5-4.トップタンクの思い出1
やっちまった。
巨大ゴーレムが振り返り俺に手を振り上げる。とっさにガードをするが、ジャストガードにならず結構なダメージを食らった。
ゴーレムの向こうには倒れ伏す少女。頭の上にはDEADの文字が浮かんでいる。
ヘイトを抜かれた。
ダメ管には自信があったのに抜かれたということは、それだけ彼女のダメージ量が多かったということだ。
スキルは多分声に出していた。クイックシュート、アーケインムーブ、ドリームショートソードだったはずだ。まだヘイト抜かれるようなタイミングではなかったと思うが……まあ抜かれたのだから管理をミスったんだろう。後で謝っておかないと。
一応粘ってはみたけど、だめだな。
ずしゃりと重たい打撃音としびれが頭を襲い、DEADの文字とともにパーティ全滅表示。そして自動消費をオンにしているフェニックスの羽が消費された旨のテキストが出て、俺達は古都アーレインへ転送された。
「おまえすっげー火力だな」
とにかく褒める。それはこういう時の鉄則だった。
彼女はなぜかとても驚いた顔をしていた。
「いやすまんかった、こんなに火力高いやつがいると思わなくて…ヘイトそっち行っちゃったよな、悪い」
「い……いえ、こっちこそ、避けられなくて…」
「ヘイト抜かれたタンクが悪いんだよ。タンカーってそういうモンだろ。なあもう一回行かね?今度はもうちょいうまくいくって!」
ぺらりと口から出てしまった言葉に少しだけ後悔した。
ヘイト管理しきれないパートナーなら、解散してしまったほうが良かったかもしれない。
だけど彼女が目を見開いて、それから嬉しそうに微笑んで手を取ってきたものだから、引くに引けなくなってしまった。
そして2時間後。
死にまくった。
ヘイトめちゃめちゃ抜かれる。もしかして敵意の塊でも持ってるんじゃないかってくらい抜かれる。
彼女はどんどん表情が暗く、口数が少なくなっていた。
まずったな。
やっぱり解散するべきだったかもしれない。
「今のは行けたと思ったんだけどなー!」
つとめて明るく言う。
泣きそうな顔で何かを言おうとしている彼女の頭をポンとなでて、
「アタッカーに火力控えろってのも違うだろ。うーんでも、今日はここまでかな。すまんな!」
時間的にも程よいし、ぼちぼち落ちておこう。
ヘイト管理めちゃめちゃだった割にはコレと言って暴言も吐いてこないいいパートナーだった。
ブロックされるかもしれないが、まあそれはそれということで。
翌昼。
大学の学食で恐る恐る開いたBBSで、自分の名前を検索する。
アレだけ死にまくった後なので、ちょっと怖い。
だけど書き込みの通報は原則本人かフレンド、またはギルドメンバーからのものしか取り合ってもらえない。ギルドに所属しておらず、フレンドもゼロ人のため、晒し行為にあっていないかは自分で確認するしかない。
詳細検索 ワード:グライド 18時間以内の書き込み
うっわー複数ヒットした……こわっ……
「……………………は?」
『ニンジャちゃん、昨日グライドと組んでた』
『見た見た。死にまくってたよな。』
『グライドペアで何やったら死ぬんだよ。自爆か?』
『そりゃお前、ヘイト管理皆無で殴れば‥』
『グライドさん相手にヘイト抜くとか普通ムリだから、やってみろって』
『まあグライドさんも可愛そうだよな。その日適当に組んだ相手が地雷だなんて』
『まじなーせめてちゃんと飛べってんだよな』
『ニンジャちゃんもよくまあ毎日旗立ててるよね』
『もう誰のとこにも入れないんだろ、上位陣からはみんなブロックされてんじゃん』
『たまーに事情を知らないグライドみたいのが組んじゃうからやめねえんだよ』
『いい加減ソロ専になってほしい』
昨日組んだのは、多分「ニンカ」だったと思うが……ニンジャってのはあだ名か?
ってかなんだコレ。
いやってか、飛べって、そもそも、あの子は多分……
小一時間「ニンジャ」で検索をして、書き込みを読むなんていう無為で無駄な時間を過ごし、掲示板を閉じた。
スマホをへし折らなかったことだけは、少しだけ誰かに褒めてほしいところだ。




