夢の終わり
最近エヴァが剣術を本格的に始めたので、私も参加させてもらっている。
私がやると言い出した時、家族から…シスルから…と反対される中、唯一の味方、執事のルードじーちゃんの説得のおかげでめでたく勝利を勝ち取った。
腕を鍛え、悪ガキ達に教え、この世の常識を教えられ…と子供を謳歌しているうちに季節は流れ、約2年…
夏まっしぐらであるのに、王都に向かっている。
何でも、王子が結婚するらしい。
別に王都行きは、毎年のようにウィルナードだけでいいんじゃない?と思ったが、私が来るまでは家族で行っていたらしい。
うむ、私のせいで家族を惜しみながら旅立っていたのかと思ったら、とてつもなく申し訳ない気持ちになった。
なので別に嫌ってわけじゃないし、旅行ってかんじで実は楽しんでいる。
キャンプも楽しいし、みんなで寝るとか修学旅行かよ!
しかし、すべてがそんな生易しいもんじゃなかったけど…
狼みたいなのとか、映画に出てくるようなデカい蛇とか殺すのみたし、豚っぽいの捌いて食べた。
衝撃だった。
私兵が吹っ飛ばされた、怪我をした。
ウィルナードも指示を飛ばしてた。
私は見ているだけだった。
なのに、辛かった。
危険があるのはわかってた。だって、普通に剣を帯剣して、私だって訓練しているんだから。
人を守る。自分を守る。それは、相手を傷つける。もしくは殺すこと。
襲ってくる恐怖を押し殺し、前に出る覚悟。
反対されたとき何度も言われ、覚悟したはずだった。
腰にある剣がズシリと重くなった気がした。
皆背負ってる。命を奪ったことを。
私は怖くなった。恐ろしくなった。
でも、この弱肉強食の世界で家族が、知り合いが、狩られる立場になら無いとも限らない。今のように。
前の世界の倫理感なんて通用しない。
捨てる。私はマールで生きている。
地球人ではない!
そう思って、背後の狼を斬り伏せた………
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あー、しこたま怒られた。
出てくるな。って聞きました。
はい、ごめんなさい…
でも、私の拙い覚悟を話すと抱き締められた。
「俺はな、守ってやりたいんだよ…でも、これは男の…父親の意地っていうだけで、カナメはカナメの意地があるんだよな。何故こんなに男前何だろうか……俺の気持ちはわかってくれるか?カナメ……」
うん。年甲斐もなく泣いてしまった。
いっぱいいっぱいだったから…と言い訳しておく。
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王都に着き、良く言うとビンテージ感漂う家にはいった。古くはあるが、管理人のお陰で綺麗に掃除されている、立派な家だ。
エヴァを捕まえ駆け回った。
エヴァは最近大人っぽくなっちゃって、面白くなくなってきたから引きずり回してやった。
そういや最近節々が痛い。成長痛だ。
偶にエヴァと一緒にのた打ち回っている。
滑稽なのはわかっているが、耐えるしかない。人生二度目だから身にしみてわかっている。
一年だ一年…それで痛みは落ち着く。
そして16歳で178センチになり止まるのだ。
エヴァはどうなんだろうか?
ウィルナードぐらいでかくなるんだろうか…
そうなると負けちまうな…
切ないが、そんなこと悩んでも意味はない。
弟よ、立派に成長しておくれ…
「…いや、兄だけど。」
「あ、声に出てた?ハハハハッ」
「あ、そこもっと強く。」
「了解!次交代だぞっ!」
「……触って良いのか?」
「何で?」
マッサージじゃん?昨日もやったろう?
「女でしょ?」
このエロガキっ!色気づきやがって!
「阿呆!ねーちゃんに意識してどーする?!」
「…妹だろ」
「バッカヤロー!地獄見やがれっ!」
グリグリの刑だ!!妹でも駄目だろうが!
「痛っいたたたたっ!痛い、ごめん、ごめんなさいいたたっ!」
「ふぅー、交代!」
「…はぁ…はぁ…死ぬ…」
「さっとやらんか!エロガッパ!」
「…わけわかんないんだけど、ムカつく…」
「痛い、痛い、痛い!優しくソフトに…お兄ちゃん…」
「ったく…もう…俺ってホント可哀想…」
「ん〜いいわ〜最高…そこそこ!…」
「………」
「………んん〜………」
・・・・・・・・・
「……」
「寝た?…いつもいつも、俺の気も知らないで…」
「………」
「………おやすみ。カナメ」
ーーーーチュッーーーー
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幸せな夢をみた。
幸せだったから、夢だということを忘れてしまった
幸せだったから、
気づかなかった……
当たり前に愛してくれるのを
当たり前だと思い込んだから
心地よかった。好きだった。愛してる。
すべてがみんな、そんな人ばかりだとは思ってなかった。
こんなつもりはなかったと言い訳しても時間は戻らない。
ごめんなさい。
優しくて、暖かい、愛する家族…
私は疎まれる存在だった。
昔からそうだったじゃないか
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お父様、お母様、お兄様
私のせいでを周りに変な目で見られることになって、ごめんなさい。
私が原因で皆が悪意を向けられるのは我慢できません。
だから、出ることにしました。
愛してくれてありがとう。
貴方達から受けた優しさは、感謝しても感謝しても足りないぐらい幸せだった。
どうか悲しまないで。
会えなくても、遠くから見てるから。
馬鹿なことしでかしたら怒るよ?
それと探さないで。
心配させないように、どうにかしてみせるから。
書面上の親子関係なんて消して。
私の気持ちは娘のまま。
一生、貴方達の子供。妹。
大好きだ。愛する家族。
絶対堂々と帰ってみせるから待ってて。
ウィルナードの愛用ナイフかりました。ごめんなさい。
シルエラのお気に入りスカーフかりました。ごめんなさい。
エヴァのこづかい全部かりました。それと、髪を御守り替わりに一房貰いました。ごめんなさい。
必ず返しにいく。待っていて。
絶対に胸を張って帰ると約束する。
カナメ=シュベルド
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…泥棒ですね。