「何になるかなんて知らないわよ」
「…………アーティファクト【撥条機工砦HIRAGA】と【撥条機動要塞HISASIGE】をもう一度発動。バトル」
一度は動きが止まっていたレジーナだけど、直ぐにまたプレイに戻ってきた。
腕を振るだけの動きで【ハルカゼ】と【エイプリル壱式】が飛び掛ってくる……防衛は、しない。【凍土の社員妖精】をここで潰すのはもったいないから……
でも、その判断をアタシは直ぐに後悔する羽目になった。
水兎 ライフ:10→7→6
「スペルカード【撥条緊急機構1467】を発動」
【撥条緊急機構1467】
黄 コスト:2 スペル・カラクリ
自分の場の撥条カードを全て破棄する。
デッキから【撥条暴走絡繰GENNAI】を発動する。その後、それに破棄した数と同じ数のネジマキカウンターを乗せる。
このスペルの発動は無効にされない。
サイレンが鳴り響いたかと思うと遊園地の設備が全て動きを止める……そのタダ事では無い様子におもちゃの兵士達が慌てるが【ハルカゼ】だけは全てを諦めたように天を仰いでいた。
やがて動力源となっていた全てのぜんまいが停止していき、おもちゃの兵士たちが一体、また一体と動かなくなっていく……最後に残った【ハルカゼ】はレジーナの方を見てから同じように動きを止めた。
その直後に降ってきたのは大きな黒いゼンマイ……それが地面に突き刺さり回転するとそこから赤黒い稲光が走っていく。
「小官の場の撥条カードを全て破棄し、デッキ外からアーティファクト【撥条暴走絡繰GENNAI】を発動する」
【撥条暴走絡繰GENNAI】
黄 コスト:4 アーティファクト・カラクリ
このアーティファクトは場に存在する限り【撥条絡繰KITERETU】としても扱う。
一ターンに一度、このアーティファクトに乗せられたネジマキカウンターの数にコストの合計が等しくなるようにデッキから撥条モンスターを二体まで場に出せる。
ぐるりと回転した数は6。
蒸気が吹き出し、その中から何か巨大な影が揺らめく。
「【撥条緊急機構1467】の効果で【撥条暴走絡繰GENNAI】には破棄された撥条カードの枚数……トークンを含めてネジマキカウンターが6乗る。そして【撥条暴走絡繰GENNAI】の効果を発動」
蒸気を掻き分けて現れたのは赤色が基調の巨大なゼンマイじかけの鎧武者。
前に見た【モンザエモン】の観音と同じくらいの大きさのソレがゆっくりと動きながらアタシを睥睨する。
「自身に乗ったネジマキカウンター数にコストの合計が等しくなるように撥条モンスターを二体まで場に出せる。小官はコスト6の【撥条三条機動兵器ヤヨイ】を出す」
【撥条三条機動兵器ヤヨイ】
黄 コスト:6 カラクリ・兵装
A:3 B:6
このモンスターがいる限り、相手は可能な限りこのモンスターを攻撃しなければならない。
このモンスターのAは墓地のアーティファクトの数だけ上昇する。
このモンスターはこのモンスターのコスト以下のモンスターから防衛されず、このカードのコスト以下のカード効果では場を離れない。
「大きい……!!」
「……【ヤヨイ】のAは墓地のアーティファクトの数だけ上昇する。バトル続行」
「っ!【凍土の社員妖精】で防衛!!」
「【ヤヨイ】は自身のコスト以下のモンスターからは防衛されない」
【ヤヨイ】が抜いたのは自身の体躯に見合った大きな日本刀……あまりの大きさに、【凍土の社員妖精】は怯えて動く事が出来ない。
振り下ろされた刀は直接アタシの体には触れなかったけど、風圧にアタシは吹き飛ばされて何度も地面を転がった。焼けた硬い地面と石がぶつかって全身がすごく痛い……それでも、アタシは立ち上がった。
水兎 ライフ:6→1
「……何故」
初めてレジーナがファイトを進める以外の言葉を言う。
彼女の目は揺れていて、それと同時に呼吸も乱れ始めていた。
「何故……痛いのにファイトを続けているの……?あなた達は私と違う普通の子供なのに……耐える必要なんて無い、普通の子供らしく泣いて逃げてもいいのに……《《私が出来なかったそれをしていいのに》》」
「ファイトを続けている理由なんて簡単よ……《《逃げたら、アタシの負けになるから》》」
真っ直ぐ目を見てそう言ってやれば、ぎくりとレジーナの肩が跳ねて頭を抱えてブツブツ言い始める。
