「甘いと思っただけだ」
冬馬の息子は昔の冬馬によく似ていた。
黒主体のデッキによるハンデスと墓地利用……黒の得意な動きをそのまま押しつけてくるソレは斜に構えたようでその実、根は真っ直ぐな所がよく似ている……
そんな彼から敵意を向けられるのは非常にやりづらい……まるで冬馬が蘇ってきて私を糾弾しているような気になる。まあ……自業自得なのだが。
「私のターン……カウンターブースト」
裁刃徒 第二ターン
ライフ:11
手札:4 ターンカウンター:3
「アーティファクト【焦土天機律動】を発動」
【焦土天機律動】
白・赤 コスト:2 アーティファクト・兵装
自分の場に焦土天機モンスターが存在しない時に発動出来る。
自分のターンカウンターの数字以下のコストの焦土天機モンスター一体を場に出せる。
この効果を使用したターン、自分はモンスターをサモン出来ない。
このアーティファクトが場を離れた時、デッキのコスト4以上の焦土天機モンスター一体を場に出せる。
空に炎の輪が浮かび上がったかと思うとその輪の中心から流線型の飛翔体が飛び出て来る。
「その効果によりデッキから【焦土天機の炸裂機】を場に出して効果発動」
【焦土天機の炸裂機】
白・赤 コスト:2 使徒
A:2 B:1
このモンスターが場に出た時に発動出来る。
自分の場のカード一枚を破棄し、全てのプレイヤーは一ダメージを受ける。その後、自分のデッキの一番上のカードを一枚破棄する事でこの効果をもう一度発動出来る。
「【焦土天機律動】を破棄して互いに一ダメージ。さらにデッキトップを破棄し、【焦土天機の炸裂機】自身を破棄してもう一ダメージだ」
炎の輪を再度くぐり抜けて、【炸裂機】が爆弾を辺り一帯にばら撒く。爆風が火を巻き上げ、私と目の前の彼に少なからずの火傷を負わせた。
……彼の方は"ギアスモンスター"が火を払い除けているようで肉体的には無傷のようだった。
恐馬 ライフ:9→8→7
裁刃徒 ライフ:11→10→9
左肩がズキズキと痛み、そこに熱傷も加わるも私の方のモンスター達は何も反応はしない。互いにいつもの事だからと最早この程度の傷は慣れたものであった。
やがて、全ての爆薬を放出した【炸裂機】がそのまま光の粒子となって消えると崩れかけた炎の輪が最期の輝きを放つ。
「【焦土天機律動】が破棄された事で効果発動、デッキからコスト8の【焦土天機ケルビム】を場に出す」
「その緩すぎる条件でコスト8だと……!?」
【焦土天機ケルビム】
白・赤 コスト:8 使徒・天使
A:2 B:4
このモンスターが場にいる限り、相手は他のプレイヤーを攻撃する事が出来ない。
一ターンに一度発動出来る、全ての相手プレイヤーのターンカウンターを一つ取り除き、その数だけ全ての相手プレイヤーにダメージを与え、その点数分自分のライフを回復する。
光の中から降り立つのは巨大な空中空母……ソレの形がどんどんと変形していき、やがて機械仕掛けの天使【焦土天機ケルビム】となる。
その閉ざされた瞳が開くと同時に、奴の場に熱線が飛び爆発が起こる。
「【焦土天機ケルビム】の効果発動、全ての相手プレイヤーのターンカウンターを一つ取り除き、その数だけ全て相手プレイヤーにダメージを与え、私のライフを回復する……焼き払え【ケルビム】」
「ぐっ……させるか!スペルカード【道連れ】!!自分の場または手札のモンスターを一体を破棄して、そのコストと同じ相手モンスター一体を破棄する!!」
【道連れ】
黒 コスト:2 スペル・犠牲
自分の場または手札のモンスター一体を破棄して発動する。
そのコストと同じコストの相手モンスター一体を破棄する。
彼が手札から捨てたカードが実体化する。
腐りかけた……否、既に腐り果てた屍の怪鳥が耳の奥をこそぐような不快な鳴き声を上げながら【ケルビム】に取り付く。
【不滅の復讐怪鳥モンテクリスト】……冬馬から一度は奪ったものの取り返され、そして行方知れずとなったそのカードか再び牙を向いてきた。
「そのカードは……」
「死した父より受け継いだカードだ……コイツには見覚えがあるようだな。ようやく、その鉄面皮にヒビが入ってきたぞ」
恐馬 ライフ:7→6
裁刃徒 ライフ:9→10
【ケルビム】諸共地面に墜落する【モンテクリスト】はそのまま火の海へと飛び込んだ。
……ターンカウンターを削ったは良いが、【ケルビム】を落とされさらに追加のモンスターを出せない。そして破棄された【モンテクリスト】……状況はかなり悪いがやれる事をやるしかないだろう。
「コスト8以上の天使モンスターが破棄された時にこのカードはターンカウンターを無視して発動出来る……スペルカード【緊急再誕】」
【緊急再誕】
白 コスト:4 スペル・天使
このスペルは自分の場のコスト8以上の天使モンスターが破棄された時にターンカウンターを無視して発動出来る。
自分の手札を破棄して、手札から天使モンスター一体を場に出す。
そうして場に出した天使モンスターは場に居る限り効果が発動出来ず、攻撃も行えない。
私の手札を燃料にして、再び燃え上がる炎の輪。
そこから姿を見せたのは無数の小型戦闘機で、それらが集まりやがて一つの巨大な天使の姿を形取る。
「手札を一枚破棄し【焦土天機の殲滅機】を場に出す」
【焦土天機の殲滅機】
赤・白 コスト:6 使徒・天使
A:3 B:2
このモンスターの攻撃時に発動出来る。
相手の場の最もAが低いモンスター一体(複数いるならば選択)を破棄し、相手に一ダメージを与える。
このモンスターが場にいる限り、破棄されたモンスターは墓地ではなくデッキの一番下に送られる。
壁として出されたがコイツは本来ならば彼のような墓地利用デッキの弱点となるカードだ。
向こうは効果は分かっていないようだが……さて、どう来る?
