね」
俺とあやめは肩を並べるようにして、パーティー会場へと戻っていった。




