【神聖なる邪聖天魔】
「私の先行からです。ドローフェイズの前に約定アビリティにより、デッキから【黒き神の印】を手札に加えます。そして、ドローをスキップしてカウンターブースト」
ユギト 第一ターン
ライフ:20
手札:6 ターンカウンター:2
約定 【強壮なる使者】 CC:0
聞いたこともないカードを手札に加えたユギトは流れるようにそのカードを使ってくる……名前からして、黒のカードだとは思う。
今までアイツが使ってきたのは人形天使デッキと神聖なるデッキの二つだ。
どっちのデッキもメインは白だったけど……あの約定カードとか言うのが"ギアスモンスター"の代わりに初期に使えるカードの色を決めているのなら、黒メインのデッキになったって事だ。
どう動いてくるのか……慎重に見極めないとな。
「【強壮なる使者】の効果でコストを2減らし、アーティファクト【黒き神の印】を発動します」
ユギトの影の中から変な形の箱が出てきて、さらにその蓋が開くと黒く光る宝石が入っている。
ジッと見ていると背筋がゾワゾワしてなんだか落ち着かなくなる。
「精神に変調をもたらしますから、見つめ続けるのはオススメしませんよ」
くすくすと仮面越しに口元に手を当てて笑うユギトはいつもよりも妙に浮ついている感じがする。
……前に京都で戦った時みたいな感じに似てるけどもなんか違う。
「このアーティファクトがある限り、私は墓地の使徒モンスターだけ手札の使徒モンスターのコストが減りますが、代償として私はドローが行えません……その事を踏まえてプレイングを考えて下さい」
「わざわざデメリットを教えるなんて……何を考えているの?」
横で水兎の独り言が聞こえる……アイツのプレイングは結構丁寧で、一度も相手に使ったことの無いカードを使う時はその効果を毎回わざわざ教えている。
……"ミラージュ"でよく"ギアスファイト"をしてた時もそんな感じだった。効果が分かってるから、それを乗り越えて俺たちは何回もユギトに勝っていた。
その時と同じ感じがするのは気のせいなのか?
「さて、続けますよ。コストを2減らして【堕ちたる導師】をコスト:1でサモンします。【堕ちたる導師】は場にいる限り、手札の使徒モンスターのコストを1下げます。【強壮なる使者】と【堕ちたる導師】の効果でコストを3減らし、コスト:1で【邪聖天ベリアル】をサモン」
汚いローブを着た金髪の女の子が祈りを捧げると、でっかい斧と槍が合体したみたいな武器を持った茶髪の少年天使が空から降りてくる……でも、その羽根の色は黒だ。
「一ターン目なのになんか強そうなモンスター並んでるっぺ……」
「このデッキはサモン時のコストを軽減させて大型のモンスターを並べるのがメインギミックですからね。見た目も派手で良いでしょう?」
「良いのかよ、デッキの中身バラして……」
「良いのですよ、分かっていても防げる訳では有りませんし」
ユギトが被っている真っ白な仮面は目の辺りに切れ込みが入っていて、その隙間からチラリと見えたアイツの真っ赤な目は細められていて……多分、笑っているんだと思う。
「【ベリアル】が場に出た時、デッキまたは墓地から使徒モンスターを手札に加えます。私はデッキから【神聖なる使徒ミカエリス】を手札に加え、ターン終了です」
一ターン目にしては長いユギトのターンが終わる。そして始まる俺たちのターンの先陣を切るのは……米子だ。
「わたすから行くっぺ!ドローだっぺ!」
翠子 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:1
「スペルカード【緑の繁栄】を発動だっぺ!ターンカウンターを二個増やして……さらにスペルカード【翡翠氾濫】発動だっぺ!」
【翡翠氾濫】
緑 コスト:3 スペル
次に使用するカードのコストを5減らす事が出来る。
このカードの使用後、ターンが終わるまで自分はカードを一枚しか使うことが出来ない。
緑の得意な戦術であるターンカウンターを増やして、大型のモンスターを出す動きに米子はユギトみたいなコストの軽減も取り入れた。そのアドバイスをした照海のねーちゃんはこう言っていたっけ。
『ターンカウンターを増やす事が出来なくなった時にも、何とか出来る手段が有るとええんちゃう?』
それを聞いてから、米子のデッキは京都に行く前とまるっきり変わった。割ととっちらかってた方向性が一箇所に向いた感じだ。
「これでコスト:8のモンスターを出せるようになったっぺ!誓約サモン!!」
米子から放たれるのは緑色のオーラ。
初手から米子の新しいエースの登場だ。
「狐七化け、狸は八化け!妖の王は九化け!!【幻想金毛九尾タマモノマエ】!!!」
軽やかに躍り出る九本のふさふさのしっぽを持った巨大なキツネ──【タマモノマエ】は米子に甘えるようにすりっと身を寄せている。
「くすぐったいっぺ〜」
『あっという間に妾を出した手腕、流石じゃのう。ほれ、褒美に妾の尾を弄っても良いぞ?ほれ、ほれ』
完全に"ギアスファイト"そっちのけでいちゃいちゃし始める二人……なんか調子狂うんだよなぁ。
「……コスト:8以上のモンスターが場に出たので【強壮なる使者】にCカウンターを一つ乗せます。それと米原嬢、プレイが終わったのならば次の人にターンを渡して下さい」
「あっ、ごめんだっペ!ターン終了だっぺな!」
苛立ったみたいなユギトの言葉に米子が急いでターンを回してくる……なんか焦ってるのか?
