第39話:異世界ブラック労働、あるいは『平和的』な公共事業
サンダー・グリッド・フィールドによって壊滅した王都騎士団。
リ・センセンの辞書に「捕虜の解放」という言葉はありません。あるのは「リソースの有効活用」だけです。
「リ・センセン、彼らを……あのような奇妙な機械に繋いで何をしているんだ?」
「イヴさん、これは『社会復帰』への第一歩——いわゆる強制労働だよ」
リスナーたちから次々と届く、残酷で効率的な「労働案」。
リ・センセンのゲーミング領地が、騎士たちの汗と涙で急速に文明化されていきます!
※弾幕密度400%! 3500文字超えの「領地経営回」をお届けします!
「——グ、ギギギ……。リ、リ・センセン……。貴様、我ら王都の誇り高き騎士を……こんな屈辱的な目に遭わせて、タダで済むと思うなよ……!」
昨日まで銀色の甲冑に身を包み、王都の威信を背負っていたはずのカイル隊長は、今や見る影もなかった。
彼が着せられているのは、リ・センセンが『正式服12.0』の廃品回収データから無理やり実体化させた、オレンジ色のド派手な**『高機動・作業用強化外骨格』**だ。プシュゥゥゥと不気味な排熱音を立てるその機械は、装着者の筋力を強制的に十倍に引き上げる代わり、装着者の魔力を「燃料」としてガリガリと削り取っていく。
「誇り? そんなもん、12.0の環境じゃ一円の価値もねえよ、隊長さん。……ほら、文句言ってねえで腰を落とせ。……お前らの運んでるその『高密度・魔導石材』は、一個で十トンあるんだからな」
リ・センセンは塔のテラスで、キンキンに冷えた(魔法結晶で自作した冷蔵庫から出した)エナジードリンクを煽りながら、眼下の“作業風景”をライブ中継していた。
【1.8mのメッシ:うわぁ、見てよ。あの隊長、泣きながらアスファルト敷いてるぞww 騎士のプライドが音を立てて崩れてるww】
【隣の王さん:センセン、ちょっと休憩時間が短すぎるんじゃねえか? 3分ってw 12.0の労働法はどうなってんだよ!】
【物理の張先生:リ・センセン、その作業用外骨格の魔力吸収効率が良すぎる。このままだと三時間後には騎士たちの魔力回路が枯渇し、廃人化する可能性があるぞ。……もう少し『出力』を絞れ】
【匿名リスナー009:張先生、マジレス乙ww センセンがそんな慈悲深いわけねえだろ!】
【課金王:ハハハ! 道路ができたら次は『カジノ』か『映画館』だな! 拠点が発展するごとにスパチャ投下してやるよ。ギフト:『全自動・土木工事重機』投下!!】
(システム:超弩級ギフト『マッド・コンストラクター』が投下されました!)
「旦那、最高のギフトだぜ! これで手作業とはおさらばだ。……おい、カイル! 重機のエンジンを回すから、お前らはその排気口の掃除でもしてろ!」
リ・センセンが指を弾くと、虚空から巨大な、ドリルとショベルが一体化したような鋼鉄の怪物が実体化した。
重機が唸りを上げ、密林の湿った地面を無慈悲に削り取っていく。一振りで大木をなぎ倒し、次の瞬間には地面を完璧な平面へと変えていくその破壊的な建設速度。この世界の住人が数百年かけて築く城壁が、この機械の前では数分で形作られていく。
「な……な、……な、何なのだ、あの鉄の怪物は……。魔力も感じないのに、なぜあれほどの力を……! これでは、我ら騎士の存在意義など……」
泥にまみれたカイルが、膝をついて絶望を口にする。
リ・センセンは、その「NPCが自分の存在価値を疑い始める瞬間」をドローンカメラで執拗にアップで捉えた。
【1.8mのメッシ:カイル隊長の心がポッキリいった音がしたwww ナイスアングル!!】
【隣の王さん:おいセンセン、イヴさんはどうした? 彼女ならこの状況に黙ってないだろ?】
「イヴさん? ……ああ、彼女なら今、自分の部屋に設置した『ゲーミング・マッサージチェア』の虜になってるぜ」
画面が切り替わり、塔の内部の豪華な一室が映し出される。
そこには、自分の七色の聖剣を横に置き、自動で揉みほぐされる心地よさに「はふぅ……」と完全に脱力し、白目を剥きかけている女騎士の姿があった。
【1.8mのメッシ:イヴさぁぁぁぁん!! 戻ってきて!! 騎士の誇りどこ行ったの!!www】
【物理の張先生:……無理もない。あのチェアの振動パターンは、神経系を直接リラックスさせる 12.0 の最新技術だ。……一度座れば、異世界の住人の精神など容易に陥落する】
【匿名リスナー444:堕落した女騎士……いいですね。センセン、もっとカメラ寄せて】
「——さて、家人们(リスナーの皆さん)。……地盤が固まったところで、アンケートだ。この広大な空き地に、王都に向けて『何か』を設置したい。どれがいい?
