29-4.二分の一が十回連続で成功する確率を求めよ
正解は 一〇二四分の一。およそ0.1%。
ガチャの0.1%SSRを単発一発引きと同じ確率。
俗に「稀によくある」と言われるラインの確率だ。
現実的に目の前で見る確率としては、まあ……五連続くらいまでは偶然の産物だと思いつつ、六連続あたりから何らかの不正を疑うだろう。
というかすでに疑って一度運営に問い合わせをしたが、想定通りの挙動をしておりバグには該当しないという回答をもらった。
なのでこの技は完全な技能であって、バグ利用ではない。
断じて、技能である。
ということを目の前で今同じ技にやられて十度目の敗北を喫したドドンガに向かって言ったところ、彼は背後に宇宙のエフェクトを撒き散らして佇んだ。
うん、分かるよその気持ち。
「ニブイチスキルを、完全に打ち分けられるって意味?」
「うん」
そう、本来は二分の一になる発動が、なぜか必ず成功する。
安定しないから博打発動とか二分の一発動と呼ばれているのに、安定させられてしまった。
「大発見では?」
「うん」
例によって本人はよく分かってないっぽいんだけど、これPvPが変わるレベルの大発見なんだよねぇ。
大会終わった後の公開方法の方が頭を抱えるレベルの。
しかも影響範囲がEFOだけではなくて、PvP要素を持つほぼすべてのVRMMOだ。
「え、ぽんすけできる?」
「八割までは持っていけた。僕じゃ突き詰めても十割は無理かもね」
「…………まじかぁ」
僕でもある程度再現できちゃったところも、やっぱ問題なんだよねぇ。
いっそVR過剰適応ですって言われたほうがマシだった。
ドドンガの背後の宇宙がぐるぐると回りだす。お前はお前で器用だな。エフェクト回転って思念操作じゃなかったっけ?
「ドドンガ」
「お……おう」
「分かってると思うけど、大会まではナイショ」
「うっ、えっ、あっ、う……うん」
「これがないと、トラに勝てないんだ」
「……ってかこれも思ってたんだけど、対トラ想定ならなんで相手俺なの?あいつ一番使うのは槍だろ」
「いや、トラに槍は使わせない。トラが拳以外使えない状況を作る」
「……………………は?」
「セリスちゃんが、作る。だから僕は拳に絶対に勝てる方法を教えてるだけ」
「どゆこと?」
「当日のお楽しみ」
「はあああああ!?ここまで手伝ったんだから教えろよ!?」
「うーん。みんなが知らない答えを僕だけ持ってるの、楽しいねぇ」
今はまだ、この方法を知っているのは僕と彼女と、あとはセリスちゃんが話したらしいアネシアさんだけ。ドドンガも、ここまで手札を見てもまだ分かっていない。
楽しい。ワクワクする。これが決まったとき、トラが、あるいはリーダーがどんな顔をするのか、楽しみで仕方ない。
それを見るためだけに大会予選を頑張るべきだったかと思ってしまうほどだ。――――予選通ったら先生役はできないのか。じゃあだめだな。
トラが一つしか武器を使えないのなら、勝つ方法はいくらかある。
一次職は基礎ステータスは低めで根本的にアサシンには足の速さでは勝てないし、トラは三武器併用の都合各武器の攻撃力上昇を平たく持っているので、火力自体は実はかなり低い。
武器チェンジという最強のカードを封じれば、僕だって三回に二回くらいは勝てる。…………多分。
武器チェンジを封じる方法が「ルールで禁止される」以外僕には全く思いつかなかった点を除けば、それなりに勝てるんだよ。
「……ほんとに武器チェン封じられんの?」
「七割くらいかなあ。ぶっちゃけね、マップガチャ」
「七割でトラに勝てんなら、ありだな」
「でしょ」
槍を封じるのは簡単だ。というかそもそもトラも槍は出さない可能性も高い。
槍は『丁度の距離で攻撃すると火力が上がる』から、曲がり角の多い迷路型のマップで構造上『丁度の距離』に立てない場面が多くて、弱いんだよね。今大会でのランサーの参加は、シードのなななさんだけだ。
けど剣まで封じるんだとねえ、いいマップ引かないと難しいんだよね。
あと多分ドドンガも勘違いしてるっぽいんだけど、トラは何か一つしか武器を使えないなら、彼はきっと拳を選ぶ。
彼はEFO以外のゲームではずっと武闘家を使っていた。EFOのゲーム仕様上槍が一番火力が出るからボス相手には使ってるけど、彼が最も信頼しているのは何よりも自分の拳なんだよ。
三武器の中では拳が一番アサシンに不利だから外してくるかなあという悩みもあるけれど。それでも僕が見てきたトラなら、拳を選ぶんじゃないかなーと思っている。
マップ自体の大外れがあるのがちょっと怖いけどね、こればっかりはお祈りするしかない。
「すみません、戻りました――――何されてるんですか?」
退席していたセリスちゃんが戻ってきて、僕たちを見てくてんと首をかしげた。
そんな不思議がることあったっけ?と思って顔を見合わせて、その後に僕側だけ吹き出した。
ドドンガは背景の宇宙をしまい忘れたまま、「どうした?」と首を傾げた。