「ターン終了だ」
「俺のターン、ドロー前に墓地の【モンテクリスト】の効果を発動!!」
【不滅の復讐怪鳥モンテクリスト】
黒 コスト:8 英雄・屍・血
A:4 B:1
このモンスターが破棄された次のターン開始時に発動する。このモンスターを場に出す。
このモンスターが墓地から場に出される度に発動する。このモンスターを除く全てのモンスターのAを1下げる。
このモンスター名の下記の効果は一ターンに一度しか使えない。
一ターンに一度、このモンスターが攻撃する時に発動出来る、墓地からモンスター一体を場に出す。
炎の中から腐り果てた不死鳥が舞い戻る。
その効果は不死鳥の名に相応しいモノだが……相手にすると厄介な事この上ない。
「改めて俺のターン、カウンターブースト!!」
恐馬 第三ターン
ライフ:6
手札:3 ターンカウンター:3
「【血濡れた狩人】をサモンし効果発動!【血濡れの魔犬】を破棄して、その元々のA分【血濡れた狩人】のAを4に上昇させる!」
「【焦土天機の殲滅機】がいる限り、相手の破棄されるカードはデッキの一番下に送られる」
嫌そうな表情となる彼だが、止まる気配は無い。
斧を持った男に首を落とされた犬の体を【殲滅機】が運び去るのを横目に、更なるカードが切られた。
「スペルカード【不滅因子】を【モンテクリスト】を対象に発動する!」
【不滅因子】
黒 コスト:3 スペル・屍
自分の場の黒のモンスター一体を選択して発動する。
このターン中にそのモンスターが破棄された時、墓地からそのモンスターをAを1減らした状態で場に出す。
……そう来るかと感心してしまうのは彼の親世代だからだろう。
「バトル!【血濡れた狩人】で【焦土天機の殲滅機】を攻撃!」
血を纏った斬撃が【殲滅機】へと襲い掛かる。多数の機体が落とされるも、それを意に返さずに機械制御された天使達が空を舞う。
一斉射された機銃が血まみれの男を撃ち抜きそのまま残された機体達が【血濡れた狩人】にぶつかり、爆発炎上していった。
「【モンテクリスト】で攻撃宣言時に効果発動!!【血濡れた狩人】を墓地から場に出し、その【血濡れた狩人】の効果を発動!!」
爆炎の中から斧が【モンテクリスト】へと投げつけられる。回転するその刃が首を切り落としてコールタールのような黒く粘ついた血液が溢れ出る。
私の靴すらも濡らす勢いで溢れ出てきた血液を火達磨の状態の血まみれの男が這い蹲って舐めて狂ったような笑い声をあげていた……少し、昔の優義徒を思い出して胃の底が締め付けられるように感じた。
「【モンテクリスト】を破棄してそのA分のAを追加する。そして【モンテクリスト】は先程の【不滅因子】の効果で蘇る……それぞれの効果で【モンテクリスト】と【狩人】のAが1減るが誤差だ。バトル続行!!」
人体に悪そうな紫色のガスを伴いながら首を繋げて蘇る【モンテクリスト】
そのガスに咳き込みながらも投げつけられる斧と怪鳥の身の毛もよだつような叫びが私に襲い掛かる。
裁刃徒 ライフ:10→4→1
初期ライフの殆どが消し飛ぶ一撃は流石に堪える……息が詰まり、崩れ落ちそうになる膝に活を入れる。
「……これで、終わりか?」
「ターン終了だ、お前には聞きたい事が山ほどあるからな……死なせはしない」
『お前を止めたいだけだから……死なせはしない』……冬馬との最後のファイトで言われた言葉を思い出す。それと同じような言い回しに思わず笑みを浮かべてしまった。
「何がおかしい……!」
「恐怖連合に所属している割に……甘いと思っただけだ」
ライフ差は十分、ターンカウンターも問題ない……黒のプレイヤーへのバーンスペルを使うにはターンカウンターが足らない。つまりは、このターンの妨害は無いに等しい。
「私のターン……カウンターブースト」
裁刃徒 第三ターン
ライフ:1
手札:0 ターンカウンター:5
火柱が私の周りに立ち上る……その数は十本。
「奴と同じような事を……"ギアスモンスター"か!!」
「神に最も近い天使……その一体を見せてやろう」
