【虚構魔人】
『スペルカード【神聖なる再臨】発動!ラファルガを回収し、デッキから【神聖なる使徒ザドキエル】を場へ!その効果により、デッキから【神聖なる使徒ハシュマル】を手札に加え……そのままサモンだ!!』
虚ろな目をした桃色の髪の少女天使──【ザドキエル】が歌う。常ならば、心の奥底を揺さぶるような衝動を感じるのですが……今はただ、虚しく歌が響くだけです。
その彼女の歌声に導かれ……銀髪を後頭部で一本に結び、前髪は斜めに整えられた中性的な容姿の子供の天使が現れます。
【神聖なる使徒ハシュマル】
白 コスト:4 天使
A:2 B:2
このモンスターが場にいる限り、自分は【神聖なる】モンスターをサモンする時のコストを1減らす事が出来、相手の場のモンスターは全ての色を持っているものとして扱う。
一ターンに一度、自分のターン中に発動出来る。このモンスター以外のモンスターを一体破棄し、場のカード一枚を封印する。
その手に持った銀色の指揮棒の先端をこちらに突きつけ、【ハシュマル】が鋭い目でこちらを睨みつけてきます……初対面なのですが、それにしたってこの敵意は何なのでしょうか?
『【ハシュマル】の効果発動!場のモンスター一体を破棄し、場のカード一枚を封印する!私が破棄するのは当然【ザドキエル】!そして封印するのは……【ハシュマル】自身だ!!』
【ハシュマル】が指揮棒を振るい、ソレに合わせて【ザドキエル】が虚ろな歌を響かせます……やがて、最期まで歌いきった彼女が崩れ落ちると同時に責任を感じたのか、悲痛な表情を浮かべた【ハシュマル】の色素が奪われ……さらには三度、【ラファルガ】が場に戻ってきます。
『【ザドキエル】が破棄されたので、手札から【神聖なる使徒ラファルガ】を場に出す!さらに、その効果でターンカウンターを一つ増やす!!』
これで次のターンにドローしたとしても覚醒されますね……流石に神聖なるを扱い慣れていますねあの人。
『そして!!私はスペルカード【七つの虚罪】を発動する!!』
【七つの虚罪】
赤・青・緑・黄・白・黒 コスト:7 スペル・虚無
全てのプレイヤーは自分の場のカード全てを破棄する。その後、それぞれのプレイヤーは自分が破棄したカードの数だけライフを回復する。この効果の使用後、ターン終了時まで相手プレイヤーはダメージを受けない。
DR:【神聖なる】モンスター一体×【邪聖天】モンスター一体を行う。
中空に開くのは巨大な孔、その孔へ場のカード──色素を失った【ハシュマル】以外が吸い込まれていきます。
『この効果で全てのプレイヤーは自分の場のカードを自らの手で全て破棄し、その数だけ自分のライフを回復する!!』
「盤面のリセットと回復効果……【黒き神の印】を持っていかれましたか」
■■■ ライフ:9→11
ルシフェリオン ライフ:5→13
これで【ルシフェリオン】の攻撃を封じていた【万魔殿】は消えていき、さらにはライフを大幅に回復されましたが……除去が相手に破棄させるという優秀な効果ですが、それだけにしては《《些かコストが重すぎる》》。
『ククク……【七つの虚罪】の効果はこれだけでは無い!!墓地の【七つの虚罪】の効果発動!!神聖なるモンスター一体と邪聖天モンスター一体によるDRを行う!!』
DR……!先程は興奮していて効果は良く分かりませんでしたが……処理的に墓地の特定のカードを取り除いて、条件を達成したモンスターをゲーム外から出す……というものでしょうか?
