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第27話 『全て君の為』 ③

 その瞳を見てしまうと、私は何も言えなくなってしまった。だって、怖かったから。怖かったから……怯んでしまった。ただ、それだけ。


 そんな中、アイザイア様は満足気に頷かれると、何かを上着のポケットから取り出された。


「……それは?」


 開かれた手の上に載っていたのは、とても綺麗なエメラルドであろう宝石が埋め込まれたペンダントでした。星の形をしており、キラキラと煌めいているようにも見える。それを、何故突然取り出されたのか。そんなことを思っていた私を他所に、アイザイア様はそのペンダントを私の首にかけてこられたのです。何の許可もなく、何の前触れもなく。いきなり、です。


「……これはね、お守りだよ。絶対に、肌身離さず持っていてね」


 アイザイア様はそんなことをおっしゃると、また満足気に頷かれました。ペンダントに片手で触れてみると、ひんやりと冷たい。なんの変哲もない、綺麗な宝石が埋め込まれたペンダント。いったい、これが何だというのだろうか。私はそう思ってしまい、アイザイア様を見つめ返した。その時にはもうすでに、アイザイア様の瞳には光が戻ってきていました。


「……これはね、モニカに危険が迫らないようにするお守り。もしもこれを持たないんだったら、俺はモニカを監禁しなくちゃいけなくなるんだ」


 そんなことを、何でもない風におっしゃるアイザイア様。そのお言葉を聞いて、私はただそのペンダントを見つめました。何でもない風に見えるこのペンダントには、もしかしたら何かしらの魔法がかかっているのかもしれない。だからこそ……お守りに、なるのでしょう。


「……わかるよね? これは俺の最大限の譲歩なんだよ。……これを持つのと、監禁されるのと、どっちがいいかな?」

「……これを、持ち歩いています」


 監禁なんて、絶対に嫌だった。だって、自由がないなんて耐えられない。今でもお妃教育などでスケジュールがびっしりと埋まっている日は、自由が少ない。これ以上に自由な時間が減るのは、絶対に嫌だった。


「そっか。じゃあ、いいよ。じゃあね、モニカ。……俺はこれから用事があるから、ここでお別れ。だけどさぁ、分かっているよね?」


 その脅しのような迫力のあるお言葉に、私はただ何度も何度も頷くことしか出来ませんでした。アイザイア様の「分かっているよね?」というお言葉の意味は、きっとこのペンダントのことでしょう。これを、肌身離さず持ち歩く。アイザイア様のことだ、私が約束を破ってしまえば間違いなく私を監禁されるでしょう。だったら……私は、約束を守るように行動しなくてはならない。そう、強く自分に言い聞かせた。


(……この王国は腐っている、かぁ)


 アイザイア様の去っていく後ろ姿を眺めながら、私はアイザイア様が先ほど零されたお言葉を心の中で繰り返していました。フェリシタル王国は平和でとても良い国。だからこそ、腐っているなんてほかでもないアイザイア様のお口から言われるなんて思いもしなかった。確かに、貴族に権力が集中しているのはよくないかもしれない。でも、他の王国だってそうだ。そう、思ってきたから特に気に留めることはしなかった。


 しかし、私はこの後知ることになる。アイザイア様のおっしゃっている「腐っている」ということは……こんな生易しいことではなかったのだ、と。私の想像は、優しくてぬるかったのだと、思い知ることになるのでした。

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