「そんなに急かさなくたって良いじゃない……アタシのターン、ドロー!この時に場に【タマモノマエ】がいるから、ターンカウンターを通常の倍の数置くわ!」
水兎 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:2
「【氷雪の霊騎士】をサモンするわ!」
【氷雪の霊騎士】
青 コスト:2 妖精・雪
A:1 B:1
このモンスターが場に出た時または攻撃時に発動する。自分は自身のデッキの一番上のカードを確認し、そのカードをデッキの一番上か一番下に置く事が出来る。
水兎が出したのは氷の結晶みたいなマークの入った盾だけを持った、白い動く鎧。
その持っている盾を掲げると水兎のデッキの一番上が輝き始める。
「【氷雪の霊騎士】の効果発動!アタシのデッキの一番上のカードを確認して、そのままにするかデッキの一番下に送るわ!…………このままにして、ターン終了よ」
「よっし!俺のターンだ!ドロー!!」
百火 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:2
やっと回ってきた俺のターン、このターンが終わるまではバトルを行えない……だから今は次のターンが来るまでに場を整えなくちゃいけない。
「俺は【炎熱の猟犬】をサモン!」
【炎熱の猟犬】
赤 コスト:2 野獣・炎
A:2 B:1
各プレイヤーのターン終了時に発動する。
相手プレイヤーに一ダメージを与える。
赤い鎧を纏った灰色の毛の大きな狼が出てくると同時に遠吠えをする。
置きバーンのコイツはユギトのターゲットを散らす為の囮だ。
一番狙われると困るのは米子の"ギアスモンスター"の【タマモノマエ】
アイツの効果でターンカウンターを増やして先に高コストモンスターを並べたい。向こうだって【タマモノマエ】の厄介さは分かっている。
だから俺は【猟犬】を出したんだ。本来ならばチマチマとしたダメージにしかならない効果だけど、各プレイヤーとターン終了時がキモだ。
ユギトと俺たち三人で四ターン稼げる。つまりは四点のダメージをほっとくだけで与えられる。
ライフが削れるのを嫌がって【猟犬】を倒すなら【タマモノマエ】が守られるし、【タマモノマエ】を先に倒すなら【猟犬】が確実にライフを削る。
どっちでも俺たちにはプラスになる。
「ターン終了だぜ、この時に【猟犬】の効果でユギトに一ダメージ!」
「なるほど……ダメージは受けましょう。ですがターン終了時に【強壮なる使者】の効果でコストを2減らして、こちらもスペルカード【傲慢なるは神の代理人】を発動します」
【傲慢なるは神の代理人】
白・黒 コスト:4 スペル・使徒
このカードは【神聖なる】カードとしても扱う。
相手の場に存在するカードの色の種類だけデッキからカードを選び、破棄する。
その後、自分の場のカードの色の種類まで墓地からカードを手札に加える。
空から赤と青と緑の羽が合わせて三枚、ユギトの手のひらに落ちてくる。
それらを握り潰し、ユギトがいつものようにカードの説明を始めた。
「このスペルの効果で先ずはヒャッカくん達の場のカードの色の種類、つまりは赤、青、緑の三種類分だけ私はデッキからカードを墓地へと破棄します。私は【邪聖天の怠惰ベルフェゴール】と【邪聖天の憤怒サタン】、【偽りの神聖なる邪聖天魔ルシファー】を破棄します」
宣言したカード達は全て知らないカードだ……でも、【邪聖天】っていう名前が共通しているからそのテーマが今のユギトの主力なのだろうか?
