↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/64

二章 ~冬到来 外堀~

 月日が流れて、十二月初頭。通学の際にコートが手放せなくなる季節。前日の一件以来、あやめとの関係は比較的良好だ。具体的にどんな感じかというと―――

「優~、クリスマスの予定って立てた?」

 休み時間、教室に入ってくるなり、そんなことを言い出すあやめ。因みに彼女の言う予定とは、僕の家では毎年クリスマスにパーティーをするので、その準備状況についてだ。

「一応例年通りのつもりです。招待する人も大体決めましたから」

 いつもはうちの家族+あやめと西崎君、その他に幼馴染数名が基本だけど、今年は牧野さんも呼ぼうと思う。幸い、家には広い地下室があるので、参加人数にはある程度大きくなっても問題ない。

「ご馳走も期待してるよ~」

「分かってます」

 そう答えると、あやめは「えへへ~」と笑いながら(実際に口に出していた)、顔を綻ばせた。きっと、頭の中では涎を垂らしまくっているのだろう。

「じゃあねぇ~」

 そしてそのまま、半ば上の空な状態で、自分の教室へ戻っていく。足取りも覚束なくて、見ていてとても危なっかしい。なんか、熱にでも浮かされているのだろうか? といっても、ここのところずっとこんな感じだけど。

「……はぁ」

 今までにも、何度か気まずくなって、その度に仲直りしてきた。けれど今回みたいに、ここまで関係が良好になったのは初めてだ。……変なフラグが立ってないといいけど。



  ◇



「……はぁ」

「ん? どうしたんだよ優兄? 溜息なんか吐いて」

 夕方、夕食の支度をしていると、弟の冷がやって来た。どうやら、無意識のうちに溜息を吐いていたみたいだ。……前にも似たようなことがあったような。

「いえ、別に何もないですよ」

「ふーん。まあいいや」

 そう言って、冷は食卓に着いた。……一応、彼の名誉のために言っておくと、冷は他人の事情に深く関わらないのが美徳だと思っているので、何でもないと言えばそれ以上干渉してこないのだ。決して気が利かないとか、そういう意味ではない。

「そういえば、クリスマスのときって誰が来んのー?」

 そんなメタ的な思考をしていると、冷が不意にそう問いかけてきた。クリスマス、というのは、今日あやめが訊いて来たのと同じことだろう。

「今のところは、幼馴染には粗方声を掛けてますよ」

「あのでかい女は?」

 でかい女……もしかしなくても牧野さんのことだろう。何故か冷は、牧野さんのことを快く思っていない節がある。どうしてだろうか?

「牧野さんなら、一応誘うつもりです」

「ふーん……」

 そう答えると、冷は興味を失ったらしく、ダイニングのテレビをつけた。一体、何だったのだろうか?



 夕食の用意が整い、弓もやって来て、家族で食事の時間となった。兄さんは相変わらず忙しくて、今日は家で食べないそうだ。

「……なあ、弓」

「なあに?」

 食事の途中、テレビを眺めていた冷が、ぽつりと漏らすように弓へ話しかけた。

「今度のクリスマス、優兄が彼女連れてくるって」

「えぇっ!?」

 突然の話に、悲鳴を上げるように驚く弓。……って、ちょっと待って。

「ちょっ、何でそんな話になってるんですか!?」

 さっきクリスマスパーティーに来る人について話したけれど、そんなことを言った覚えはない。一体、何がどうなって……。

「だって、あのでか女来るんだろ?」

「牧野さんは呼ぶつもりですけど……」

 まさかとは思うけど―――

「その人って、お花見のときに来てた、優兄の彼女だよね!?」

 半ば興奮気味に問いかけてくる弓。……何故に、この子達の中ではそんな認識になっているのだろうか?

「……違います。牧野さんと私はそういう関係では―――」

「じゃあじゃあ! クリスマスの夜に、「そ・う・い・う」関係になろうと!?」

 そういえば、小五ってこんなお年頃だったっけ。色恋沙汰に興味を示しだす。しかも弓の場合、自分のことには疎いくせに、他人の色恋沙汰には敏感に反応するから手に負えない。

「そういう弓こそ、彼氏はいないんですか?」

「うん、いないよ」

 意地悪のつもりで聞いてみたけど、笑顔で即答される。……隣の冷がほっとしているのには突っ込まないで置こう。

「れ、冷はいないんですか? 彼女」

「いるわけないだろ」

 同じことを冷にも尋ねたけど、速攻で否定された。まあ、気持ちは分からなくないけど……困ったな。

「それで? 彼女連れ込んでどうするつもりだよ?」

「だ、だから、そういうんじゃないですってば……」

 それから何度も否定したけど、二人は結局信じてくれなかった。……普段は思わず涙するくらい信用してくれるのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。