火柱が私の背後の"ギアスモンスター"──炎の翼を持った天使に突き刺さっていく。
火は彼に力を与える。天から与えられたという彼の事を表す代名詞は……"神の怒り"或いは"神の瞳"
「自分のライフと全ての相手プレイヤーのライフの合計の差分だけこのモンスターのコストは減少する」
ゆっくりと動き出すのは機械仕掛けの天使達の統率者。
純白のボディは炎に照らされて朱色に染まり、金色の頭髪は先端に行く程に淡く輝きを放つ。
人ならざるもの特有の感情を見せない温度の無い視線が敵対者を射抜く。
「誓約サモン、君臨せよ【神聖なる焦土天機メタトロン】」
【神聖なる焦土天機メタトロン】
白・赤 コスト:10 天使・兵装
A:7 B:7
このモンスターのコストは自分のライフと全ての相手プレイヤーのライフの合計の差分だけ減る。
一ターンに一度、相手の場のモンスター一体を選択して封印する。その選択されたモンスターのコスト以下のモンスター全てを破棄し、その数だけ全ての相手プレイヤーにダメージを与えて自分のライフを回復する。この効果は相手ターンでも発動出来る。
相手の効果でこのモンスターが対象に選ばれた時に発動する、相手のターンカウンターを全て取り除く。
このモンスターの攻撃で相手プレイヤーにダメージを与えられない。
超級のモンスターである【神聖なる焦土天機メタトロン】のステータスは全モンスターの中でもトップクラスだ。
相応のデメリットもあるが、"ギアスモンスター"であるならばそのデメリットもある程度は見過ごせる。
「【神聖なる焦土天機メタトロン】の効果発動。【不滅の復讐怪鳥モンテクリスト】を封印し、そのコスト以下のモンスターを全て破棄する」
「っ!スペルカード【黒の生贄】を発動する!!【モンテクリスト】を破棄してライフを回復する!」
「……破棄された数だけダメージをそちらに与え、私はライフを回復する」
【メタトロン】が指差した方向に火柱が突き刺さる。血まみれの男と両足に枷を嵌められていた男がついでとばかりに火に炙られて倒れ伏す。
恐馬 ライフ:6→7→5
裁刃徒 ライフ:1→3
「ターン終了だ」
「くっ……俺のターン!【モンテクリスト】と【不滅虜囚】を場に戻し、【虜囚】の効果でドローそして「【メタトロン】の効果を発動、【モンテクリスト】を封印してダメージを受けてもらおう」なに……!?」
【メタトロン】の効果は相手ターンでも発動出来る……ここが最も効くタイミングだろう。
再び突き刺さる炎の柱は今度は【モンテクリスト】を内部へと閉じ込める。再度焼け焦げていく【虜囚】は強く生きてくれ……死んでいるが。
恐馬 ライフ:5→4
裁刃徒 ライフ:3→4
ライフは同点まで持ち直したが……さて。
手札を見た彼は諦めたように溜め息を吐くもプレイを続行する。
「……カウンターブーストだ」
恐馬 第四ターン
ライフ:4
手札:1 ターンカウンター:5
「白掟裁刃徒……父を倒しただけはある。今の俺では貴様を倒し切れない……だが!!」
漆黒のオーラが放たれる……来るか。
「《《勝たせはしない》》!!誓約サモン!復讐の時来たれり!血の喝采をあげよ【血濡れた復讐鬼ハムレット】!!」
場に踊り出る銀髪の剣士は主人の覚悟を決めた表情に微笑みで返し、私に細剣の切っ先を向ける。
「スペルカード【炸裂する血肉】!!さあ、共に散ってもらおうか!!!!」
発動したのは自爆に等しいカード。
だがそれは、私を巻き添えにする一撃だ。
【ハムレット】が細剣を構え、【メタトロン】へと突撃する。
それを迎撃する【メタトロン】の炎が細剣とぶつかった瞬間に閃光が走り、意識が飛んだ。
恐馬 ライフ:4→-1
裁刃徒 ライフ:4→-1
カード紹介
【不滅の復讐怪鳥モンテクリスト】
無限に復活する文字通りの不死鳥にして黒の英雄。
自身の蘇生時に周りにデバフを与え、攻撃時に制限無しでモンスターを蘇生出来るカード。
かなり低いBも蘇生時の効果を考えれば、墓地に置いた方が都合が良いので問題ない。
このカード自身は軽減効果を持たないので、墓地に送る手段を複数用意したい。




