「自らの手で選び取ってやりますよ」
──昔の私は今のように落ち着き払った人間ではなかった。
『落とし穴だと……炎柳太陽!!貴様、サモナーならば正々堂々"ギアスファイト"で決着をつけろ!!恥を知れ!!!』
「ハッ、やなこった。何でオレがてめぇらに馬鹿正直に付き合わなきゃ行けねぇーんだよ。オレが逃げるのを指咥えてそこで見てな青鯖ちゃんw」
「誰が青鯖だ!!!消し炭も残らないくらいに燃やしてやる!!!!!」
「ちょ、裁刃徒!?ここにはボク達もいるのに火を付けるのはやめてください!!」
「あら〜灰獄くんヒートアップしちゃって可愛いわねぇ」
「アレを可愛いと言えるのかお前は……」
「器繰も白掟も見てないで灰獄を止めるの手伝えよ!?神聖制約教団の大司教見習いと教団聖剣士が纏めて蒸し焼きになるぞ!!?」
………………あの忌々しい男が引き起こす騒動に神経を逆撫でされては辺りを燃やし、それを皆に止められるという流れが良くあった。
癇癪持ちの放火癖持ちというのが私の本質だ。
今でも……物が燃えるのは好きだ。動画や写真よりも……すぐ近くで、欲を言うなら自らの手で燃やした物を見るのが好きだった。
どんなキレイな物も汚い物も全て等しく灰になれば真っ白な物となる。白、つまりは罪が浄化された姿だ。
灰となってしまえば……地獄に落ちるような悪人もまた許されると思っていた。
灰獄裁刃徒
それが白掟の家の婿養子となる前の私の名だ。
だがその悪癖も、教皇猊下より賜ったペンダントに込められた白の力により抑えられていた。
白は鎮静、故に私の癇癪の引き金となる怒りの感情を無理やりにでも諌めることが出来た。
今、そのペンダントは奴の手にある。
実に腹立たしい。
それでも、ここで爆発してはダメだとずっと我慢していた……だが、もうじきに抑えきれなくなる。
ーーーーー
さて……【カマエイドス】の犠牲は必要経費でした。
お陰で、他の神聖なるモンスターをサモンしない限りはお父さんのコンボは発動しません。
向こうの場は実質更地、今の間にライフを詰めましょうか……押し切る事が出来ればそれが一番ですが、ギリギリで残られた場合には返しの【メタトロン】が恐ろしくなります。
「約定アビリティによりデッキから【神聖なる再臨】を手札に加えます。そして、カウンターブースト」
ユギト 第二ターン
ライフ:9
手札:4 ターンカウンター:4
約定 【強壮なる使者】 CC:0
「【黒き神の印】の効果でコストを3減らして【神聖なる使徒ザドキエル】をサモン。その効果で墓地から【邪聖天ベリアル】を手札に加えます。さらに【強壮なる使者】と【黒き神の印】の効果でコストを4減らして【邪聖天ベリアル】をサモン、効果で【邪聖天の憤怒サタン】を手札に加えます」
桃色の髪の少女天使──【ザドキエル】と並び立つくすんだ茶髪の少年堕天使【ベリアル】。
その真ん中に肩身が狭そうに真っ黒なカラスがちょこんといます。我慢して下さい、白と黒を繋ぐ大事な一枚なのですから貴方は。
「アタックフェイズ。【ベリアル】でサバトさんへ攻撃します」
身の丈を超えるハルバードを軽々と振り回して【ベリアル】がお父さんを吹き飛ばします。
刃の無い部分で殴ったのは優しさかも知れませんがものすごく痛そうな音が響きます……二、三回バウンドするも、これ以上吹き飛ばされないように地面に手を突き立てて耐えている姿に目を見張ります。
裁刃徒 ライフ:11→8
「驚きましたね……【マスティマ】による操作の賜物ですか?それにしたって、実体化しているモンスターの攻撃に呻き声一つ上げないのは流石です……痛覚あります??」
「あるに決まっている、痛くて痛くて腹が立つ」
「それはそれは……でも、私だって炎怖くて苦手なのに耐えているので痛いのくらいは我慢して下さいよ」