『私は【神聖なる使徒カマエイドス】と【邪聖天の憤怒サタン】を墓地から取り除き……さあ、憤怒の化身よ!貴様が怒るべき理不尽は目の前だ!!再誕しろ【虚構魔人の選定者カマエイドス】!!!!』
場に現れた【カマエイドス】と【サタン】ですが、【サタン】の様子がおかしいです……苦しそうに、体を押さえつけながら【カマエイドス】から逃げるように後ずさっています。ですが、その歩みは遅く……あっという間に【カマエイドス】に詰められたかと思うと、その胸元に腕が突き刺さります。
鮮血と共に【サタン】の体内から取り出された深紅の拳大の玉を飲み込む【カマエイドス】次の瞬間に、その姿は変貌……いいえ、本来の姿に回帰します。
漆黒の馬の姿となった【サタン】に跨り、黒のレザーアーマーに身を包んだその右手には禍々しい赤い何かが染み付いている大鎌……そして、左手には自らの首を抱えた首無しの姿の【カマエイドス】はまさにデュラハンと呼べるもの。
…………その姿に見覚えがあります。
【虚構魔人の指名者カマエイドス】
黒・白 コスト:6 使徒・虚無・レゾナンス
A:3 B:3
【神聖なる使徒カマエイドス】と【邪聖天の憤怒サタン】を使用したDRでのみ場に出せる。
このモンスターは場に存在する限り、黒・白のモンスターとして扱わず相手プレイヤーは墓地のカードをゲームから取り除けない。
一ターンに一度発動出来る。自分または相手の墓地からモンスターを一体選択し、そのモンスターのコストを8にして自分の場に出す。
このモンスターが場を離れた次のターンの初めに発動する。このモンスターをサモン条件を無視して場に出す。
『新たなる【カマエイドス】の効果発動!自分または相手の墓地からモンスターを選択し、そのモンスターのコストを8にして自分の場に出す!!私が選択するのは【ラファルガ】だ!!!』
「…………流石に、使い回しが激しすぎませんか?」
思わずそう愚痴る私に対して、【ルシフェリオン】は口元を大きく歪めながら笑ってきます。
『ははは!!何を言おうとも私は好きなように使い倒すぞ!!【ラファルガ】の効果でターンカウンターを一つ増やす!そして、これでターンカウンターは8となる……天の力を呑み込むがいい【ラファルガ】よ!!』
【カマエイドス】が地面を切り裂くと、そこから這い上がってくる【ラファルガ】は……流石に四回目ともなれば、疲労困憊のようで動きに精彩を欠いています。それでも、長年の修練の賜物でしょうか?祈りの体勢になる動きは滑らかで……緑の極光が降り注ぐ中で、その姿勢だけは美しいと思えました。
光を打ち砕き、翼をはためかせる【ラファルガ】……いえ、【ラファエル】の手には三又の槍が握られています。
『【ラファエル】の効果発動!!私のターンカウンターの数だけ、ライフを回復する!!』
ルシフェリオン ライフ:13→21
初期ライフの倍を超えた値と化すルシフェリオンのライフ……しかし、問題はありません。
「コスト:8扱いとなった【ラファルガ】とコスト:8の【ラファエル】が場に出たのでCカウンターを合計で二つ【強壮なる使者】に乗せます」
『構わん、【七つの虚罪】の効果でこのターン相手プレイヤーはダメージを受けない……これでターン終了だ』
「私のターン……」
さて、ここからが正念場です。
次のターンには恐らくは【ハシュマル】は封印解除され、新たな【カマエイドス】の効果で墓地から神聖なるモンスターが引っ張り出されるでしょう。
そうすれば一体、こちらのモンスターは封印され……覚醒されてしまえばそこからさらにもう一体封印されてしまいます。
覚醒された場合は場に十二点以上の打点が揃いますから……そのまま殴り倒されます。
私のライフを回復するのは現実的ではありません……ライフの回復手段が少ないのも有りますが、ジリ貧が見えています。
となれば……運否天賦は好きではありません。これが青のあの人ならば運命を筋書き通りにさせる事が出来たのに。
……ないものねだりはここまでにしましょう。
勝つ為に、博打を打たせていただきます。
「約定アビリティによりデッキから【天火明命】を手札に加えます!!そしてカウンターブースト!!」
■■■ 第四ターン
ライフ:11
手札:5 ターンカウンター:8
約定 【強壮なる使者】 CC:2
『毛色が違うカードだが……いや、これは瑞神か!!』
「今は亡き占赤神の眷族……未来を照らして下さい!【天火明命】をサモンします!」
