「俺の勝ちだから」/「私の遊び場へようこそ」
鬼の仮面を被っていた神牙のおっちゃんとのファイトは無限ループを叩き込んで俺が勝った。
ファイトの途中から降り注いでいた爆弾は途中で止まったけども……代わりに遠くに見えた火山みたいなのがある場所にデカイ氷の柱が出来てからは神牙のおっちゃんの様子がおかしくなった。
『駆魔っ……!?』
『主義、主張は……今は、捨てる』
『少年……当たると、死ぬ程痛いぞ』
俺の墓地のモンスターの数だけAが上がるようになった神牙のおっちゃんの"ギアスモンスター"は文字通りに鬼みたいに強かった……エースとして出したのがユニオンカードを装備した【ゴウエン】じゃなかったら間違いなく倒されたのは俺だった。
「俺の勝ちだから……本戦のトーナメントに俺、出られるんだよな?」
「…………大会が、継続……出来る、ならば……出られると、思う」
【ゴウエン】のアッパーカットで吹っ飛ばされた先で大の字になっている神牙のおっちゃんに駆け寄って、話しかければ微妙に変なニュアンスの答えが返ってきた。
「継続出来るならって……さっきの爆弾とかそっちの仕込みじゃないのか?」
「違う……俺は、あんなモノ……聞いていない」
「じゃあ、アレ何なんだよ!?」
俺がそう叫んだと同時に空から白い鉄の塊が降ってきた。
自分から実体化した【ゴウエン】と【ヒモリ】が弾いたから俺も神牙のおっちゃんも怪我はしなかったけども……思わず空を見上げれば爆弾を落としていた飛行機みたいなモンスターから見覚えのあるモンスターを連れたおっさんが布の塊を掴んだ状態で降りてくる。
「あんた、優義徒の父ちゃん!!?」
「…………ああ、またお前か」
なんか、前に見た時よりも顔色が悪くて……どこを見ているのか分からない白っぽい目をこちらに向けてくる優義徒の父ちゃん。
そして俺達の足元に布の塊を放り投げたと思ったら布から『ギャン』と悲鳴が出る。
布の塊をまさぐって、中身を確認すると俺より歳下っぽい子供が目を回していた……気を失ってるみたいだ。
「まさか、惹琴……!?」
「自身の持ち場を離れて私を止めに来た勇敢な少年だ……命までは取らない。今宵死ぬのはただ一人なのだから」
「その死ぬ一人は……私の事ですか?」
這いながらも惹琴って呼ばれた奴に神牙のおっちゃんにそう話す優義徒の父ちゃん。
その言葉に重ねるように、どこからか姿を表した優義徒が問い掛けていた。こっちもなんだかいつもの雰囲気とは違う……今日の開会式で見た真っ白い服装なのは変わらないけども、血や何かの黒い粉末が付いていてボロボロだった。何より……疲れているように見える。
「来たか……その様子だと彼は失敗したか」
「ジュンくんを唆したのは貴方でしたか……あの【モルガーン】のカードを渡したのも貴方ですね?」
「……貴様が私に埋め込んだ【永劫に留める】を分離させた際に出現したのが《《真なる》》白の英雄のカードであるアレだ」
「分離させた……?私以外にそんな事が出来る筈がないですよ」
「あのお方の力でも完全には分離できなかった……故に、お前に敵対している今も尚、私の体は内側から痛めつけられ続けている」
俺には話がよく分からなかった……優義徒が優義徒の父ちゃんになんか悪さして、その悪さした部分をちょっとだけ何とかしたのが今の状況……と、俺は解釈している。
優義徒の方もいつもみたいに笑ってはいるけども視線が鋭くなって、暫く優義徒の父ちゃんを見ていたかと思うと、笑いながらも嫌そうに表情を歪めていた。
「なんだ、とっくに顕現していたんじゃないですかあの変態野郎…………なのにまだ優義徒を狙っているのですか」
「……教皇猊下の友人に対して、無礼な事を言っているな貴様」
空気がピリつく。
