2章―3
街に出ると青髪の男性なんて、いたるところにいる。
だがやはり、その誰もが彼ではない。
シオン、と呼ぶ声が微かに聞こえた。
リベアは思わず振り向いた。
しかし、そこにいた人は彼ではなかった。
「ねぇ、シオン。どこにいるの。早く会いたいよ……」
リベアが願うも、彼は現れない。
「この街にもいないの……?」
リベアは街を一周してから、ギルドへ戻った。
◇◇◇◇
護衛依頼が多く出されている街を見つけるとリベアはそこへ行き、彼を探した。
その道中に魔物の襲撃があれば、氷の星を煌めかせた。
そんな日々を繰り返しているうちに、リベアは気づけばAランクになっていた。
そして今日の依頼達成により、A+ランクとなった。
「指名依頼?」
「はい。氷星のリベア様にどうか受けていただきたい依頼があるのです」
ギルドへ行くと支部長に呼び出され、指名依頼を受けて欲しいと言われた。
『氷星』とは、リベアがこの頃呼ばれるようになった名だ。彼女の戦闘を見た者たちが、誰からともなく言い出した。
「依頼内容は、モクレン付近の山に現れたドラゴンの討伐です」
支部長がリベアの様子を伺うように尋ねる。
「それで、どうでしょうか……受けていただけますか?」
リベアは目を閉じて考える。
もしこの依頼を受ければ、しばらくは自由に彼を探すことはできないだろう。
もしこの依頼を受けて成功すれば、リベアの場所は彼に伝わるだろう。
『リベア』はそんな危険な依頼なんて受けずに、彼を探していたい。
だが、『氷星』の力を必要としている人たちがいることも確かだ。
彼女は静かに目を開いて答える。
「はい。この依頼、受けさせてもらいます」
『氷星』は応える。
彼ならば、こうするだろうから。
「ありがとうございます」
支部長は安堵したような表情を浮かべた。
「それでは早速ですが、詳しい依頼内容を話します。討伐対象はモクレン付近の山にいるドラゴンです。先日山から下りて街に向っている、という報告が来たので討伐することになりました」
リベアは支部長とともに、ギルド所有の馬車置き場へ行った。
「できるだけ急がせますが、ここからモクレンまでは半日程かかります。道中お気をつけて。カトレア様のご加護があらんことを」
◇◇◇◇
モクレンに着くと、人々が忙しなく走り回っていた。
ギルドへと入ると、受付嬢がすぐに気づき、支部長室へ案内された。
「氷星様。この依頼を受けていただき、ありがとうございます。ドラゴンは街の北側の山にいます」
リベアは冒険者たちと街を出て、山へ向かった。
その山の頂上付近の空には、巨大なドラゴンが遊弋している。
その下に広がる森からは、今にも出てきそうな勢いで魔物が蠢いている。
「氷星様! 森の魔物は俺たちに任せて、氷星様はドラゴンに集中してください!」
冒険者のひとりが氷星に呼びかけた。
それに頷き、彼女が杖を地面に打ちつけると、しゃん、と杖の飾りが揺れ音を鳴らした。
碧色の石も煌めきを強めていく。
リベアは膨大な魔力を込めて、数多の魔法陣を展開する。
それは、今までの戦闘経験から編み出した、新たな魔法の陣。
そして、その魔法名を唱えた。
「氷星」
その詠唱とともに、大小様々な幾千もの氷の星がドラゴンへと飛んでいく――目に見えぬほどの速さをもって。
ドラゴンへぶつかった氷は、徐々にその身を凍らせていく。
その凍結に抗い、ドラゴンは翼をはためかせて飛翔し、眼下の冒険者へ向かって灼熱の業火を吐く。
「抵抗」
周囲の冒険者たちがそれを弾いた。
その間にも、ドラゴンは凍りついていく。
そして、片翼が凍り、砕け散った。
ドラゴンは体勢を崩すが、もう片方の翼でなおも飛び続ける。
しかし、その翼もやがて凍り砕けた。
両の翼を失ったドラゴンが落下してくる。猛炎を浴びせたくとも、その顎はすでに凍りついている。
その隙を見逃さず、リベアはさらに魔法を展開する。
そして、ドラゴンは地に墜ちる寸前に全身を凍りつかせ、ぶつかった衝撃で砕け散った。
「氷星様がドラゴンを倒したぞ!」
「さすが氷星様だ!」
冒険者たちと戦っていた魔物たちも、強大なドラゴンが倒されたと分かるやいなや、森へと戻っていった。
◇◇◇◇
リベアが冒険者たちとともにギルドへ戻ると、支部長室へ案内された。
「氷星様。この街を守っていただき、ありがとうございます」
「いえ、またいつでも頼ってください」
そう、彼らが必要なのは『氷星』だ。幼馴染の背を追いかけるだけの少女はいらない。
その後、各支部長からの推薦状が集められ、『氷星のリベア』はSランク冒険者となった。
それは、冒険者登録から1年後のことであった。
お読みいただきありがとうございます。
次回更新時はXと本編まえがきにてお知らせします。
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