場に出てくるのは一枚の銅鏡……その鏡面が輝いたかと思うと、突如として現れた真っ白な髪の所々が赤く染まった妙齢の女性が纏っている赤い巫女服の裾を翻しながら、銅鏡を抱えました。
【天火明命】
赤・白 コスト:8 日輪・瑞神
A:4 B:4
このモンスターが場に出た時に発動する。コイントスを行い、以下の効果を適応する。
表:相手の場のモンスターを二体まで破棄し、自分はカードを二枚ドローする。
裏:墓地からカードを二枚まで手札に加え、このモンスターは二回攻撃が出来るようになる。
一ターンに一度、発動出来る。デッキから【三種の神器:八咫鏡】【三種の神器:八尺瓊勾玉】【三種の神器:草薙剣】の内、一枚を手札に加える。
自分の墓地に三種の神器カードが三種類ある時に発動出来る。場にいるこのモンスターをゲームから取り除き、ゲーム外から【天照大御神】を場に出す。
「コスト:8以上のモンスターが場に出たので【強壮なる使者】にCカウンターを一つ乗せます。【天火明命】の効果発動!コイントスを行います!」
【天火明命】がその手に持っている銅鏡を勢いよく空に向かって放り投げます。
宙に浮かび、クルクルと回転し続ける鏡はやがてその動きを止め……鏡面に映し出された【カマエイドス】と【ラファエル】がそこから放たれた光線に焼かれ、焼失していきます。
「結果は表です。相手の場のモンスターを二体まで破棄し、さらにカードを二枚引きます!」
【黒き神の印】を失った事でカードを引けないデメリットは消えています。
デッキトップに手をかけ……勢いよく引き抜く。
加わったのは二体の天使、即ち【ザドキエル】と【ベリアル】……このタイミングで来られるのも少し困りますね。
「……行きますよ、【天火明命】で攻撃。攻撃時にデッキから【三種の神器:八尺瓊勾玉】を手札に加えます」
【天火明命】が宙に浮かぶ銅鏡に向かって跳び、オーバーヘッドキックで【ルシフェリオン】に向けて蹴り飛ばします。
ルシフェリオン ライフ:21→17
『痛くも痒くもないな!』
「でしょうね……これでターン終了です」
軽く衣装の埃を払い、何も無かったように振る舞う【ルシフェリオン】
現在のライフ的にも蚊に刺された程度のダメージしか無いのでしょう……【万魔殿】の効果的にも墓地には【ルシファー】が控えています。
ライフの多さと【ルシファー】の存在……二重のセーフティが【ルシフェリオン】の余裕の現れでしょう。
『さあ、私のターン……【ハシュマル】の封印を解除し、さらに【カマエイドス】の効果発動!場を離れた次のターンの初めにこのモンスターを復活!!さらにドロー!!』
ルシフェリオン 第四ターン
ライフ:17
手札:2 ターンカウンター:8
『クックック……ハァーッハッハッハ!!!』
よほど良いカードを引いたのか人目もはばからずに大笑いする【ルシフェリオン】ですが……【カマエイドス】の復活は誤算ですね。
「良いカードが引けたようですね」
『引けたとも!やはり勝利の女神は彼女だな!行くぞ!私自身を誓約サモン!!』
そう言って場に降り立つ【ルシフェリオン】は今しがた引いたカードを天に掲げました。
『さあ、輝け!我が象徴、我が勝利の星!!ユニオンカード【明けの明星】を私自身にユナイト!!』
【明けの明星】
白 コスト:4 ユニオン・神器
このユニオンは【ルシフェリオン】モンスターまたは効果テキストに【ルシフェリオン】モンスターの名前が書かれたモンスターにのみユナイト出来る。
このユニオンがユナイトされた時に発動する。相手の手札を全て破棄する。
このユニオンをユナイトしたモンスターは以下の効果を得る。
・アタックフェイズ開始時に発動する。このモンスターは場の封印されたモンスターの数だけ攻撃が行える。
【ルシフェリオン】の背に投影されるのは黄金色の惑星。ソレの表面に一瞬だけ白いヒビのようなモノが走ったかと思うと、六つの断片に展開していきます。
翼というには鋭利すぎる形状は、爪……というよりも、蜘蛛の足のようにも見えます。
『【明けの明星】のユナイト効果!お前の手札を全て破棄させてもらう!!』
「っ!カウンタースペル【天使賛歌】そして【三種の神器:八尺瓊勾玉】!!』
【三種の神器:八尺瓊勾玉】
赤・白 コスト:3 スペル・神器
相手の場のモンスター一体を選択する。そのモンスターの効果は無効になり、攻撃を行えなくなる。
「【天使賛歌】の効果で手札の【神聖なる使徒ザドキエル】を破棄してライフを二点回復!さらに【|三種の神器:八尺瓊勾玉】の効果で【虚構魔人の指名者カマエイドス】を選択、その子の効果は無効になって攻撃を行えなくなります!!」
