31-1.サプライズイズアプライズ
リーダー視点
「とう、ちゃーく」
車を転がすのは好きではあるが、長時間座ってるとやっぱり腰が痛くなるのよなぁ。
駐車場に車を止めて降りてうんっと背筋を伸ばすと、それだけで滞っていたものが流れていくような気がする。
「すまないな、いつも運転してもらって」
「いやいいよ。運転好きだし、大半自動運転だしな」
そう言いながらスーツケースをどかりと取り出して、駐車場の出入り口のところで手を振る運営に向かって歩き出した。
かなり早めに来たのと道が空いていたので、参加者としては多分一番乗りだろう。なお俺達が参加者であるか運営であるかは諸説あるものとする。
一応形式として参加者証を表示して、プレイヤーネームとキャラクター画像が印刷された名札を受け取って胸に付ける。ホテルのチェックインを済ませ、鍵を受け取る。
そのタイミングですっと大きな影が近づいてきて、荷物の横に立った。
「こちらのお荷物はお部屋に運んでよろしいでしょうか?」
「ああ、おねがい、し……ま…………」
最後まで言い切れず言葉が尻すぼむ。
「失礼いたします。リーダー様とロイド様には館内のご案内は必要でしょうか?」
「いえ、我々は不要です」
ロイがしれっと返事をしていて。え、ちょっと、いや紹介動画を死ぬほど撮ったから館内案内は別にもう必要ないんだけどそうじゃなくて。
「承知しました。お部屋までご案内します」
「いやっ!いやちょっとまて!待てって!!」
「どうかなさいましたか?」
どうかなさいましたかじゃねえんだが!?
何お前スタッフ腕章付けてんの!?!?何でロイはそんなしれっとしてんの!?!?!?
「ああ、失礼しましたご挨拶もせず。株式会社ベートモビリティシステムズより出向で参りました、一条孝宏と申します。車椅子プレイヤーのサポートを主に行いますが、スタッフとしても活動しておりますので、御用の際はお気軽にお申し付けください」
「いや……え?ベートモビリティシステムズ?は?」
いや……いや聞いてたよ、協力会社からの希望で、入社の決まっているインターン生が入るって。研修は受けてるけど念の為インターン生については分かるようにしますって。いや……わかる、わかるけどわからんなんだこれどうなってんの???
「リーダー様に、西生寺グループホールディングス取締役西生寺明成様よりメッセージをお預かりしております。この場でお伝えしてよろしいでしょうか?」
「…………聞こうか」
「『貴方に特別な驚きを。お前にも一つくらいドッキリがあってもいいだろ?』とのことです」
「あんのやろう……後でどつく………」
これあれだ、ロイとトシさん知ってたやつだ……年末に飲んだ時には二人とも知ってたやつだ……。
「私をお呼びの際は一条でも孝宏でもグライドでも、呼びやすいようにどうぞ」
そう言って目の前の大男、グライドは、茶目っ気たっぷりに笑った。
「なにこれいつから決まってたの?」
部屋へ案内される道すがら、他の人がいないタイミングで声をかける。
俺とロイドのスーツケースを転がしながら、グライドはそーっすねえ、とすこし首をひねり、ロイが続けた。
「予選の前には決まっていた」
「うっそだろ……」
「予選は予選で全力は出しましたけど……そもそも、自力で行くんでチケットはいりませんってちゃんと言いましたよ」
「そっちの自力……っ!?」
「就職はちゃんと自力ですんで」
そう、そこだよ!俺グライドの就職先聞いてなかった……「ロイドに書類は渡してあるんで確認してください」「副業規定でうちの会社のこの情報が必要なので渡してある」みたいな話は何度かして、それでさっと流しちゃってた……ってか今にして思うと明らかにうまく流されている。信じられない。
「お部屋、こちらになります」
「うん……うん、ありがとう。仕事頑張って」
「ありがとうございます、頑張ります」
そう言ってグライドは去っていった。いや普通に仕事なんだろうな。初期配置が俺へのドッキリだっただけで、それ以降はスタッフとして動くんだから忙しいんだろうし。
メイン業務は車椅子プレイヤーのサポート、ね。車椅子のプレイヤー一人だけどね。
大会サポートと西生寺側への教育係としてBMSから人が来ることは聞いてたけども……そりゃニンカもグライドの予選落ちに何も言わんわけだよ……。
ぐらぐらとそんなことを考えながら部屋を開ける。
今回は俺とロイは相部屋だ。
荷物を置いて、ざっと部屋を確認して。
「さて……会場に行くか」
「そうだな」
休憩もそこそこに、これからカメラが動く宴会場に移動した。
400話!