優義徒っぽくない、ストレートな罵倒に優義徒の父ちゃんが"ギアスディスク"を構える。
その姿勢に、笑みを深めた優義徒がこっちを見てくる。
「ヒャッカくん、すこぉし待っていて下さいね。おとうさんを大人しくさせてから、色々お話しましょうか」
いつもよりもなんだかこう、猫なで声で甘ったるい声色に寒気が走る。
直感が言っていた……今の優義徒を放置していたらマズイって。
だから、俺も"ギアスディスク"を構えようとした瞬間に、カチリとどこかで時計の針が動くような音が聞こえた気がした。
そして、優義徒が指を鳴らすと同時にアイツの影が風船みたいに膨らんで、優義徒と優義徒の父ちゃんを呑み込んで姿を消した。
ーーーーー
これ以上の邪魔が入る前にと、影でお父さんを呑み込みました。
行き先は"サモンエナジー"によって作られたこの島の中央……実体化された四種のアーティファクトがぶつかる接合部分に当たるその場所には楔として私もカードを一枚使用していたのです。
「私の遊び場、【幽獄の万魔殿ージェイルオブデモリエルー】へようこそ」
おどろおどろしいこの監獄は白のモンスター……正確には神聖なるモンスター達によって捕らえられた邪聖天モンスター達を収監する場所でした。
しかし、今ではこの場所は邪聖天モンスター達にとっての本拠地。
その中心部へと私の影の触手で引きずり込まれたお父さんは真っ直ぐに私を……いえ、若干ズレた位置を睨みつけています。
「よく見えていないようですね?そんな状態で"ギアスファイト"が出来ますか?」
「問題は無い」
そう言ったお父さんの背後に一体のモンスターが現れます。
作り物めいた白磁の肌に金糸を束ねて造られた頭髪。
私がユウゾウさんから借り受けていた【人形天使の製作者マスティマ】によく似たそのモンスターの背には大きな六枚の翼が生えていました。
お父さんの"ギアスディスク"に置かれたそのカードに刻まれた名は
「【神聖なる人形天使マスティマ・TheCiel】……?知らない子ですね、ユウゾウさんも酷い人です……その子も私に貸してくれてたら良かったのに」
「これらのカードは正真正銘の切り札だ……信頼出来る者にしか幽蔵も貸し与えん」
これら……ですか。
【神聖なる】の名を冠しているという点ではお父さんの切り札である【メタトロン】と同一と言えます……何かが引っ掛かります。
微妙な違和感……取るに値しない、しかし根本からひっくり返るような気味の悪い感覚。
…………いや、今はお父さんとの"ギアスファイト"に集中しましょうか。
「再戦ですね、お父さん」
「お前に父と言われる筋合いは無い……邪神め」
「…………では、サバトさんとお呼びしましょう」
お父さんと呼ぶ事さえも拒否されたので酷く悲しい気持ちになります……向こうからして見れば当然の事ではありますが。
"ギアスディスク"を構えるお父さんの背に【マスティマ】が立ったかと思うと見えるか見えないかギリギリの細さの糸が四肢や指に繋がります。彼女(?)に体を操作させてプレイするつもりなのでしょう……面白い発想です。対して私はデッキを浮かべ、"ギアスファイト"が始まる前に一枚のカードを使用します。
「約定カード【強壮なる使者】をゲーム開始前に発動します。効果により、私は"ギアスモンスター"を配置する事が出来ません」
「……約定カードを使うまでに復活してきたのか」
「約定カードに驚かないなんて……他の人達を見た事があるようですね」
十中八九、あの変態野郎でしょうが……
「「"ギアスファイト"レディセット!!」」
白掟 裁刃徒 【統白神の使徒】
VS
ユギト 【誘うは深淵の果て】
「「スタートアップ!!」」
お父さんとの最後の遊び、楽しみましょうか。