■■■ ライフ:11→13
『チッ……だがまあいい、さあ呑み込めよ我が明星よ!!』
手札が風に巻き上げられ、亀裂に消えていきます……ここでハンデスは辛いですね。
『【ハシュマル】の効果発動!【カマエイドス】を破棄し、そこの目障りな鏡女を封印だ!!』
再び【ハシュマル】が指揮棒を振るいます。その指揮に従い【カマエイドス】が黒馬を巧みに操りながら【天火明命】を追い詰めていきます。
やがて、振るわれた大鎌に【天火明命】が携えていた銅鏡が真っ二つに割られ……彼女の色素が失われます。
しかし、末端とはいえ神の一柱を封印した代償は重く……その全身を真っ赤な炎が包み込み【カマエイドス】は燃え尽きました。
……効果を無効にしたとしても墓地に落ちてしまえばソレはリセットされます。また次のターンに彼は帰ってくる。不死身にも程がありますよ。
『さあ、戦闘だ!【明けの明星】をユナイトした私はアタックフェイズの初めに封印されているモンスターの数だけ攻撃回数を増やす!場の封印されたモンスターは預言者モドキと鏡女の二体!!さあ、私に続け【ハシュマル】!!!』
【ルシフェリオン】が投げつけてくる三本の光の槍を影から生やした触手で弾いた隙を縫うように【ハシュマル】が私の懐へと飛び込んできます。
そのまま、少しでも顔が近づけば口付けしてしまいそうな至近距離……その距離で無ければ掻き消えていたであろう声が耳に滑り込みます。
『私から【ザドキエル】を奪ったお前を許さない』
天使からの怨嗟の声……その裏に秘めた重い感情を推し量る前に、私の心臓を銀の指揮棒が貫きます。
■■■ ライフ:13→9→6→3→1
鋭い痛み…そして、指揮棒が抜けた時の体の中身が抜かれるような感覚に膝を折りそうになりますが、すんでの所で耐えます。
二枚のカウンタースペルが間に合わなければ私はライフを削り取られていました……
『ギリギリ耐えたようだが……手札0、さらに場も壊滅状態でどうする?』
「どうしましょうかね……流石に、勝率は0に近しいのは分かりますよ」
『だがお前自身は勝率は0だとは思っていない……お前自身を出せばなんとでもひっくり返せると思っているな?』
「…………」
図星です。
『クックック……【カマエイドス】が場にいる限り、お前は墓地のカードを取り除けない。例え奇跡が起きてお前自身が場に出たとしても、ただの木偶の坊でしか無いということだ!!ハァーッハッハッハ!!!』
……………………………
「……………………………」
『完全に手詰まり、思考も止まったか……だがサレンダーは認めない。私を裏切った貴様を私自らが葬ってやらねば気が済まんからなぁ!!!!』
……手詰まり、詰みでしょうか。
新しく組み直したデッキの内容は覚えています。どのカードを使ったとしても……この状況を打破出来ません。
ならば、ならば?
私は負けて……死ぬでしょう。
当初の予定通りに。
優義徒はお父さんに返す事は出来ましたし、他の大司教達の悪事の証拠を執務室のデスクにしまってあります……何より、外でも派手に暴れましたから私は滅ぼされるべき存在だと他の人達も考えるでしょう。
滅びるべき邪神が滅び、悪の芽は全て摘まれる……全部を綺麗に終わらせる準備は終わっています……だから、私は死んでも問題はありません。
そもそも、抵抗せずに【ルシフェリオン】に殺られてしまえばもっと速やかに事は終わっていた。
なのに……なんで、まだ私は生きているのでしょう。
『さあ、お前の最期のターンだ!カードを引け!!』
「わた、しは……」
鼻の奥がツンと痛み、顔の……特に目の辺りが酷く熱く感じます。
このまま何もせずにターンを渡してしまえばいいのに……何かがそれをさせまいと邪魔をする。
理性は死を受け入れようとしています、でも体が動いてくれません。
思考と感情はぐちゃぐちゃで、もうどうしたらいいか分からなくて……そこに
「────白掟様!!!!」
声が……聞こえました。
カード紹介
【虚構魔人の選定者カマエイドス】
誘黒神に負債を抱えていた一族の末裔、自らに非が無いのに永遠に誘黒神に仕え続けなければならない現状に怒り狂った憤怒の化身。
相手プレイヤーが墓地のカードを取り除こうとするのを防ぐ効果と、自分または相手の場のモンスターをコスト:8にして場に出す効果を持つ。
誘黒神メタであり、誘黒神サポートでもある複雑な立場のカード




