家出した娘
そう、あの日が、転機だった。
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王都について3日後の王子結婚前夜のパーティー。
一張羅で馬車を降り、ワクワクしながら会場へ入った。
視られてる、そう思った。
でもウィルナードも、シルエラも、エヴァもいつも通りで、聞くことが出来なかった。
初めてじゃない、昔受けた視線。
挨拶する相手は私から目をそらすこともしばしば…
私は居ないほうがいいのか。
「ちょっと手洗い行ってくる」
エヴァに耳打ちし、会場から出る時だった…
『…何故イベルナ人がここにいる。誰の手引きで侵入したっ!?』
「え…?」
肩をギリギリ掴まれ、訳がわからないまま衛兵に渡される。
後ろからウィルナード達の叫ぶような声が聞こえた。
エヴァが駆け寄ってきて、両手を捕らえられた私に正面から抱きついてきた。
遅れてやってきたシルエラが、衛兵を睨みながら聞いたこともない低い声で、離しなさい、と言った。
「それは出来かねます。」
「連れて帰りますから、離しなさい!」
遠巻きで見ている感覚だった。
私のことなのに意味が分からなくて、現実じゃないようで、何も考えられなかった。
「もうよい。今すぐ消え失せろ…」
肩を掴んだデブ親父がそう言い捨て、腕を解放された。
シルエラに手を引かれ、エヴァに肩を抱かれその場を去った。
帰った後、ソファーに無理矢理三人で座り、無言で肩を寄せ合った。
深夜、ウィルナードが帰ってくるまで……
子供のように膝に座らされ、後ろから抱き締められながら話を聞いた。
あのデブ親父は伯爵閣下で、七年前イベルナ族との戦で息子が巻き込まれたらしい。
そして私は、イベルナ人の黒髪を連想され、疑われた。
もう戦争は終わった。
イベルナ人とは顔の作りが違う。
例えイベルナ人だったとしてもお前は俺の娘だ。
他のイベルナ人も差別される謂われはない。
ごめんな。辛い思いをさせた…
大丈夫
大丈夫だ
俺に任せておけ
愛してるよ…カナメ
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夫婦のダブルベッドでギュウギュウになりながら4人一緒に寝たんだ。
そして今朝方、ウィルナードがベッドから落ちた音で皆飛び起きた。
私が蹴飛ばしたらしい。
爆笑した。幸せな朝だった。
結婚式はウィルナードだけ出席。
披露宴は家族で参加。私は留守番だ。
エヴァは、『行かない、イヤだ』と最後まで駄々をこねたが、いい子で待ってるからと約束し、送り出した。
それから考えた。
黙り込む私に、シスルが何気ない会話をし、笑わせてくれた。
そうしながらも考えた。
笑いながら幸せだったな〜と思った。
皆が帰ってきて賑やかになり、笑って決意を固めた。
おやすみの挨拶。
最期になるかもしれない挨拶。
部屋に入って書き置きをしたためた。
荷造りをし終わると、随分深夜になってしまった。
こっそり一人一人の部屋に入り、物を手にとって額にキスをした。
荷を持ち、見つからないように家をでる。
静かにバルを連れ出すと飛び乗った。
『出て行くのか?』
ハッとして振り向くとシスルが腕を組んで睨んでいた。
「お願い。見逃して!バルは領地に返すから。」
「馬鹿じゃねーの?」
「かもな…でも、諦めたわけじゃない。」
「ふぅー…戻る気はあるんだな。でも、今なら脱走を阻止できる。どうする?カナメ」
「…押し通る!って言いたいけど、勝てる気しないしな〜…じゃあ、あんたにも約束するよ。」
「何を?」
「手、かして」
のばしてきた手の指輪をグリっと抜き取り、手を離す。
「これ、かりるわっ!必ず生きて返す。じゃあな、シスル!」
バルの横っ腹を軽く蹴り、シスルから逃げるため走り出した。
「いってぇ…あれ、親父の片見だっつーのに………死ぬなよ、カナメ」
ありがとう。
頑張るよ私。
イベルナ人への差別意識は知らない。
私はイベルナ人じゃない。
間違われるならば…
私は、私という一人の人間を認めさせる。
そのためにはやはり有名になることが一番だ。
どうすればいいか検討もつかないけど、とりあえずは生き延び強くなろう。
この世界『マール』は、弱肉強食。
やってやる。
あの幸せを味わえるならなんだって……
滲む涙をグッとこらえ、泣くのは会う日まで…と言い聞かせた。
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