二一話、我帰る。次の戦に備えて…
〝パパーン!!〟
青葉に響く弔銃の銃声。
「柴原、お前と戦えて俺は嬉しいぞ。…総員!柴原 達也海軍大佐に敬礼!!」
大滝以下青葉のクルーは柴原の遺体に敬礼をする。勿論、橋本・武・千早の姿も有った。
そして、度々くるテロリストからの攻撃の対処とその合間を縫っての訓練の日々が続いた。
そして、季節は夏から秋を飛ばして冬が深まった。青葉の兵共は一時故郷へと帰る。
十二月・山梨のとある町
「…久し振りだな。」
「うん。」
武と千早は約四年振りの里帰りをしていた。故郷の季節はまだ雪積もる十二月の終わり頃。
「このエボ6に乗って家に行くのも、初めてだな。」
「…うん。」
武と千早の会話は、何時もの活気なく鈍よりとしている。
「…まあ、気を落とすなよ。出来る限りのことはやったんだ。それに、俺達には青葉が居るんだぜ。」
あの時の悲報には、参ってしまう。
「正月三日は俺の実家で休暇だ。ゆっくり休めよ。」
「そうだよね。…うん、そうだよね。」
千早の顔には、ほんの僅か微笑みがあった。
「さて…上りで吹っ飛ばすぞ!」
「はいよ~!」
武はハンドルを、千早は掴みを確りと掴む。
表札「真田」の正門前
「千早、入るぞ。」
「うん。」
ギシッギシッと中庭に出来た雪道に音を発てて、武の実家の玄関へと近付く。
「…。」
武は玄関の傍にある鈴を鳴らす。すると、玄関の戸がガラガラと引かれた。
「…真田武一等海曹!ただいま実家に帰って来ました!!」
「…お帰りなさい、武。」
「ただいま、母さん。」
戸を引いたのは、武の母だった。
「西園寺です。お久し振りです。」
「お久し振り、千早ちゃん♪あら?また大きくなった?胸?」
「はい!教えてくれた豊乳マッサージを毎日欠かさz」
「母さん、千早に何を教え込んだんだ?」
武は溜め息を吐いて、二人の会話を遮る。
「え~っと、豊乳マッサージと武が欲望に抗えないようにするお色気術や催眠術、それと四十h」
「あ~それ以上言わなくて良いわ。」
これ以上は結構変なことを教え込んでいるな。と悟った武は母にストップを掛けた。
「フッフッフッ★」
「…上がろうぜ。ここに居ると凍える。」
「そうね。じゃあ上がりますか♪」
「は~い♪」
三人は真田家に上がりこむ。
冷え込む18時頃
「今夜はほうとう鍋よ~」
「わ~い!出来た出来た~!!」
「寒い時はこれだな。」
武の母と千早が鍋と器を持ってきた。武は炬燵でヌクヌクしていたが。
「武も手伝ってくれれば良かったのに~」
「俺は一人でエボ6使ってお使いだ。しかも、ヒーターつけなしで寒かった。」
どうやら、燃料代をケチっているようだ。
「まあ、ランエボはL当たり6、7キロだからね~」
「エアコン使わなかったら、もうちょっと伸びるけどな…。」
「はいはい、お話しは一旦止めて、ほうとうを頂くわよ♪」
「は~い!」
「頂きますか…。」
武の母と千早が、炬燵に入る。
「頂きま~す!」
「頂きま~す♪」
「頂きます。」
三人は暖かいほうとうを食べる。
「ところで武…。」
「なんだい?母さん。」
「何時お嫁さんを捕まえて結婚するの?」
「ゲホッ!ゲホッ!」
武は武の母の発言にむせる。
「か、母さん…。」
「はいはーい!私が立候補しまーす♪」
「千早、調子に乗るな…。」
「そろそろ良いかな~と思って…ウフフ☆」
「ハァー…天然ボケが出てきたか?」
武は武の母と千早のやりとりに呆れる。
「でも、本当に御嫁さんはどうするのかしら?早く孫の顔が見たいわ♪」
うっとりしている武の母に、武は溜め息を吐く。
〝カランカランカラン〟
玄関の鈴が鳴った。
「誰だ?ちょっと見てくるわ。」
武は玄関へと向かう。
〝ガラガラガラ〟
「どちらさ…エレナ。どうしたんだ?」
「こんばんわ、タケル。」
学生服とセーターに身を包んでキャリアバックを持ったエレナが居た。
「ちょっとね…上がって良いかな?」
「ああ。良いぞ。」
「ありがとう、お邪魔します。」
エレナは靴を脱いで真田家に上がる。
居間
「初めまして、エレナと申します。」
「武の母です。」
エレナと武の母はお互いに軽い挨拶をする。
「どうしてあのロシア女が居るの?」
「分からん。だが、例の物を持って来たのかもしれない。」
「例の物?あ、あの時に渡したもの?」
「ああ。」
千早が青葉事件を教訓にした艦内戦闘指導が終わった翌朝に、武がエレナに渡したことを思い出す。それを武は平然と肯定した。
「まあ、今日パソコンで引き出す。見物だぜ…。」
武は口元を僅かながらニヤリとさせた。
「寒かったでしょ?郷土料理のほうとうでもどうぞ。」
「ほうとう?」
「戦国時代から続く鍋料理ですよ。戦で食べれるように工夫されたものです。美味しいですよ。」
「なるほど。この鍋にあるのがそうですか?」
「ええ。」
エレナは武の母に盛られたほうとうの器を受け取る。
「あ、箸の使い方は…」
「前にタケルから教えてもらいました。まだ上手く出来ないですけど…。」
