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要の意味  作者: かなりあ
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盗賊

昨日の雨はどこへやら…

真っ青な空の下、私は御者よろしく手綱を握って、ガタガタと揺られている。


昨日、私の、イかれた真実を話したのに、うやむやになってから全く否定も質問もない。


信じてくれたような気もするし、本気にしていない気もする。エヴァに話した時は質問責めだったので拍子抜けだ。

私にとって結構重大な事だったんだけどな…年齢のことは。

ふとした時のガキ扱いは面倒だったから、ちゃんとそこは理解して欲しいところだ…


ま、あんなクレイジー発言した私は、全く普段通り接して来る2人にホッとしているのは確かだ。





んん?

ありゃ何だ?

あきらかに道ふさいでるよな…

狩り?…馬車停めんなら路肩に停めろよな。



「邪魔だな…」

「ん…賊か?」

「怪しいな」

「賊?なに?…山賊、盗賊の賊?」

「ぽいなっ!このままの速さであいつらの左に避けろ」

「…マジか。」



人に襲われるとかあるのか…

襲われたら殺らねばこちらが死ぬ。

動物では戸惑うことなくそうしなければならなかった。いや、そうした。

命を守るためとかじゃなく、獲物が寄ってきたぐらいにしか思わなかった。


だが、あれは人だ。




『人殺し』




今まで動物を散々殺してきたくせに、その一線を超えるのはあまりにも重い…

あちらから襲って来るんだから、正当防衛になる…とかそんな問題じゃない。


20そこそこの人数。不利だ…

闘えば怪我を負い、悪けりゃ死ぬ。向こうもこちらも…


怒号が聞こえると共に、こちらに馬や馬車を走らせ、近づいてくる。

間近に迫る奴らの顔。

アルとギルを盗み見ると、臨戦態勢で弓を構え、抜き身の剣が日の光を反射させている。



私は、どうすべき?




決まっている。指示された通りに動く。

殺ろさなければならないならやる。

私が躊躇したせいで、仲間を危機に晒すなんてごめんだ。


しかし、殺しは罪だ。ソイツの命だけじゃない。ソイツに関わる者からソイツを奪う。

動物も人も同じなんだ。この世界で命は軽い。危険は身近にあって、平気で奪い合う。

けれど背負うものは軽くはないはずだ。

現に私は御者で、殺さなくてもいいポジションに居るにも関わらず、その重さに萎縮している。だって、あいつらにも親がいて、子供がいて、友達がいて…と、思ってしまうから…



でも、私もアルもギルもそうなんだ。



見ず知らずの他人を気遣うなんてアホだ。殺されそうになっているのに、抗わないなんて馬鹿をする気はない。



「死ぬわけにはいかないな…」

「あったりめーだ!」

「心配するな、雑魚ばかりだ。」

「うん、ケガすんなよ!」

「任しとけっ!」

「ああ。」


アルは次々に矢を射り、数を減らしていく。ギルは寄ってくる奴を剣で牽制。


「馬一頭で走らせろ。虫をはらってくる」 


外套を私に投げ渡し、黒毛の方の馬に跨がって留め具を外していくギル。


動揺を誤魔化すように馬を気遣ってみる。


うむ、かわいそうに幸子…巨体に飛び乗られて痛かっただろう?…鳴いただけで耐えたお前は偉い。


留め具が外れて駆け出す幸子とギル。

負担は茶毛混じりの花子にかかるため、少し速度が落ちた。


「花子、頑張れ。道に戻ればまだ走りやすいだろ?」


花子を誘導し、道に戻る。


ギルは想像どおり騎士無双していて、映画を見ているような感じがした。

そうこうしているうちにアルが馬車の御者を射って、しつこく追ってくる騎馬山賊は…




キーンッ!!



「チッ…グハッ」



無意識だった。反射的感覚だった。

ゾワッと悪寒が込み上げ、振り向き様に剣を抜いた。そこに振り下ろされる剣が当たったのだ。

後はそれを払い脇腹に刺した。


刺した…




「すまん、カナメ」

「大丈夫」




アルが私に謝ってきた。

アルは私と馬車を守らねばならなかったからだ。

だが、両側完璧に守るなんて無理がある。

私もアル側しか意識してなかったのが悪い。責められるハズがない。

だが、今のはヤバかったと思う。

冷静を装って大丈夫なんていったが、冷や汗と人を切った感触が手にこびりつき、頭から離れない…




人を刺した




私の剣を受けて、落ちていった。


汚れた風貌の男。


私を睨む緑の目。




奴らが退いてからしばらく進み、見晴らしの良い丘でようやく停めた。


「よいしょっと…お前…大丈夫か?!」

「ん?」

「顔色やべぇぞ?どっかやられたのか?」


アルが心配して体を見てくる。

ケガなんかしてない。痛くない。


「大丈夫だ、なんともない。…花子も水をあげてくれ…」


アルの視線から逃れるように荷車に入った。


くそっ…

頭では分かっても、体は例えようのない恐怖に手足の震えが止まらない。


あいつの顔が頭からはなれない。

あの目が頭から離れない。

落ちていった姿が頭から離れない。

死んだかもしれない。


殺した


人を…



こんな事で潰れて、この先どうする…

震えやがって!ビビりやがって!

こんなのは私じゃない。

こんなに弱くて何がハンターだ!

私はなんとしても乗り越えなきゃならない。


「ああぁーーーーっ!!…耳いてぇ…」


失敗した…狭いとこで叫ぶなんて馬鹿か…

私はやはり冷静じゃないらしい。


「「どうした!?」」


凄い形相で2人がとびこんできた。

苦笑いしかできない。


「………ごめん。気合い入れてただけだ。あ、ギル、剣の稽古つけてくれよ!体動かしたいんだ。」

「あ、ああ。分かった。」

「……大丈夫か?お前」

「大丈夫。ありがとな、アル。」

「おぉ…」






私が汗だくになる頃ギルが終了を告げ、出発した。


ギルに剣を向けるのが怖かった。

けどそれもつかの間のこと。次々受け止められることで安心した。

やがてはムキになり一振りするごとに体がほぐれていった。


まさに、ギルが呪いを徐々に祓っていったかのように…。






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