A:超巨大・液晶モニター(俺の配信を24時間垂れ流す用)
B:イヴさんの巨大・黄金像(実は中身が防衛用レーザー砲)
C:カイル隊長の全裸土下座像(物理的なデバフ効果あり)」
【(アンケート結果:A案 92%!)】
「——だよな! 精神攻撃こそが最大の効率だ。……システム、モニター建設開始。……騎士団の連中、お前らはモニターの反射防止フィルムを貼る作業だ。空気が入ったら昼飯抜きだからな」
リ・センセンの指示と共に、巨大な光る壁が空に向かってそびえ立ち始める。
それは密林の奥地から、王都の城壁からも視認できるほどの巨大な『配信画面』。
王都の人々が初めて目にするのは、自分たちの誇りである騎士団が泥にまみれて働き、自分たちの信じる聖剣を持った女騎士が椅子でとろけている衝撃の映像だ。
「……リ・センセン。貴様は本当に……世界を滅ぼす魔王よりもタチが悪い……。……これでは、王都の民の心が……」
モニターの土台を支えながら、カイルが力なく呟く。
だが、リ・センセンは笑った。
「魔王? 勘違いすんな。……俺は、この世界の『クエスト・ライン』を書き換えてるだけだ。……いいか、王都の王様がいくら命令したって、道は一本もできねえ。……だが、俺がスパチャをもらえば、一晩で都市が出来上がる。……どっちが『正解』か、民衆に教えてやろうじゃねえか」
その時。
北の空から、リ・センセンのドローンが「かつてないほど巨大な魔力反応」を感知した。
【物理の張先生:警告。北北東 50km 地点。高エネルギーの『神聖属性』が急速に接近中。これは……戦略級の広域殲滅魔法の予兆か、あるいは——】
【1.8mのメッシ:うおっ、なんか空が白くなってきたぞ! センセン、運営の刺客か!?】
【隣の王さん:いや、あれは……『聖教会』の光だ!! ついに本命が来たぞ!!】
リ・センセンは、モニター建設の手を止めることなく、北の空を見据えた。
そこには、何千人もの審問官を引き連れ、天を衝くような光の柱と共に進軍してくる、白金に輝く一団があった。
「……聖教会。……1.0時代からの化石どもが、ようやく重い腰を上げたか。……家人们、面白くなってきたぜ。……どうやら『運営』の代行者を気取ってる連中が、俺の拠点を『バグ』として消去しに来るらしい」
リ・センセンは、カメラに向かって中指を立て、不敵な笑みを浮かべた。
「——緊急クエスト発生だ。タイトルは『宗教改革:聖女を配信のゲストに呼んでみた』。……スパチャの準備はいいか!? こっからは有料級のカードを切ってやるぜ!」
黄金の光が密林のネオンを飲み込もうとする中、リ・センセンの『逆襲のパッチ(修正)』が、静かに始まろうとしていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
第39話、文字通りの『ブラック労働』と、次なる強敵への宣戦布告回でした!
騎士団を工事現場に放り込み、イヴさんをマッサージチェアで骨抜きにするリ・センセン。
もはや異世界の常識を完全に破壊しにかかっていますね(笑)。
しかし、ついに動き出した『聖教会』。
聖女という、この世界の「正義」の象徴が、リ・センセンの「効率」とぶつかります。
果たして、リ・センセンは聖女さえも自分の配信の「ネタ」にしてしまうのか!?
【作者からのお願い】
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4月18日の50話到達に向けて、このまま「廃人速度」で更新中!
第40話は、聖女との初対面。
リ・センセンの『物理的論破』が、ついに宗教にまで及びます!
それでは、第40話でお会いしましょう!