「その後に私の場のモンスターの色の種類……白と黒で二種類となるので、二枚のカードを墓地から私の手札に加えます。【ベルフェゴール】と【サタン】を手札へ」
地面が割れて飛び出す二枚のカードを、ユギトが手札に加えると同時に【猟犬】が口から吐き出した火の玉がぶつかる。
ユギト ライフ:20→19
「良いカードですね……全員が全員、次に繋げる為にカードを使用している。素晴らしい事です」
「当然よ!アタシ達は三人で戦っているんだから、協力するのは当たり前よ!」
「協力ですか……でも、それは一人では勝てないという弱者の理論ですよ」
ゾワリと寒気が襲う。
何かが来る……その予感だけで背筋が寒くなってきた。
「私のターン開始時に約定アビリティでデッキから【神聖なる使徒ウリゾラス】を手札に加えます。そしてドローをスキップしてカウンターブースト」
ユギト 第二ターン
ライフ:19
手札:6 ターンカウンター:4
約定 【強壮なる使者】 CC:1
ユギトの場には二体のモンスターがいるし上で手札は潤沢。その内の四枚は何なのか分かってはいるけども、それでも向こうに手札があるのは厄介だ。
「墓地の【偽りの神聖なる邪聖天魔ルシファー】の効果を発動させます」
ユギトが指を鳴らすと同時に地面がまた割れて、そこから黒い塊が飛び出す。
それは焼け焦げた黒い羽で自身を覆い隠していた天使だった。
紫色の髪に空色の目、真っ白な肌と整ったその顔は天使って言うのに相応しい。だけど、こっちを見下しているような笑みを浮かべているのがそのキレイな印象を潰している。
「私のライフを半分捧げる事で、【ルシファー】は墓地から私の場へ復活します」
ユギト ライフ:19→9
「コスト:8以上のモンスターが場に出たのでCカウンターを1増やします。さらに【ルシファー】の効果を発動します。ライフを半分捧げ、手札または墓地からコスト:8のモンスターを場へ出します。手札から【邪聖天の憤怒サタン】を場へ」
ユギト ライフ:9→4
【ルシファー】が右手を手首ごと捻るように回す。すると、さっきまでいた【ベリアル】が姿を消した代わりに、角の生えた馬の頭の被り物をした女の人がその場所に居座っていた。
「【サタン】は場に出る為には黒のモンスターを破棄しなければいけません。その効果で【ベリアル】を破棄しました。さらに破棄された【ベリアル】の効果でデッキから【天魔襲来】を手札に加えます」
ポンポンと出てくる大型モンスター。【ルシファー】が何かを【タマモノマエ】に言ってるけどもよく聞こえない……【タマモノマエ】が怒ってしっぽを地面に何度も叩きつけている事から、仲は良くなさそうだ。
「続けますよ。コスト:8以上のモンスターが場に出たのでCカウンターを1増やします。【サタン】が場に出た時、または攻撃時にデッキからカードを一枚破棄し、墓地からカードを一枚手札に加えます。私はデッキから【邪聖天の強欲マモン】を破棄し、墓地から【傲慢なるは神の代理人】を回収します」
「またそのカードかよ……!」
「基本的にピン刺しですからね、使い回せるなら何度でも回収して使いますよ。スペルカード【傲慢なるは神の代理人】を発動です。デッキから【邪聖天の暴食ベルゼブブ】と【邪聖天の色欲アスモデウス】、【邪聖天の嫉妬レヴィアタン】を破棄して、墓地から【邪聖天ベリアル】を回収します」
一気に肥えていくユギトの墓地……これでまだ向こうの二ターン目なのが信じられないぜ。
「【黒き神の印】の効果でコストを4減らして【邪聖天ベリアル】をサモンです。その効果でデッキから【神聖なる使徒ガブリリス】を手札に加えます……バトルフェイズです」
再度現れた【ベリアル】が斧槍を、【ルシファー】が拳を構え、【堕ちたる導師】が手を合わせて祈りの姿勢に入った。
「【ベリアル】と【堕ちたる導師】で【幻想金毛九尾タマモノマエ】を、【ルシファー】で【氷雪の霊騎士】を攻撃します」
一斉に襲い掛かるユギトのモンスター達。【タマモノマエ】はBが半分以上削られて虫の息だし、【氷雪の霊騎士】を破壊されて水兎の場はがら空き……なんで俺の【猟犬】を狙わなかったんだ?
「ターン終了時に【猟犬】で一ダメージを受けます……ふふふ、ターン終了です」
ユギト ライフ:4→3
20もあったユギトのライフは一気に危険域になっているし……何を考えているんだ?
カード紹介
【偽りの神聖なる邪聖天魔ルシファー】
【ルシフェリオン】の■■の化身としての姿。
ライフを危険域に追い込む事により、自身に耐性を付与する効果、敗北回避効果、ライフを半減させることでコスト:8のモンスターを呼び出すという三つの効果が噛み合っている。
弱点はコントロール奪取




