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レイキューブ!  作者: 坂井千秋
霊球部、新入部員を求む
30/48

4-2-4

「いけ、るっくん! そのまま決めろ!」

「ウォォォォ――」

「ガゥ、ガォガォ」

「ちっ、クソッ、……やられた」

 なんとか完全に日が暮れるまでには到着できた朧グラウンドでは、まだ練習が行なわれていた。いまは咲と阿納の2On2が戦われているようだ。

「辰樹! もっとシンタに動きを合わせろ! 完全に遅れてるぞ、それでも主人か!」

「ぐっ……、わぁってるよ、うるせえなっ! ちょっと……、足が滑っただけだ!」

「それから、シンタ! あんたもあんたで、ひとりで突っ走りすぎ! もっと周りをよく見る! それと、パスが雑! 一つひとつのプレーを、もっと丁寧に!」

「ガゥガゥ、クーン……」

 咲による指導の声は金網の外にまで響いている。それを聞きながら中に入り、コートのほうに歩いていく。「あ」と声がして、ベンチから立ち上がるまなの姿が見えた。

「みーちゃん」

 その声に、咲と阿納がこちらを振り向く。「弥里先輩!」と咲、それから阿納がこちらに駆け寄ってくる。

「弥里先輩……」

「咲。……その、ごめ――」

「すいませんでしたぁっ、弥里先輩ぃ!」

 と、なぜか咲がガバッと頭を下げる。

「えっ、いや、あの……」

「自分、先輩のことを何も知らずに、先輩を追い詰めるようなことを言ってしまって……嫌なことを思い出させてしまって、本当に、すみませんでしたっ‼」

「……まなから聞いたの?」

「自分が強引に聞き出したんです! 不用意な発言でしたっ! このとおり、反省してます!」

「い、いや、そんなに謝らなくても……ていうか、咲が謝るなんて変でしょ。悪いのはあたしだよ。ちゃんと説明もせず、練習サボって部に迷惑かけて……ごめんなさい」

「いえいえ! そんな! なにをおっしゃいます! 弥里先輩はなにひとつ、悪くありません! 悪いのは自分です! このとおり……このとおり深く、反省しております。で、ですからどうか、命だけは、お助けください……!」

 まな。きみは咲に何を話したのかな? 航士郎といい、我が幼なじみたちは人のことをなんだと思っているのか。

「おいコラ、アンタ」

 阿納辰樹が鋭い目であたしを睨んでいる。

「ごめんね、阿納くん。せっかく入ってもらったのに、いろいろと迷惑かけちゃって……」

「まったくだ。……だがまあ、またこうして来る気になったのなら、それでいい。アンタのいない一週間で、俺もシンタもかなり上手くなったぜ。実力のほどを見せてやるから、さっさと準備しな。俺たちと2On2で勝負だ!」

 勢いに圧倒されながら、お、おう、と頷く。初めて会った日はどちらかというとクールな印象をもったが、意外にけっこう熱いタイプなのか。一週間経って部に少し慣れてきたのだとすると、むしろこっちが本来の姿なのかもしれない。

「だめだよ、阿納くん」

 横から声がかかる。まながこちらに歩いてきていた。

「阿納くん、もう二回続けて試合してるでしょう? さっきはわたしと、いまは咲ちゃんと。少し休まないと。はいこれ、タオル。それと、水分も摂ってね」

「あ、あぁ、ウッス。……あざっす」

 ぺこりと頭を下げ、まなからタオルとドリンクを受け取る阿納の頬は、夕焼けと同じ色にぽっと染まっている。んお? なんかあたしのいない間に、なにやらおもしろいことになっていないか?

「みーちゃん」

 まながあたしに向き直る。だめになったあたしを見捨てず、これまでずっとそばにいてくれた友人。無気力生活にもし「孤独」が加わっていたら、あたしはまた立ち直ることができていただろうか。いや、きっと――。

「まな。いままで――」

 ごめん、と言いかけて、言い直した。

「ありがとう。あたしはきっと、もう大丈夫だ」

「みーちゃん……」

 目を潤ませたまなの顔が途中からぼやけて見えなくなったのは、きっと夕日の逆光のせいだ。

「あ、あの、弥里先輩!」

 咲の声に、汗を拭うふりをしながら振り返る。

「その、さっき辰樹がテキトーなことを言ってましたけど、そういうことでいいんですか? 弥里先輩、また霊球部に戻ってきてくれるんですか⁉」

「戻るもなにも、あたしはべつに辞めてない。辞めるつもりもない。みんな、この一週間、迷惑かけてごめん。今日から復帰して、その遅れを取り戻すよ。みんなで練習頑張って、次の県大会で優勝を目指そう」

「先輩……、はいっ‼」

「うし。そうと決まれば、さっそく練習だ! 水を飲んで体力も回復した。せっかく四人いるんだし、四対四でもどうだ?」

 チーム分けをし、コートに向かう。あたしとまな、咲と阿納のチームで対戦することになった。ひさしぶりのグラウンド。たった一週間なのに、踏みしめる土の感触が妙に懐かしい。

「みーちゃん、霊体は?」

「え? あ、そっか」

「アハハ。弥里先輩、ちょっとやらないうちに、そんな基本的なルールも忘れちゃったんですか? 霊球は人間と霊体で一緒にプレーするスポーツなんですよ」

 ごめんごめん、と頭を掻き、いつもの儀式でヒューイを召喚する。ひゅいー、という声のあと、一瞬、その場の空気がピタッと止まったようになった。そして、

「誰、それっ⁉」

 という、みんなの声が重なった。

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