「私の行いは正当化されますし、正当化させます」
満足げに倒れていくソコロワ嬢に思わず、影から触手を伸ばしてゆっくりと寝かせました。
……ファイト中に少し様子がおかしくなった場面がありましたが、その時に《《何か》》起きたのでしょう。
そこからの彼女の熱量と気迫は素晴らしい物でした……今の私が相手でなければ間違いなく勝っていたのは彼女でした。
「とても楽しい遊びをありがとう、ソコロワ嬢」
意識を失っている彼女の頭を撫でてから、もう一つのファイトの方に視線を向けました。
……終盤を通り過ぎて決着に差し掛かろうとしていますね。
苦しげな表情のジュンくんの場には【ランスロットⅡ】のみ、対するヒャッカくんの場には……すごく嫌な感じがする大きな火の玉とユニオンカードをユナイトしている【ゴウエン】いますね。
「これで終わりだ!!【ゴウエン】でオウドウにダイレクトアタック!!」
その宣言と同時にこちらの近くにまで吹き飛ばされて転がってくるジュンくんを自身の手で受け止めました……チラリと見た"ギアスディスク"のライフは0を示していて彼がヒャッカくんに負けたというのが見て取れますね。
「少し見ない間にジュンくんに勝つなんて……子供の成長というのは早いですね」
「ユギト!次はお前だ!!!」
"ギアスディスク"を構えてやる気満々のヒャッカくん……メラメラとやる気の炎が背後に見えますがちょっとよろしくないです、最近は妙に炎が怖い。
「ヒャッカくん、キミはジュンくんとのファイトで疲れているでしょうし……このまま本当に私に挑むのですか?」
「ぜんっぜん疲れてねぇし!!」
どう見ても嘘ですね。肩で息をしていますし、よく見れば擦り傷だらけですし……為す術もなくジュンくんは負けたようではないのでそこは褒めてあげましょうか。
「それに……このままソコロワ嬢を置いていて良いのですか?」
「っ……!」
意識を失ったままの彼女の頬を手の甲で撫でてやり、笑ってみせれば悔しそうに表情を歪めてきます……ちょっと楽しくなってきました。
「私は構いませんよ、彼女がこのまま私達の勝負に巻き込まれてしまっても」
場のペースはこちらが握れていますね。
たまにペースを乱されることはありますが……言葉による戦いでは強者であると自負しています。主人公とはいえ、ただの小学生である彼に負ける訳にはいきません。
「さあ、選んで下さい……勝てるか分からない勝負をして犠牲者を出すか、このまま引いて全員無事に帰るかを」
「……申し訳ございません、白掟様」
頭を下げてくるジュンくんに微笑みながら言葉を投げます。
「ジュンくんのデッキは初見殺しな所がありますからね……それに、一度負けたとしても以前に勝っているのならばイーブンになっただけですよ」
防音がしっかりとされている反省部屋には虫でも入り込んだのか視界の端にちらちらと飛んでいる何かが入り込みますが……それを無視して自分で手当をしているジュンくんを眺めつつ、手持ちのカード達を整理していました。
神聖なると邪聖天……パックを剥いたり、気づけば持っていたりなどで枚数が多くなってきたそれらを簡単に分けているとジュンくんから声を掛けられます。
「……あの子供、炎柳百火が新しく使ってきたカードは【永劫に留める】によく似ていた。見た目がというよりは存在感が、だが」
手が止まります。
【永劫に留める】……黒の神の瑞神の一体であるカードによく似ているという事はつまりは
「神ならばファイト中に出されれば私も分かるはずですし……瑞神、それも黒以外の物。恐らくは赤の瑞神でしょうね」
「瑞神……?【永劫に留める】と同じカテゴリーという事か?」
「まあ、そういう認識で構いません」
各色ごとに一体ずつ存在する神……その眷属であり、次代の神候補が瑞神です。
少しづつ思い出せてきた私の本来の記憶によれば【永劫に留める】と【水底の呼び声】、【空に誘う冷気】そして【無限湖の繁殖】が私の眷属です。
後者二つは行方知れずですが ……【永劫に留める】は父に保管してもらってますし、【水底の呼び声】の方はIGPが回収して以降音沙汰が無いので多分大丈夫でしょう。
「ジュンくん、どんなカードかは覚えていますか?」
「……【永遠に燃える】というカードでアーティファクトだった。一定コストまでしか互いの場にカードを置けない効果で、元々のコストを参照されたから【アーサーI】を封じられたな」
「それはまた……私のデッキにも刺さりますね、ソレは」
大型モンスターを並べるのが勝ち筋である私の戦術に刺さるコスト制限……ちょっとこれは狡いですが対策を考えないといけませんね。
もう一度手元のカードに目を落としますが……今の手持ちではコレと言える対策が浮かびません。アーティファクトに触れるカードを多めに採用するくらいでしょうか?
「……【永劫に留める】のカードはどこにある?」
「あの子ですか?今はお父さんに対して使っているので渡せませんよ」
「…………は?」
ふむ、【永劫に留める】の効果はアーティファクトを封じる物ですから【永遠に燃える】対策に使えそうですが……父に自由に動かれる方が辛いので動かせませんね。
「裁刃徒さんにアレを……!?何を考えている!!?」
「使わないと死にそうでしたし、仕方ないでしょう?それに……私のやる事に文句を言うのですか?」
そう言えばジュンくんは二の句が継げずにこちらを睨みつけてきますが……簡易的ではありますが契約で縛ってますから私の不利益となる事を行えません。
「大人しく私に従っていれば良いのですよ……キミもですよ、タクミくん」
視界の端に映っていた虫……超小型ドローンを影から出した触手でつまみ上げながらそう言ってやります。
「気になったから飛ばした程度の軽い気持ちでしょうが……ふふ、ここで聞いた事や見た物は他言無用ですよ。もしも他の人に伝えれば……カタルさんに責任を取って貰いましょうか?」
ニッコリと笑いながら、ドローンを握り潰してその残骸を影の中へ引きずり込みます。
「これからお前は何をするつもりだ……」
「良い事に決まってるじゃないですか。私は神聖制約教団の大司教ですよ?正義の旗の元に……私の行いは正当化されますし、正当化させます。最後には……全てを丸く収めますから」
そう言い残して私は先に反省部屋から出ました……そう、上手く終わらせてみせますとも。打てる布石は全て打たなければ。