「負け……?そんな事の為に……死ぬかもしれないファイトをしている?なんで?なんで?なんで?ずっと負けないなんて出来ないのに、苦しいだけなのになんで?私が許されなかった逃げる事が出来るのに……それなのに!!」
やがて、急に空に向かって叫んだかと思うとこちらを睨みつけてくるレジーナ……その目は正気なのかは分からないけど少なくともさっきまでの状態よりはずっとやりやすいわ。
「あああああもう!!!!何なんでありますか!!同志百火も!水兎少女も!痛いのは嫌な筈でありましょう!?なのに何故意志を貫く!!何故そんな状態でも戦おうと思えるのでありますか!!!」
「決まってるじゃない!百火もアタシも、コレについてはきっと同じ意見よ!意志を曲げる方が嫌に決まってるじゃない!!」
「ふざけんじゃないでありますよ!!死ねば意思も何も関係ない、なのにこんなの続けて何になるであります!!」
「…………何になるかなんて知らないわよ」
いつの間にかターンはアタシに渡っていた。
ズキズキと痛む手足はもしかしたら骨が折れているのかもしれない。けど、不思議と体の芯が冷えていって思考はどこまでもクリアで……こんな火の海の真っ只中なのに雪が降っているような気がした。
「でも、辞めたら何かを失う気がするから。だから続けてるのよ、痛くても苦しくても」
声が聞こえた気がした。
──凍りついたように永遠に変わらない意志を貫く貴女、雪のようにやがて儚く溶けて折れてしまうかもしれない貴女。
──今は未熟でもその気高き願いを叶えようとする貴女に、ワタシは力を貸したい。
──さあ、手を伸ばして
デッキトップは熱風が吹き荒れる中で酷く冷たくなっていた。凍傷を起こしそうな程の冷気を纏ったその一枚を……アタシは引く。
「……アタシのターン、ドロー」
水兎 第三ターン
ライフ:1
手札:3 ターンカウンター:5
入れた覚えのないカード、そのテキスト欄には王冠に似た紋章が刻まれていた。
「"レジーナ"、アンタにここでリベンジしてやるわ!【凍土の社員妖精】の効果発動!この子自身を破棄して、デッキから二枚目の【ティターニア】を場に出す!その効果で二枚ドローして墓地の【氷雪の妖精】を回収し、コスト0でサモン!一ドロー!」
これで引いた枚数は三枚……条件は整ったわ!
「このモンスターのコストはこのターン中にカード効果でドローした枚数だけ軽減される……絶対零度の理を敷き、絶対の女王よ全てを凍てつかせろ!!【凍土の悲痛なる女王スノーホワイト】!!」
【凍土の悲痛なる女王スノーホワイト】
青 コスト:8 英雄・氷
A:2 B:4
このモンスターのコストはこのターン中にカード効果でドローされたカードの枚数だけ少なくなる。
このモンスターが場に出た時、または一ターンに一度発動出来る。
相手の場のカード全ての効果を自分のターン終了時まで無効にし、相手のターンの終わりまで相手のモンスターは攻撃も防衛も出来なくなる。
ゾッとする程に美しい女だった。
雪のように白い肌、林檎よりも赤い唇、艶やかでいてそれでいて光すら飲み込む程の黒い髪。均整の取れたプロポーションとそれを引き立たせる無駄を一切省いた漆黒のドレス。物憂げなその佇まいがその人に抗うという気力を奪う程の美しさを放っていた。
【スノーホワイト】が一度目を伏せてから、指先に吐息を吐きかけるとそれだけで凄まじい吹雪が巻き起こる。
【ヤヨイ】はおろか、火の海すらも凍てつかせると【スノーホワイト】は横の【ティターニア】に一度視線を向けてからまた元のように視線を伏せて物憂げな表情を浮かべた。
「【スノーホワイト】の効果!サモンした時に相手の場の全てカードの効果を無効にしてモンスターは更にフリーズさせるわ!!」
もうレジーナを守るモノはいない。
【ティターニア】の氷雪嵐と【妖精】の雪玉が彼女にトドメを刺した。
レジーナ ライフ:5→2→0
カード紹介
【凍土の悲痛なる女王スノーホワイト】
凍土の体現者にして青の英雄。
相手のモンスターの効果と行動を封じ込めるフリーズ効果しか持たないが、コスト軽減の条件が緩い為にコストの割に場に直ぐに現れやすい。
彼女は喪中で、力を暴走させた事を悔いて今はその能力を封じているらしい