苛立たしげに地面を荒々しく踏み鳴らしながら元の位置に戻っていくお父さん……らしくはないです。
……そもそも、周りを巻き込んでのジャングルへの爆撃もらしくない。お父さんは出来るだけ被害を身内だけで抑えられるように動いてきた人です。
私の視線に気分を害したようで、眉尻がひくついていますね。
「私のターン、【アルセーヌ】の封印を解除しドロー」
白掟 裁刃徒第三ターン
ライフ:8
手札:4 ターンカウンター:4
「【焦土天機の制空機】をサモン」
【焦土天機の護衛機】
赤・白 コスト:4 天使
A:2 B:4
このモンスターが場に存在する限り、相手は可能な限りこのモンスターを攻撃しなければならない。
このモンスターが相手の効果の対象として選ばれた時に発動出来る。全ての相手プレイヤーに一ダメージを与える
銀色の空飛ぶ円盤を二機随伴機として従えた戦闘機が人型に変形したかと思うと、その円盤達をそれぞれ両腕に装着しています。
攻撃を誘導しながら、効果の対象となる事をトリガーにしたバーンも備えたモンスター……バトルで破棄するにも微妙にサイズが大きい。
置いておくと面倒です……が、今は削るぐらいしか出来ませんね。
「スペルカード【神聖なる再臨】を発動します。【ザドキエル】を手札に戻してデッキから【神聖なる使徒ミカエリス】を場へ、さらに【ザドキエル】の効果で手札から【神聖なる使徒ガブリリス】を場に出します」
横に並び立つ【ベリアル】に少しコンビニに行くと伝えるような気軽さで彼の肩を軽く叩いてから私の手札に戻る【ザドキエル】
代わりに現れるのは深紅の髪の少女──【ミカエリス】と青い髪の女性【ガブリリス】
二人とも【ベリアル】の姿を見つけると少し嫌そうに顔を顰めていますね……仲良くして下さい、今は同じデッキの仲間なのですから。
「先ずは【ミカエリス】の効果です。相手の場に赤のモンスターがいるので二点のダメージを相手の場のモンスター全てと相手プレイヤーに与えます」
裁刃徒 ライフ:8→6
炎の波がお父さんと【護衛機】そして【アルセーヌ】を襲い、さらにその波を突き破るように水流がお父さんの手札をさらけ出させます。
「続けて【ガブリリス】の効果です。場に出た時に一枚ドロー……の効果は【黒き神の印】により不発。青のモンスターがそちらにいるので相手の手札からカードを一枚選んでデッキの一番下におくります。さあ、見せてください」
見えた手札は【緊急再誕】、【神聖なる焦土天機メタトロン】、【紅煉散華】そして【神聖なる不滅者エドモン】
【神聖なる不滅者エドモン】
白・黒 コスト:6 使徒・英雄
A:1 B:4
このモンスターは互いのターン開始時に、手札を一枚破棄する事で墓地から場に出す事が出来る。
墓地からカードが移動した時に発動出来る。相手の手札一枚をランダムに選んで破棄し、場のモンスターから一体選択し、その効果をそのターンのアタックフェイズが終わるまで無効にする事が出来る。
【不滅】というテーマを使う人に心当たりはありませんが……今見えている【紅煉散華】をそのまま叩きつけられていたらゲームセットでした。
少し、考えましょう。
【メタトロン】を戻した場合、【紅煉散華】で【エドモン】が破棄されて次のターンの初めに効果で墓地から出されてそこから【アルセーヌ】と【マスティマ】を絡めた無限ドロー+無限ハンデスを決められてしまいます。次のターンに私は何も出来なくなりますのでこれは無し。
【エドモン】を戻したらそのまま【紅煉散華】が飛んできて、妨害札を握れていない私はそのまま焼け死にますので却下。
【緊急再誕】を戻すのは……結局、【紅煉散華】が飛んできますので負けちゃいます。
【紅煉散華】を戻した場合……【緊急再誕】で【メタトロン】が飛んできます。その後に【マスティマ】によるブリンクで完全体となった【メタトロン】が封印と破棄の嵐を叩き込んでくる筈ですが…………無限ドローは許してしまいますが【紅煉散華】が一枚積みならば……デッキが0になった瞬間にデッキの無いプレイヤーが敗北するので多分大丈夫な筈……その筈です。