エレナは箸を持ってほうとうを口に運ぶ。上手く出来ないと言ったが、上手く使っていたりした。
「…美味しい。」
「お口に合って良かったわ♪所で、エレナちゃんに箸の使い方を教えたの?武。」
「ああ。」
武は手短に答える。
「あら♪二人はお知り合いだったのね♪これじゃあお嫁さん候補が増えたわね?どうしましょ?」
「いや、どうしましょって…。」
武は二度目の母の天然ボケが出たと呆れた。だが当の二人は…。
「御母様!武の花嫁は私ですよ!!」
千早は慌てて武に抱き付く。
「…よろしく、お願いします。」
何故か、エレナは正座で武の母に頭を下げた。
「ええ!?エレナ!?」
流石の武も驚きを隠せない。
「チハヤ、手加減はしないわ。」
「こちらこそ、挑むところ!」
「おいおい。それよりかほうとう食おうぜ。まだ腹満ってわけじゃないんだ。」
武は一旦この言い争いを止めるために、食事の再開を提案した。
「それもそうね♪」
早くも武の母が賛成した。
「なら私も…。」
「私もほうとうをもっと味わいたいです。」
千早もエレナも渋々賛成した。
「全く…。」
食事も終わり後片付けをした後、武は千早とエレナを連れて自分の部屋に入る。
武の部屋
「エレナ。お前がわざわざ俺の故郷である山梨に来るとはな。明日は夏になるのか?」
「…実は、武が頼んだ調べ事を完了した。だが、直後に辞令が来て留学生として二年と数ヶ月を日本の私立高校で過ごすことになったんだ。」
「マジか?」
「うん。甲斐学園山梨高校へ…」
「俺らの出身校じゃねぇか!?」
「見たことある学生服だと思ったらそういうことなのね!」
「…うん。」
エレナは驚く武と千早に対して肯定をした。
風呂場
「まさかあんたがうちの出身校に入学するとはね…。」「私も正直驚いた。それに、辞令にはスティ先を自己で決めろと書かれた。学園の入学手続きはやるそうだが…。」
「ふ~ん。じゃあ、武のお母さんに頼んでスティしてもらったら?」
「タケルが何と言うか…。」
「大丈夫だよ!武のお母さんは優しいよ!」
〝ガラガラガラ〟
「あら?結構急な話ね♪」
風呂場の戸から、武の母が現れた。
「気、気が付かなかった…。」
エレナは額を少し黒筋が通った。
「フッフッフ★望月の血を舐めたらいけませんよ♪」
「ま、まさかくの一…。」
「それ以上は言ってはダメですよ♪」
千早は武の母の血筋を口から言い掛けたが、武の母は千早の口に指をそっとおいて口を抑える。
「は、はい…。」
「チハヤ、タケルの母は結構怖いですね。」
「う、うん…。」
「タケルのオーラって、タケルの母譲りかな?」
「かもね…。」
初めて千早とエレナの共通認識を持った。
「ところでエレナさん。」
「はい。」
「ホームスティの件なんだけどね。」
「(あ、やっぱり聞き耳立てて居たんだ。)」
「スティしても良いわよ♪…まあ、夫に先絶たれ武は夫と同じ海軍軍人になって、家では私一人で寂しかったから。」
「そうなんですか…。」
「よろしくね♪」
「はい。こちらこそ。」
武の母は、エレナのホームスティを承諾した。
「それと…」
急にエレナと距離を縮めた武の母は、エレナの首筋から頭の天辺まで鼻を近付かせ舐めるように下から上へ動かす。
「あ、あの~…。」
流石のエレナも顔が紅くなる。
「硝煙の匂い…あなた、16歳なのによく訓練された軍人さんね?まあ、良いわ。私の持っている技術とか教えちゃおうかしら♪」
「…え?」
エレナは硬直した。
「御母様!」
「勿論千早ちゃんにも♪」
「あ、そういう意味じゃあ…。」
自分の存在を忘れられたかと思って、何か言おうとしたのがいけなかった。
三十分後、女性組が風呂から上がって武が入れ替わりに入る。
「…。」
戦の垢を洗い流して、湯船に浸かる。
「…まさか、柴原大佐の裏付けになってしまったか。」
武は、エレナに頼んだ調査の結果を鑑みて、柴原大佐の事実の裏付けになったと確信した。
「恐らくエレナは付け狙われかねんな。俺の実家にホームスティさせるのは正解だな。」
母さんは望月の血が染み込んでいるからな。と、口には出さなかったが。
「これから、戦いは厳しくなるな。今は与えられた休暇を味わうとするか。」
武はそう呟いて目を閉じる。
武の部屋
「さて寝る…前にどうにかしないとな。」
「武~。」
「一緒に寝よ?」
「客間で寝てくれよ…。」
武は、千早とエレナの添い寝の誘いに頭を抱えて溜め息を吐く。
「…まあ、我が儘聞いてやるか。」
「わ~い!」
「やった!!」
武の承諾にエレナと千早は大喜び。
「おやすみなさ~い♪」
「おやすみなさい…。」
「…おやすみ。」
武は千早とエレナにガッチリとホールドされて寝返りがうてない。
「まあ、温かいから良いけどな。」
今後、武達はどんな困難に立ち向かうのだろうか。たが、その前にこの青葉の下士官を休めようと思う。まだ、戦いは始まったばかりだ。
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