サーチからのデッキシャッフルが来たらお手上げですが……まだ、勝ちの目はあります。
「【紅煉散華】をデッキに戻して下さい」
「また不発か……まあいいスペルカード【緊急再誕】だ」
お父さんの周りに十本もの炎の柱が生まれ、それが空中で結合して燃え盛る翼を持った機械天使達の統括者が降臨します。
「第二使徒【神聖なる焦土天機メタトロン】を場に出す。そして【マスティマ】の効果発動。操糸カウンターを【メタトロン】に乗せる。カウンターが乗ったので【アルセーヌ】の効果だ。カードを一枚引いて、お前の墓地から……【アスモデウス】を取り除く」
「……コスト:8以上のモンスターが場に出たのでCカウンターを一つ【強壮なる使者】に乗せます」
【メタトロン】に絡みつくのは天上の操り人の手繰る糸。
その糸はこの地のあらゆる所に張り巡らされていて、ソレを足場に【アルセーヌ】が跳び周りながら私の近くに浮かんでいたらしい【アスモデウス】らしき魂をその手に持ったステッキで器用に手元に引き寄せています。
動きは予想通りでしたが……【メタトロン】がてっきり、トップと思っていたのに第二使徒ですか。
となればトップはあの変態野郎ですかね……?お父さんからは力を感じ取れないので所持はしてないと思いますが……警戒が解けません。
「【マスティマ】の効果発動。【メタトロン】から操糸カウンターを取り除いて【メタトロン】を手札に戻し、再度場に出す」
「Cカウンターをもう一つ乗せますよ」
「好きにしろ。【メタトロン】の効果発動。【邪聖天ベリアル】を封印し、それ以外のお前のモンスター全てを破棄する」
純白の炎が【ベリアル】を飲み込みます。炎の檻の中でを瞑る彼の周りで【ミカエリス】、【ガブリリス】ついでに【堕落の黒鴉】が余波により焼き尽くされます。
ユギト ライフ:9→6
「バトル、【アルセーヌ】と【護衛機】でダイレクトアタック」
ユギト ライフ:6→1
ステッキによる見え見えの殴打と振るわれる銀色の大盾による攻撃を両腕で受け止めますが、見た目以上にライフが削られる方が辛いですね。
ギリギリのライフ……ですが、まだ負けたわけじゃない。
楽しくなってきて口角が上がります……それと同時にお父さんの眉間の皺がまた深くなりました。
「この状況でなぜ笑える。お前のライフは風前の灯火だぞ」
「……ここから、どう逆転しようかと考えていたらわくわくしてきたんですよ」
「ふざけるな……!逆転なぞ出来るものか……万全の状態の【メタトロン】がこちらにはいる。お前がモンスターを複数体並べればその時点で終わる……そして、教えてやろう。私が先ほど引いたカードは効果の対象を移し替えるカードだ。【メタトロン】をスペルカードなどで退けようとしても【護衛機】に対象を変えて終わらせられる」
「さらに、無視してモンスター単体でサバトさんを攻撃しようとしても【護衛機】による攻撃誘導で止められてしまう……困りましたねぇ」
まさに八方塞がり……でも、それが諦める理由にはならない。
「時間の無駄だ……!さっさとサレンダーしてしまえっ!!!」
「……これが物語の主人公ならば、運を天に任せたドローで逆転出来るのでしょうね」
でも、私は主人公ではなく悪役です。
「天に任せるなんてしません。私は、自らの手で選び取ってやりますよ!!!」
さあ、誘黒神を見せてあげましょう。
カード紹介
【神聖なる不滅者エドモン】
白の神の第三の使徒、冥府を示す星が堕とした衰退の囚人。
墓地からカードを取り除いたり、回収した時に反応するハンデス及びモンスターの効果無効は【マスティマ】と【アルセーヌ】のコンボをさらに凶悪にさせる。




